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第100話 王国は永遠に

 そしてアレティス王国が建国されてから5年が経った。


 ルークは初代王として、アレース公国民からだけでなく、最初は国がなくなり怯えていた旧メティス公国民からも、これまでの生活を一変させた彼を敬えど、恨むものなどいなくなっていた。

 アストメリアの開拓も順調に進み、今ではアースガルド帝国と同等かそれ以上の土地を管理することに成功した。5年間の間にアレティス王国へ帝国はデュメエル公国とヘルメス公国の両国から土地を奪い返すよう戦争が仕掛けられたこともあったが、オーディンからの侵入が出来ない両国はアストメリアを迂回する中、王国へ到達するだけで半数以上の兵を失い、到達してもなおアレティス王国の鍛えられた獣人軍や冒険者達に敵うはずもなかった。

 ヘルメス公国の王ユリウスはこれを受け、帝国との関係を保ちつつ王国との橋渡し役を担うとし、王国の属国へなることを決めた。



「レオ〜ン、なあレッドベアの毛皮、また入手できたら教えて〜。アレ欲しがってる人いるからさ、高値で買い取るぜ!」

「ユリウス、また来たのか。いくら属国になったからって、お前世界樹の方の通路使って来ただろ。」

「へへ、当たり。オーディン経由で来ようとすると手続き大変なんだもん。税かからずにやり取りやってんだからお互い様だろ?」


 ヘルメス公国が属国になることはユリウスが王となった時から交わしていた約束である。レオンは正式に属国になる前から、ユリウスが誰にも知られずにアレティス王国へ来られるよう、またユリウス有するライトリヒ商会が他の商会には真似出来ない圧倒的な財を成すために、モンスターの素材や王国が生み出す魔法道具を密輸できるよう、ヘルメス公国との国境にある世界樹の根に馬車1台が通行できるだけの穴を開けていた。

 おかげでヘルメス公国が正式に属国となる前から、帝国内には誰しもが使用する身近な魔法道具も敵対するアレティス王国産のものが溢れ返っていた。


「ったく、来るなら連絡入れておけばいいだろ。せっかく最新の通信道具渡しといたのに。」

「悪い悪い。それより聞いたか?クリスのやつ、王になれなかったらしいね。」

「そうなのか?あいつは王位継承権第一位じゃなかったか?」

「なんでも帝国と王国間で不戦条約が結ばれたってのに、クリスだけは最後まで土地を奪い返すと躍起になっていたらしいよ。終いには自分が帝国を1つにまとめ聖女を迎え入れて、王になるとか言い出したらしくてさ、ここまで来ると頭がおかしいよ。デュメエル公国が帝国1の国だったのなんてもう過去の話なのに、過去に縛られてる男は嫌だね〜。」

「知らなかったな・・・。」

(これもゲーム補正かもしれないな。だがもうお前の願いが叶うことはないだろう、悪いなクリス。)


 クリスの事は最後まで心から好きにはなれなかったものの、学生生活を共に過ごした仲間として、レオンは彼のことを想った。



 この5年で変わったのは国だけではない。

 ジオルドとマリーの間には男女の双子が生まれ、初めは監禁状態に疲弊している様子の見られたマリーも少女から母の顔へと代わり、ジオルドへ子供のために強く要望を伝えることができる強さを身につけた。子供の教育のためと外へ出ることも許され、最近では近隣の街で家族4人仲良く買い物をしている姿も見受けられる。

 また、アレティス王国はこれまで通り絶対神オーディルヘルムを崇める帝国の国教であったオーディルヘルム教と闇の女神ヘレナを崇めるヘレナ教など、各自の自由意志による宗教の選択も可能となった。主にヘレナ教を崇めるものは獣人やレオンのように黒い髪や目を有するものが多かったが、少しずつヘレナ教が浸透している様子が力を授けてくれたヘレナへの恩し返になっているようで嬉しかった。

 獣人や冒険者の差別も、古い年代の者ほどまだ慣習を捨てきれていない様子があるものの、少しずつどの街でも普通の服を着て、耳や尻尾を隠すことなく行き交う姿が当たり前になっていっていた。


「レオンはまだあの子達と結婚しないのか?ちゃんと囲っておいた方が色々楽だぞ?」

「いや、フェルとリアンは俺にとって子供のような関係だからな。まだいいかな。」

 ユリウスは王になるとすぐに気に入った女性がいれば結婚をし、今では側室も含めて10人の妻を囲っている。子供も増え、レオンはいまだに名前が覚えられずにいた。一方でレオンは変わらずフェルとリアンに望まれるがままに体を重ねてはいるものの、“結婚“という選択をすることは出来ずにいた。


