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第七話 食堂黒ニーソ事件②

 食堂の床に両手をつくウィル。

 (うつむ)いて硬直するクルーナ。


 そして、周囲でざわついている人々がいた。


「えっ何? セクハラ?」

「何が起きたんだ?」


 集まった人々は何事かと思い予想を口にする。


「俺見たんだんよ! そこの人が女の子のニーソを脱がそうとしてたんだ!」


 と説明するのはクルーナの背後にいた男性。その男性に同調するかのように、


「その人の言う通りだ! 俺にぶつかって倒れたこの男が手を差し伸べてくれた女の子を脱がそうとしてたんだ!」

「違うからああ! いや結果的にはそうなったけども‼︎」


 上腕二頭筋だけが発達している男の言うことをウィルは否定するが言い訳にしか聞こえない模様。そもそもパンツの上に白衣を直に身に纏っている人間がまともなはずがない。


「人の善意を踏み(にじ)るってマジ?」

「うわ〜最低なんだけど」

「てか格好やばくない?」

「最高かよ。俺もニーソ欲しいぜ」

「その勇気に賞賛」


 何人かおかしなことを言う人物がいたが、基本的に野次馬はウィルをなじっていた。


「とりあえず、警備員呼んだほうがいいかな?」


 誰かが提案する。しかし。


「待ちなさいな!」


 芯の通った声がする。声の主は先程まで硬直していたクルーナだ。彼女は続けて言う。


「警備員を呼ぶまでもないわ。私はルーデリカ家の一人娘よ、こんな些細なこと気にしないわよ」

 

 その台詞に皆は。


「えっ! ルーデリカ家って旧三大名家の?」

「グロウディスク家のご子息も今年、受験しているだとか。かなりのイケメンだったわよ」

「にしてもさすが、かのご令嬢だ。器が広い」


 クルーナの家名を知った途端、少女に熱い視線を送る。ただ、中には。


「確か……あの子の家が研究してたものが利用されて一〇年前の大戦が勃発したんだっけ?」

「おい馬鹿! 滅多なことを言うもんじゃないぞ!」


 悪評を口にする者がいた。それを耳にしたクルーナは微かに肩を震わせたが気丈に腕を組んで見せた。


 一方、ウィルは。クルーナが自分を気遣ってくれたと、故意にやったことではないと判断してくれたと思った。警備員に突き出される手前だったので彼女の言った台詞に感激して泣きそうでもあった。


「クルーナ・ルーデリカ……君を見直したよ」

「それ以前に見損なわれた覚えないわよ。とにかく貴方の魂胆は分かったわ」

「はぇ?」


 ウェルは()頓狂(とんきょう)な声を出す。こいつは何を言ってるんだと。


「私は万全な状態の貴方を倒すために助けると言ったわよね?」

「あ、はい。言いましたね」


 腕を組む少女。そして困惑する青年は正座の体勢になる。


「その後、貴方はわ、私をぬ、脱がそうとしたわ!」

「それは誤解だって‼︎ というか大きな声で言うな!」


 少し照れながら喋るクルーナと慌てて立ち上がるウィル。なお、野次馬は流石にルーデリカ家の言葉を遮ってはならないと口を(つぐ)んでいた。


「いいから聞きなさい。つまり状況を整理すると貴方はニーソが無いと万全な状態なれない! これが無いとテストで実力を発揮できない極度のニーソ好きよ」

「んなわけあるか‼︎ いやいや皆さん、納得するように頷かないで!」


 野次馬はクルーナの言葉に唸ったり、感心していた。


「それでも私は次期当主として、上の立場に立つ者として庶民を助けるわ。だ、だから」


 少女は言葉を詰まらせたあと、


「わ、私ので良ければ差し上げるわ……」

「や、やめてくれって! なんでそんな発想になるんだよ」


 黒ニーソを脱ごうとしたクルーナの手を押さえるウィル。二人が掴み合っていると。


「クルーナ様の好意を無下(むげ)にする気か!」

「男なら黙って受け取ってよ!」

「光栄に思え (ほま)れやぞ」

「えぇ……」


 ウィルは野次馬の言葉に戸惑い、同調圧力に屈してしまった。

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