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ウィルの学院譚〜魔法が失われた世界で精霊と共に〜  作者: ネイン


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第一一八話 最強の人工精霊

 ウィルはリエルがグラウンド中に転がっている真・精霊石に目移りしていることに気付く。

 彼はリエルに問いかける。


「なにかあったの?」

「おかしいの、石が」

「石? 真・精霊石のことだよね」


 リエルは頷いたのでウィルも辺りの真・精霊石を見る。


(なんだ妙な力というかエネルギーというか……なにかを感じる)


 ウィルは形容しがたい力を真・精霊石から感じていた。

 その頃、グラウンドで行われていた鬼ごっこが終了していた。


「ぎゃあああああああああああ!」


 アルフはフィルエットにスタンガンを当てられ絶叫した。バタリと倒れたアルフは舌足らずに発言する。


「す、すひまへん」

「二度とお嬢様に生意気な口を聞かないことだな」


 お灸をすえたフィルエットはアルフを引きずりクルーナの下へと移動し始める。

 クルーナはインカムで自警団たちに作戦の終了を告げようとするが、地上を見渡すウィルとリエル、上空を見るベルリックが気になる。


(なにかしら、三人とも険しい顔してるわね)


 クルーナはインカムで連絡するのを止める。


「二人ともなに見てるのかしら」


 彼女はウィルとリエルに訊く。


「石から妙な力を感じるんだ」


 ウィルが答える。


「じゃあ空を見ているベルリックもそうなのかしら」

「え?」


 ウィルは気になってベルリックを見ると顔を見上げているので、同じように空を見ると、リエルもつられて上を見る。

 突如、空を飛んでいた流れ星のようなものがいくつもグラウンドに向かって落ちていく。


「「「⁉⁉」」」


 一同は飛来物の急激な角度の変化に驚愕していた。

 いくつもの飛来物は、それぞれ別にグラウンド中にある真・精霊石にぶつかる。


「真・精霊石だ! 空か降ってきてるんだ!」


 飛来物を視認したウィルが真・精霊石だと断定する。

 ウィルらと少し離れたところにいるベルリックはグリア―ドの胸倉を掴む。


「なんだこれは、まだなにかやる気なのか!」

「いや、知らぬ。この現象は知らぬぞ」

「なに」


 呆然としているグリア―ドの様子からして嘘を言っているようには思えなかった。

 

 数えきれないほどの飛来物がぶつかるうちに、そこら中にある真・精霊石は大きくなる。

 そして――、


 カンカンカンカンッ! カンカンカンカンッ! カンカンカンカンッ!


 と、グラウンドにある青い鉱石同士が独りでに飛び交って集まる。石同士がぶつかる音が響き続けた。それはイフリータを召喚させた巨大な鉱石も例外ではなかった。集まった鉱石はウィルら三人とグロウディスク親子の間に位置していた。


「お嬢様! 下がってください異常です!」

「擦れる擦れる! 顔が削れる!」


 フィルエットはアルフを引きずりながらクルーナの下へと走った。

 クルーナは自分の身長より遙かに高くなった鉱石の集合体を見上げながら答える。


「分かっているわよ。ただこれを放っておくわけにもいかないでしょう……リエル、なにか存じてないかしら」

「分からないけど、嫌な予感がする。クルーナちゃんたちはいつでも逃げれるようにした方がいいかも」


 いつになく神妙な顔をするリエル。

 その瞬間、集まった鉱石から無数の白い手のようなものが出てくると全身を覆いつくす。奇妙な光景にリエル以外は顔を引き(つら)らせる。白いなにかに包まれた鉱石はドクンドクン……と、鼓動する音が空気に伝う。


「くる」


 リエルが呟くと、白いなにかは衝撃音とともに魔力(マナ)のようなエネルギーを放ち周囲の空気を揺らがせる。


「「「………………」」」


 一同は言葉を失う。

 白いなにかは霧散し、その中から人が現れた。人といっても、手足、顔の輪郭がはっきりしているだけで全身が白く輝いているため本当に人かは疑わしい。外見から確認できるのは長い髪らしきものを逆立たせて(なび)かせていること、胸部に双丘があるので女性かもしれないことと、鼻、エルフのように細長い耳、口の輪郭ははっきりしており、目が開いていることも分かるが、瞳すらも肌と同じく白いため表情が読み取れない。


「あれは……精霊、人工精霊なのか」


 ウィルは冷や汗をかく、白い人、もとい白き精霊からプレシャーを感じる。


「人工精霊の自我が一つになって、より強い存在になろうとしている感じかなっ。空から降ってきた石はより強くなるためにこの島、いや違うかも、世界中から引き寄せたのかも」


 リエルの口調はいつも通りだ。しかし、顔を動かさず白き精霊を見たまま、眉間に(しわ)を寄せた少女の顔はウィルは見たことなかった。


「あれはいったいなにをするきなんだ」

「あの子から伝わってくるエネルギーから感情を読み取ってるだけだから正確なことは分からないけどっ、リエルに強い殺意を向けてるよ。人工精霊たちが最後に命令されたのはリエルを倒すことだから、その言葉だけに突き動かされてリエルより強くなったんだ」

「リエルごめん今なんて言った」


 ウィルは動揺して訊き返す。


「ウィル君のいいたいこと分かるよ。リエルより強いって言葉に不安なんでしょ」

「リエルより強かったら打つ手がないというか、正直、信じられないんだけど」

「リエルは感じ取れることをそのまま言ったから本当のことは戦わなきゃ分からないねっ」


 リエルはウィルを見て屈託のない笑顔を見せた。


(可愛い、じゃなくて、今のリエルの言葉が強がりじゃなければいいんだけど)


 ウィルは一抹の不安を覚える、


 白き精霊は人差し指をリエルに向け。


「この次元に至ることでようやくアナタの存在が分かった」


 感情のこもってない声色を出す。

 リエルは声をかけられると数歩前に歩き、白き精霊と相対した。

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