第三一話 数々の噂
ウィル達の周囲にいる人々はざわつく。
「ベルリック様いいよね。言葉遣いとか好きだわ」
「ちょっとニヒルな感じも最高」
「めっちゃ分かる〜。それに〜今年の入試一位、軍事技術に長けているグロウディスク家のご子息、人は彼のことを天才ベルリック・グロウディスクと呼ぶ」
「急にどうしたの⁉︎」
二人組の女性の一人が急に説明口調になったのでもう一方の女性に突っ込まれた。また、近くに二人組の男性もおり、
「クルーナ様とどうやったら友達になれるんだろうか 今度話しかけてみようぜ」
「でも下手に話しかけたら嫌われそうじゃね? やめとけやめとけ」
「だよな〜。今年の入試二位、規律や規則を絶対的に遵守するルーデリカ家のご令嬢、人は彼女のことを秀才クルーナ・ルーデリカと呼ぶ。くわえてルーデリカ家は大戦で研究を利用されて悪評が立つも威厳は損なわれていない」
「急になんだよ⁉︎ 怖いから!」
先程の二人組と同様に一人の男性が急に語りだしたのでもう一方が口を入れる。
「あいつ変態の癖にオツムは良いらしいな」
「テストの点がいいだけのタイプだろ」
「しかも一教科受けないとか舐めてるだろ」
人々はウィルのことも口にする。
「下着姿で入試を受験し、その上に白衣を着るという異常者」
「クルーナ嬢のニーソを脱がし、あまつさえ押し倒すという鬼畜っぷり」
「しかも四教科しか受けない舐めプしやがって」
ウィルは額からは冷や汗が滴る。誤解はあるものの事実なので下手に否定できなかった。
「噂によると森林地区の一番デカい木の上でエスエムクラブのオーナーをやってるらしいぞ」
「あの階段の上、そんなお店があったのかよ!」
「いやいや、ちょっと待て!」
初めて耳にする噂を聞いたウィルは口を挟む。彼はアルバイト先の雑貨カフェがエスエムクラブと誤解されてたのは知っていたが、エスエムクラブの経営者ということになっているのは初耳だった。
「うわ、話しかけてきたぞ!」
「ネタはあがってんだよ、オーナー!」
「誰がオーナーだよ。そんなわけあるか」
と、ウィルが否定する。
「貴方、経営の腕があったのね。大したものだわ」
「四教科満点は伊達じゃないようだな。簡単に聞こえるがその歳でお店を持つのは中々、出来ることじゃない」
話を聞いてたクルーナ、ベルリックは青年を称える。
「どこで褒めてんの……」
少々、呆れ気味のウィル。この二人の観点はやはり、常人とは異なると感じたようだ。
「リエル、木の上にあるのは普通の雑貨カフェだよね。ほら皆に言ってやって」
ウィルはリエルに助けてもらうことにした。
「うんっ、やって来た人がエナちゃんに叩かれると喜んでくれてお金を出してくれるの」
「言い方まずいって!」
リエルの発言に人々は更に騒がしくなる。
「やっぱりいかがわしいお店じゃないか!」
「誰よ! こんな変質者入学させたの!」
これはまずいと思ったウィルは効果的だと思った手段にでることにした。
「普通のお店だから! 飲食店の営業許可証とかちゃんとあるよ。入学式の日に持ってくるから!」
そう言って、周囲を見渡す。
そして、とある人物と目が合う。その人物とは、
「その男の言ってることは嘘だ‼︎」
「き、君は……!」
あの上腕二頭筋が発達している男だった。




