もしもこの世界に「小説家になろう」が存在しなかったら
おそらく人気作家の多くも、ベストセラーかっ飛ばしたなろう作者でさえその実績の全てを自分の実力と思ってはいないでしょう。「小説家になろうあればこそ」と言う感謝や謙遜の気持ちは持ち合わせているだろうと思います。
小説家になろうで掲載している作品でそれほど高いポイントでもなく、なおかつ持ち込み企画や新人賞の選考を突破して書籍化、さらにはベストセラーになった作品の作者、こういう人は紛れもなく全て自分の実力といってもいいでしょう。しかしながら、そういう人に限って「小説家になろうの読者のみなさんと運営会社の皆様のおかげでこのような機会に恵まれることができました」と、さらに謙虚な物言いをすることが多いように思います。
まぁ仕込みとかコネとか疑い出したらきりがないわけですが。そう言うこともなくはないので困る。困らない。いえやっぱり困る。
それについてはまた別の記事で触れるとして、小説家になろう書籍化ブーム以前の作家志望者はみんなこのハードルを越えなければいけなかったのです。そう考えると結構ハードモードでしょ。
現在の書籍化ブームというのは、おそらく当時の運営サイドでさえ予想もしなかったものではなかったでしょうか。しかしここまでとは思わずとも数は力なり。アクセス数から商機を見出し法人化したのですから、やはり早い時期にビッグビジネスの確信を抱いていた人は多いと思います。
小説家になろうが注目を集め始めた頃でも、出版社のアルファポリスから時々小説家になろう作品は書籍化されていました。
アルファポリスは小説家になろうに特化した出版社ではなく、元々インターネット上の人気サイトのコンテンツを書籍化する会社でした。また毎月のwebコンテンツ大賞の選考を通じて、有力なコンテンツを探すだけでなくコンテンツの後押しもするところが出色の取り組みと言えます。
もう知らない人も多くなっていると思いますが、ドリームブククラブという自分の気に入ったコンテンツに出資して配当を受け取るという書籍クラウドファンディングも行なっていました。この試みは出版社にとって出版計画の採算のリスクを軽減する以上のメリットがあったと思います。例えば30人の出資者がいれば、より高い配当を受け取るために出資者は自発的に書籍の宣伝をしてくれることでしょう。この頃において30人の無償(配当はありますが、広告費という点で)で働いてくれる広報部隊というのは、結構な力を持っていたのではないでしょうか。
残念なことにドリームブッククラブはその後廃止されてしまいました。アルファポリス社が躍進したことでリスクを大きく取れるようになったことと、おそらく配当の計算等、諸々の作業が業務の負担だったからではないでしょうか。
個人的にはみんなで何かをするというプロジェクトが好きなのでまたどこかの出版社が同様のことを始めてくれないかなと思っています。