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第九話 旧三大名家

 アダムイブ学院校門前。入試試験を終えた人達でごった返していた。

 学院内の道は石畳となっており、校門前で続いている。その道を歩いているウィルはラナックとゼルにあることを伝えていた。


「一限目のテスト受けてないのかよ!」


 突っ込むゼル。


 ウィルは遅刻しという事実を言ったのだ。今の彼はニットベストにチノパンを身につけており、今朝の服装に戻っていた。


「君はエンターテイナーとしては一流だね」

「僕もそう思うよ」


 ラナックに同調してしまったウィル。

 そうして三人が校門に差し掛かろうとしたとき。


「遅刻ってどういうことかしら! ウィルグラン! 勝負にならないじゃないの!」


 たまたま話を聞いたクルーナに背後から絡まれてしまった。三人は振り向く。


「じゃあ君の勝ちでいいんじゃない。僕は来年頑張るんで」


 ウィルは穏便に事を済ませようとしたが。


「なんか納得できないわ……」


 クルーナは歯痒(はがゆ)そうにしていた。


「お嬢様も可哀想だよな。真剣勝負するためにニーソを脱がされたのにウィルはやる気ないしな」

「やめてくれゼル、煽るな。それにニーソの件は事故だって言ったじゃないか」

「このままでは最後の模試でウィルグランに勝ち逃げされたままだろう。なんせ今回は真剣勝負ではないから、無効だ無効」

「ラナックもやめてくれ、無効を強調しないでくれ」


 ウィルは二人を(とが)めるが既にクルーナの闘争心は燃えていた。


「そうね。来年、貴方が学院に入学する頃は私はきっと高みに上り詰めているわ。その時、叩き潰してあげるわよ」

「入学したばかりの下級生虐めるのは良くないよ」

「い、虐めじゃないわよ! 心外だわ」

 

 すると、周囲にいる人達が騒がしくなる。


「あ、あの方は!」

「きゃー! かっこいい」

「私、初めて見たわ」

「私も……」


 皆の黄色い声を集めているのは石畳の道を歩いて校門に向かっている人物だった。


 その人物はベージュ色の髪色、ウルフカット、そして中性的な顔立ちをしている青年。彼は白色のベージュとジャケットを着ている。また、前を開けたジャケットからネイビーブルーのシャツを着ているのが分かった。

 青年の名前はベルリック・グロウディスク。旧三大名家であるグロウディスク家の次期当主だ。


「出たわね」


 クルーナは近づいてきたベルリックに言う。対してベルリックはクルーナ達の前で立ち止まり。


「クルーナ嬢、もう友達が出来たのか。割と(うらや)ましいんだが」

「こいつらはタダの庶民よ。貴方と違って私は下々の者と仲良く出来るのよ」

「そんな呼び方で仲良く出来てるとは思えないが」


 ベルリックは相変わらずだなと思い、その場から離れようとしたがウィルの顔を見て足を止めた。


「あんた何処かで会ったことないか?」

「いや、初めてじゃないかな……」

「ふぅん、そうか……」


 ベルリックは納得いかなそうに言う。


(まさかバレたか? あれから一〇年経ってるのに)


 ウィルは不安を隠すように眼鏡を中指でクイッと上げた。


「聞いてくださいよ、ベルリックさん。こいつパンツ一丁で試験を受けてあそこにいるクルーナお嬢様のニーソを脱がそうとしたんだぜ」

「いや、いきなり何言ってんだよ!」


 ゼルがいきなり爆弾を放り投げたのでウィルは彼に掴みかかる。するとベルリックは、


「あっはっはっ、いい友人を持ったなクルーナ嬢」


 愉快そうに言う。


「だから友人じゃないわよ」

「まぁ、とにかくだ。自分はあんたと争うつもりはない。旧三大名家といってもフィユドレー家の血族は戦争で行方不明だ。グロウディスク家とは仲良くしてくれたまえ」


 そう言ってベルリックは背を向けて学院内の敷地を出ていった。ウィルは彼の背中を見て。


「旧三大名家か……」


 と呟いていた。

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