表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウィルの学院譚〜魔法が失われた世界で精霊と共に〜  作者: ネイン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/127

第八九話 不審なベルリック①

 ウィルとラナックは座っていた席に近づくと人だかりができているのに気付く。

 特筆すべきは人だかりは全員、女子生徒であることだ。


「なんだろうあれ」


 人だかりに近づくウィルはぽつりと呟くと、ラナックが推測を立てる。


「おそらく、ウィルグランに対する苦情をクルーナ様に伝えているに違いない」

「そんなけ……いや、ありえるかも」


 島規模で悪評が広がってしまっているので、ウィルは推測を否定できなかった。

 行動すればするほど悪いように捉えられてしまうのでもはやどうするこもできないが日常生活に支障が出ているわけではないので手を打つ必要はないと思っていた。


「あの、どうかしたんですか?」


 ウィルは人だかりの中でクルーナたちに話しかけようとしている一人の女子生徒に声をかける。


「ええっと、ひぃ! ウィルグラン……!」


 女子生徒はウィルの方を振り向くと怯えて身を強張(こわば)らせていた。

 質問さえもできない状況は日常生活に支障が出てしまいかねないと思ったウィルは手を打つ必要があると思い、心の中で前言撤回した。


 テーブルはウィルとラナックがトイレに行く前の状態のままだった。

 空になった皿。手前の席にはリエルとゼルが座っており、リエルはクルーナから高級ブルーチーズを使ったピザを貰って満足そうにしていた。ゼルは周りが女性のみになったので話し相手がおらず、寝たふりをしていた。奥の席にはクルーナとパプリカが座っており、話しかけようとしていた女子生徒を気にしていた。


「で、貴方はなにを言いたいわけ?」


 クルーナが女子生徒に話しかけると、相手は緊張した面持ちで声を振り絞る。


「あ、あのベルリック様見かけていませんか? 朝、皆と一緒にベルリック様を見守りながら登校したので学院にいるはずなんですが」


 女子生徒は同じ旧三大名家のクルーナならば何かを知っているかもしれないと思っていた。


「堂々と集団ストーキングを自白しているじゃないか、通報したほうがいいかもしれない」


 と、ラナックが口を出す。

 それを聞いた女性生徒たちが怒りを(あらわ)にする。


「はぁー? 見守っているだけなんですけど」

「むしろあたしらがいることでベルリック様が安全に登校できると思いますよ」

「エルフってやっぱ美形ね。ベルリック様に及ばないけどね」


 中には上から目線でラナックの容姿を褒める者もいた。


「今の言葉は隣にいるウィルグランの気持ちを代弁したのだが」

「おいおい! 僕のせいにすんな!」


 ウィルはラナックを肘で小突く。


「やっぱり、そうだと思った!」

「なんであんたまだ捕まってないの?」

「ベルリック様こんな変態にも狙われてて可哀想に」


 怒りの矛先はウィルに向いた。


「うるっさいわよ、話がずれてるわ。貴方たちベルリックの行方を知りたいだけなのかしら?」


 クルーナはテーブルは軽く叩いて立ち上がり、周囲を黙らせる。


「は、はい! そうです!」

「悪いけど知らないわ。そもそも私は今週ベルリック・グロウディスクを見てないわよ。貴方たちの方が詳しいはずよ」

「そうですか……クルーナ様ありがとうございます」


 女子生徒は肩を落としてクルーナに一礼する。

 ぞろぞろと女子生徒の集団は帰っていった。


「もうそろそろ、お皿片付ける?」


 パプリカは言外にお昼休みがもうすぐ終わることを示唆するとクルーナは「そうね」と答える。

 午後の授業が始まるまで約一〇分となっていた。各々、トレイに皿を載せて食器返却口に向かうが、


「ウィル君、クルーナちゃん、ちょっといい?」


 リエルは二人を呼び止める。

 席から立ち上がり、足を止めたウィルとクルーナに近づいていった。


「どうしたの?」


 ウィルは聞き返す。


「ベルリックってあの黒鎧(くろよろい)の人でしょ、この建物の屋上にいたよっ」

「えっ、そうなの?」

「どうしてさっき言わなかったのかしら?」


 少し驚くウィルと疑問を口にするクルーナ。


「だってだって、細長くて大きい銃持ってたんだもん、危ないでしょ」


 リエルは疑問に答えると、『銃』という言葉を聞いたウィルとクルーナは不安が(つの)った。


「先日のこともあるし怪しい……」

「気になることは確かだわ」


 森林地区での出来事を思い返す二人。

 そのあと、クルーナはスマートフォンを取り出し、適当に検索をかけて、銃の一覧表が載っているサイトを開く。


「リエル、銃の種類はこの中のどれかしら、細くて長いって聞くとライフルの系統だと思うのだけれども」


 クルーナはスマートフォンの画面をリエルに見せる。


「うーーん」


 リエルは(うな)りながら画面を指でスライドさせる。


「あ! これこれっ、似てるかも」


 ある銃を指さすリエル。

 ウィルとクルーナは画面を覗き込んだあと、互いに見合う。


「スナイパーライフルよね、これ」


 クルーナの言う通り、リエルが指さした銃は狙撃銃だった。

 二人はベルリックに不信感を抱く。


「屋上行ってみる?」

「当然よ! 行くわよウィルグラン、リエル」


 皿を返却したあと、三人は屋上へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