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欲望の赴くがままに  作者: えっひょい
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0話:大戦の光景

体が焼ける様に熱い――


 


身体の至る所に傷を負い、その傷から血が流れる。それでも足を引き摺りながら歩き続ける


目の前に広がるのは炎上した廃墟。何百年も前からあった歴史ある建物も、新しく作られた綺麗で美しい建物も、全てが等しく壊されている。足元に転がるのは死体の山。自分と同じ人間や建物と同等な大きさをした異形の化け物の様々死体が転がっている。そのまま五体満足で死んだ者もいれば、片腕が、片足が、身体半分が無い欠損した死体も、跡形も無くなった肉片もある。


 


この光景はなんだ――


 


正に地獄と化した王都。あの綺麗で無限に広がっていると思わせる空も、今では至る所から溢れ出る炎の煙が黒く全体を染め、まるで一つの箱に閉じ込められている様に感じてなんとも狭苦しいものに変貌している。平和だった頃の光景など一片たりとも無い。守りたかった光景が一片たりとも。


 


俺は何の為に闘ったのだ――


 


幾十、幾千、幾万もの敵と戦い、殺し続けた。目の前にいる敵は全て殺してきた。仲間が泣き叫んでも、仲間が殺されても、敵を殺す手を止めなかった。その結果、敵は居なくなった。この心に宿る怒りの激情ををぶつける敵全てが。敵が居なくなる、それは即ち勝利と言えるのではないか?


 


なら、この光景は、この結果はなんだ?――


 


誰か教えてくれ。敵を殺し続け、それが居なくなれば勝利じゃないのか?自分が殺されなければ勝利じゃないのか?俺は負けてなどいない。だったらそれは勝利じゃないのか?なら、この光景はなんだ。この見るも無残な光景はなんなのだ。


この笑い合った何千もの戦友の屍と、燃え盛る廃墟の山が勝利を得た者が手にするモノとでもいうのか?


 


――■■■■■ッ!!


 


声にならない叫びを発する。喉から血が溢れようがお構い無しに叫び続ける。この覆ることの無い現実を否定するかのように。佇んでいるだけだと、負の感情に頭が支配されそうで怖いのだ。


 


――■■■ッ!!■■■■■ッ!!!


 


獣の叫び声が廃墟と化した王都に虚しく響き渡る。そして頭を抱えて膝を折る。この胸を張り裂けばんとする程の激しい鼓動、呼吸が一向に収まらない。彼らとの思い出と断末魔、平和だった光景が瞼の裏にへばり付いて無くならない。失った事など実感したくないのに目の前の光景が現実を突きつけてくる。


 


――――――――――。


 


地に倒れ仰向けになる。眼に映るのは変わらずの黒煙に染まった黒い空。無言のまま手を伸ばすが何も掴めずに空を切る。まるで今の自分を表すかのように手には何も残らない。


 


あぁ…そうか。


分かりきっていたんだ。この光景を、この結果を目にした瞬間に。ただ目を背けていたのか


俺は、俺達は――――


 


「――負けたのか」


 


 


そう呟いたと同時に意識が途切れた


 


 


 


 


 




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