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第六話 食堂黒ニーソ事件①

 ウィルは向かい合っているクルーナの態度に「やれやれ」と嘆息していた。


「余裕そうね」


 クルーナは腕を組んで不服そうにする。最もウィルは一限目にあった化学の試験を受けてないので負けるに決まってるし、そもそも勝負するつもりもないと思っている。


「違うよ。呆れてるんだよ」

「それと話変えていいかしら?」

「ん?」


 ウィルは疑問符を浮かべ、心の中で身構える。


「何よその格好。正直ドン引きしてるわ」


 そう言って、クルーナは怪訝(けげん)な顔でウィルの足元から顔へと視線を動かす。


「朝は普通の格好してたんだよ。でも色々あって下着の上に白衣を着ることになった」

「し、下着の上⁉︎ トップスとかボトムズとか何も着てないってこと?」

「はい」


 ウィルは簡潔に答えつつ、チラッと並んでいる列を確認すると並ぶ人が少なくなったため、前を詰めた。一方、クルーナはヤバい奴を見る目で相手との距離を体一つ分空けて列を詰める。


「事情は分からないけど貴方おかしいわ。次の試験まで時間あるから服ぐらい買いなさいよ」


 呆れる名家の娘。


「基本的にお金ないからね」


 金欠を訴える青年。その真向かいにいる少女は天井を見上げ、考え込む仕草をしたあと、


「ルーデリカ家として貴方に金銭を貸し与えるわ。それで服を購入なさい」

「えっ‼︎ いいの!」


 ウィルはグイッと少女に近づく。感極まりそうだった。なお、クルーナはほぼ全裸で白衣を身に(まと)っている変質者が近づいてきたので背中を反らして距離をとった。


「と、当然よ。家の名声上げるため、そして庶民達を助けるのが私の役目よ」

「いいこと言ってるんだけど。庶民という言い方に性格出てるよね」

「いいから、黙って私に助けられなさい。わたしには万全な状態の貴方を倒す必要があるの!」


 今度はクルーナがグイッと青年に近づいた。ウィルは彼女を落ち着かすために「まぁまぁ」と両手のひらを下に向けてひらひらさせる。


 そのとき、ウィルの背後で並んでいた男性が腕を伸ばして背中をひねるストレッチをし始めると。


「ぐふべっ‼︎」


 ウィルの脇腹に勢いよく男性の腕が直撃し、彼はその場で(うずくま)った。男性は上腕二頭筋が人の三倍ぐらいあったので攻撃力がありそうだ。


「あ、あんた大丈夫か? すまんかったな」

「だ、大丈夫です……」


 ウィルは顔を下に向けて、痛めた脇腹を両手で(さす)っていた。するとクルーナは彼に手を差し伸べ、


「ドジね。助けてあげるから感謝しなさいな」


 と言う。青年は「ありがとう」と言葉を返す。そして、なんだかんだ優しい子だなと思いながら、顔を下に向けて自身の脇腹を気にしつつクルーナが差し伸べた手を掴んだつもりだった。


 ズルッと手元で何かが(めく)れる感触があった。


「あ……あ……っ」


 ワンピースの裾を押さえながら声は震わせるクルーナ。その顔は熟れた林檎のように赤い。


「あっ」


 ウィルはようやく状況を把握した。

 右手でクルーナの手を掴んだつもりだったが掴んでいるのは彼女の左太もも。捲れる感覚がしたのは掴んだ場所が丁度、彼女の履いている黒ニーソの(くち)部分だったので思わず手を下にずらしたときにニーソが捲れたのであった。


 ウィルが弁明しようとしたとき、腕を彼に当てた男が、


「へ、変態だ……」


 ぽつりと呟く。なお、クルーナはどうすればいいか分からず体が硬直していた。


「ち、違うって! これは事故なんだよ、って! しまったぁぁぁ!」


 彼はしゃがみながら肩越しに男に弁明しようとするが未だにニーソ越しに太ももを掴んでおり、喋っている最中に右手が下にずれてしまったので更にニーソが捲れる。また、何故か指がニーソの裏側に入っていた。


「へ、変態だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「やめろおおおおおお! 二回言うなああああ!」


 二人の男の声が食堂に響き渡っていた。

 

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