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第98話 ただいま

 レオンとフェルが手早くミノタウロスを解体し、美味しそうに火で炙る姿を見て、最初はモンスターを食べようとする2人の姿に引き気味だったアルとリリーも分けてもらった。

 先ほどまでこの世との別れを覚悟させられるほどのオーラを持つモンスターだったが、再会を祝うのにぴったりな程に脂の乗ったジューシィな肉だった。


「はー美味しかったぁ!ごちそうさまでした。」

「まさかお前に命を助けられる日が来るなんてな。ありがとよ。立派になったな。」

「へへ、皆さんには俺も恩がありますし、お役に立てて良かったです。」

「とりあえず合流もできたし、今日は野宿して明日未開の地を抜けよう!7日もあればルーク様の元に戻れるからな。」

「俺もずっと街の方へ向かって歩いていたのでお会いできてよかったです。ちなみに魔力回復薬って持ってたりしますか?」

「あ、私持ってきたよ?3本あるけどいくつ要る?」

「それだけあれば充分です!後で返すので3本ください。」


 レオンはリリーから魔力回復薬を受け取り飲み干すと、闇空間を作り出しそこにアル、リリー、フェルを格納した上で、<影移動シャドウムーブメント>を使用してクラリウス邸のルークの部屋まで駆け戻った。



「お兄様!!戻りました!!!」

「レオン!?」

 突如部屋に出現したレオンの姿にルークは驚きながらも、駆け寄り強く抱きしめた。


「あぁ、レオン良かった。ずっと心配していたんだよ?」

「お兄様!俺も、お兄様にずっと、ずっとお会いしたかったです、うっうっ・・・。」

「ああ、ほら、おいで。」


 レオンはルークの優しい温もりを堪能した。



「そう言えばフェルはどこだい?闇空間の中かな?」

「はい、お兄様が派遣してくれたアルとリリーも一緒です。<闇空間ダークベース>。」


「うわっ、押すなよ!」

「きゃっ・・・ルーク様、戻りました。」

「ふふっ、おかえり2人とも。」


「ルーク様、フェルもいますー。」

「フェル!元気そうだね、良かった!今日は疲れているだろうからゆっくり休んでね。明日世界樹からどうやって戻って来たのかとか、聞かせてもらえるかな?」

「もちろんです!!」



 そして翌日、朝食を終えレオンとフェルがルークの部屋に行き、説明を始めた。


「疲れているところ急がせてごめんね。大丈夫かい?」

「はい!今後のことも考え俺も早い方がいいと思いますから。」

「ありがとう。では2人がどうやって帰って来られたのか教えてくれ。」

「世界樹の浄化が終わった後、世界樹の守り神というものが現れました。それが言うには、神殿まで戻せるのは2人だけということだったので、ルークお兄様とマリーを戻してもらいました。」

「どうして私たちだったのかは、理由があるのかな?」

「・・・万が一俺が戻れなかった場合、お兄様ならマリーを囲えると思いました。もちろん俺が残れば帰ることができるかもとは思っての行動です!」

「なるほど。でももう自分を犠牲にしようとはしないでね?・・・話を遮ってごめんね、続けて。」


「はい。俺が帰れるかもしれないと思ったのは、影移動シャドウムーブメントという影の間を移動できる魔法があるからです。

 そもそも世界樹は帝国の教会が守るということで、学校の地下にあると言われていますよね?それが実際どうかは分かりませんが、各国との国境には実際に世界樹の根が張ってあります。なので世界樹の中を通ればどこかに出られるのではないか、と思っていたのです。」

「なるほど・・・だが世界樹には闇魔法は基本的に効かないだろう?」

「はい。ただ今回の穢れが関係しているかは分かりませんが、一部俺の闇魔法を吸収して黒くなっていた枝があったので、入り口はできていたんです。あとは出口の問題です。俺の影移動はあくまでも移動しているだけなので、出口がなければ出られません。魔力も移動中は常に一定量消費するので・・・」

「入っても出られない可能性があるんだね。」

「そうです。ですが俺は何となくですが、モンスターを作っているのは世界樹じゃないかと思ってたんです。」


 レオンの言葉にルークはきょとんとした顔を見せた。

「世界樹がモンスターを生み出す?でも世界樹の加護が効いているからこの帝国内はモンスターがほとんどいないんだよ?」

「お兄様の言う通りです。ですが本来世界樹に行くまでの加護が働いているところにはモンスターは出現しないはずなのに、世界樹に行くまでの道には多数のモンスターがいます。1番世界樹に近い場所であるにも関わらずです。

 俺はずっとモンスターはどうやって現れるのか、不思議だったんですが、世界樹は常に穢れを吸収しますよね?それを吐き出してモンスターとして生み出しているんじゃないでしょうか?吐き出しきれなかった分の穢れは蓄積され、100年に一度浄化の必要がある、そういう流れじゃないかと思ったんです。」

「俄には信じがたい話だけど、レオンが戻ってきてるってことは、そうなんだね。」


 ルークは信じられない話も顔色変えずににっこり微笑みレオンの話に耳を傾けた。

「はい!帝国の外の未開の地と言われるアストメリアには多数のモンスターがいます。現にフェルも気付いたらアストメリアにいたと言っていました。

 そのため俺はどこかアストメリアにも穢れが溜まり、モンスターを排出しているような世界樹の一部があるんじゃないかと思い、フェルとともに世界樹の中に飛び込んだんです。結果として、遥か遠い場所ですが、アストメリアに出ることが叶いました。そこからは魔力の続く限りお兄様の元へ戻ろうとしていたのですが、MPが切れ、2人で歩きながら公国へ移動していた次第です。」

「そうか・・・。」


 ルークは深く息を吐き出し、徐に立ち上がりレオンとフェルを抱きしめた。

「大変だったね。2人とも、本当によく帰って来てくれた。2人が無事で、私は何よりもそれが嬉しいよ。」

「お、お兄様・・・。」

「ルーク様、フェル頑張りましたよ!」



 ルークは小さな声で「良かった」と繰り返し、その頬にはポロポロと涙が伝っていた。


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