「ルーク様だって結婚しないって言ってんだろ?」

 王国の初代王となったルークの元へは日々娘を嫁にどうかと、王国各地から手紙が届いていたが、例え相手がどんなに素敵な女性であろうと、丁重に断りの手紙を送っていた。



「お兄様が結婚しないなら、俺も結婚しない。というより俺とお兄様はほとんど結婚しているようなものだから。」

「・・・お前のブラコンっぷりも相変わらずだな。ま、お前らが幸せそうで何より。じゃあ俺は用があるからまたな。」

「ああ。・・・幸せそう、か。」


 ユリウスが去った後そう呟くレオンをルークが抱きしめながら言った。

「私はレオンのおかげでとても幸せだよ。」

「お、お兄様!聞いてらしたんですね。」


 ルークはレオンが悲しむことをしない。例えルークが選んだ相手だったとしても、ルークが誰かのものになることを、レオンが悲しむであろうことをルークは知っていた。

 ルークにとって王になれたことは他でもないレオンのおかげだった。子供の頃に約束した、ルークの力になる、ルークのために力を使うというレオンの約束は今でもずっと守られている。

 ルークは王となり、豊かな生活になっても決して驕ることなく、レオンを優先する気持ちがブレることはなかった。


 

「昔、お兄様に読んで頂いた『神さまの世界樹』って本を、覚えていますか?」

「もちろん。レオンが読んでいる内に私の膝の上で眠ってしまったよね。あの頃のレオン、可愛かったね。ああもちろん今でもレオンは可愛いよ?」

「もう、お兄様!」

「ふふふ。」

「・・・あれ、仲が良かった兄弟が、神様のせいでバラバラになるじゃないですか。そうならなくて良かったなって、なんか今ふと思いました。俺は、お兄様に幸せになって欲しいってそれだけを目標に生きてきたので、今お兄様が幸せなら、俺も嬉しいです。」

「私もレオンが幸せなら幸せだよ。前世の君も、今世の君も出会えて本当に良かった。生まれてきてくれて、ありがとう。」


 前世では親からも生まれたことを祝われたことはなかった。そして今世でもルークのように純粋に弟を愛し信じる兄がいなければ、同じように心を閉ざした人生だったかもしれない。ルークにとっても、レオンがいなければこんなにも思い描いていた絵空事を実現できるほどの力は得られなかった。


 2人の出会いが、2人の絆が世界を変えた。そしてこの絆が壊されない限り、この幸せは永遠に続いて行くのであった。




==================================

『王国の兄弟』


むかし むかし あるところに2人の兄弟がいました

兄は美しい姿をし いつもたくさんの人に囲まれていました

弟は村人たちとは 髪の色も目の色も ちがっていました

村人たちは自分たちとはちがう弟をおそれ

弟はいつもひとりぼっちでした


ひとりぼっちの弟を救ったのは 兄でした

兄はいつも弟に優しく手を差し伸べ 弟を守ってやりました


弟は優しい兄の力になりたいと 毎日神様にお願いをしました

「どうか私に 兄の力になれる 力をお与えください」



ある日 いつものように弟が願い事をしていると 

女神様が現れ 弟に不思議な力を授けました


弟は 誰にも負けない力を手に入れました

弟は願いを叶えてくれた 女神様に感謝し

力を兄のために使うことを約束しました


「お兄様のために この力を使います

 私になんでも 言ってください」


そう言われた兄は

その不思議な力を 村のために使わせました



そうして兄は弟の素晴らしい力を 村人たちに伝えました


村人たちは心優しい兄の言葉を聞き

そして 村のためにはたらく弟を見て

次第に 弟を受け入れるようになりました


いつしか弟の周りにも たくさんの人がいるようになりました



村は豊かになっていき いつしか王国となりました

王国となった今でも 兄弟たちは2人仲良く力をあわせ

たくさんの人たちに囲まれ

幸せに暮らしているのでした



めでたし めでたし


==================================

これで最終話となります!

はじめての小説ということで、読みづらい部分も沢山あったかと思いますが、最後まで読んでくださった方が1人でもいらっしゃいましたら嬉しいです。

ありがとうございました!!

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