第5話
勉強とバイトとガチャで更新が遅くなりました。
以外にも、大勝利~♪、しました。
気がついたら、真っ暗な空間の中にいた。自分の手とかは見ることができるが、それ以外は全くなにも見えない。ここはどこだろう?
「華形さん」
突然、聞き覚えのある声が聞こえた。この声は、聞き間違えるはずもない……、
(和哉く…ん?)
振り返って返事をしようとしたら、声が出なかった。和哉くんはそこにいて、話しかけられる。だが、私は、声が出せなかった。
「華形さん、もう僕に関わらないでくれないか?君のような人は、好きじゃないんだ」
(えっ? 和哉くん、なにを言っているの? なんで、そんな悲しいことを言うの?)
突然の彼の言葉に、私は何か言おうとするが、やはり声が出ない。
言いたいことを言えず、もどかしく思っていたら、そこにもう1人の人間が現れた。現れて欲しくない、最悪の人間が。
「華形サン、カズくんもそう言ってるから、もう諦めてくれない? わたし、ショージキメーワクなんだよね。」
(川崎、奈々美……!)
突如現れた川崎は、和哉くんの隣に立ち、ここは私の居場所だとでもいうような、侮蔑の視線を私に向けてくる。
(ふざ、けるな…!)
「キャー、コワイ顔。カズくん助けてっ」
「大丈夫だよ、奈々美。彼女は残酷で、とても非道な人だけど、僕たちに手出しはできないよ。こんなことをしても、ね」
そう言って、和哉くんは見るものを安心させる、天使のような笑顔を浮かべ、川崎の手を取って、顔と顔をゆっくりと近づけていく。
(そんなっ! 待って、やめてっ!)
私は2人に向かって手を伸ばすが、その手は全く届く気配がない。
そして、女は恍惚の表情を浮かべ、男の熱い口づけを受け入れる。2つの唇が重なり合う。2本の舌が絡み合い、くちゅ、くちゅ、と淫らな音を立てて、2人の顔を溶かしていく。
「んっ……、ぁむ……んっ……」
(いやぁぁぁあああっっっ!)
2人が男女の表情をした瞬間、私は叫び、暴れ、2人を引き剥がさんとする。だがやはり声は出ず、手も届かない。せめてこのおぞましい光景を見ないよう目を閉じようとするが、まぶたがなくなってしまったかのように、視界を遮ることができない。手で顔を覆っても、手が透けていき、2人のキスを見せつけられる。
「ん、んっ……んぱっ。はぁ、は、んっ」
ちゅぱっ、と気の抜ける音を立てて、2人の唇が離れるが、すぐに男が女の腰に手を回し、貪りつくように再び口づけをする。彼女を両手に抱く彼は、今や1匹の獣のようだ。
(やめてっ! やめてっ!! 私にそんなものを見せないでぇぇぇえええっっっ!)
文字通り、私は声にならない叫びをあげる。周りはすべて黒。この、男と女の姿しか目に入らない。私は、この地獄にいつまで苦しめばいいのだろうか?愛しい彼を、あの女に奪われる光景なんて、見たくない。
しばらくして、再び唇を離し、2人はとろけるような顔を合わせ、互いを見つめる。そして…
「奈々美」
(あぁっ、まさかっ。いや! やめて! 言わないで! それだけは!!)
彼の口から紡がれるだろう、自分ではない他の女に向けられる言葉。私にだけ向けて欲しい言葉。私が心から欲しいと願う言葉。私はあの女に向けられたそれを遮ろうと、必死に叫ぶ、手を伸ばす。絶対にそれを言わせてはならない!
だが、無情にも彼の言葉は……、
「愛してる」
止まることはなかった。
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「いやあああああああああああああああああああああ!!!」
絶叫を上げながら、毛布を跳ね飛ばして、私は体を起こした。息を荒げ、右腕をあらん限りに伸ばしている。
「はあ……はあ……はあ……。ここは……」
周りは黒い空間ではなく、見慣れた白い壁に、白いレースのカーテン、質素な木製の勉強机の上には、先日和哉くんからもらった赤い花のストラップが飾ってある。ここは、これから私と彼の思い出で飾られていく予定の、今は飾り気のない私の部屋だ。
体に入った力を抜いた後、ベッドのそばのカーテンを開け、外の様子を確認する。ベッドの横の窓には、雨が降るほどではないが、少し湿っぽい曇り空と、目の下に大きなクマを作り、髪をくしゃくしゃにした女が見えた。
「ひどい顔」
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4月30日、朝。私は朝練のある和哉くんとは別々に登校する。いつもなら、一緒に登校できなくて残念だとこぼしたりするが、今日だけは、このひどい顔を見られなくて良かったと思っている。無論、教室に入るまではなんとかするつもりだ。
なんとかマシであろう表情を作り、昇降口に入る。朝のため蛍光灯はついていない。しかし、日はまだ高くないため昇降口は薄暗い。何列にも並んだ下駄箱のうち、自分の上靴が入っているところまで行く。
「なにか用かしら、西条くん?」
上靴に履き替える最中、校舎の暗いエントランスホールの方でひっそりと立つ西条に声をかける。
「なに、今朝はさぞ寝覚めが悪かったろうと思ってね」
「ふん、そうね。昨日あそこにあんたさえいなければ、きっといい朝を迎えられたはずだわ」
「ははは、相変わらず厳しい物言いだ」
ほんとにこの男はむかつく。川崎の前にこいつを殺してしまおうか。まあ、昨日の彼女とのやり取りを見ていなければの話だが。あの自信に満ち溢れた川崎の顔を、一瞬にして青ざめさせたのだ。それだけでも、まだ利用価値はある。それに、この『やり直し』についてもまだ私の知らないことを知っているかもしれない。
「それで? それだけ言いに来たわけじゃないんでしょう?」
「ああ、都合のつくときに、さっそく昨日渡した住所の場所に来てくれ。昨日の詫びも兼ねて、またいろいろと話してやろう」
主人公(ヒロイン?)をいじめ続ける下衆作家とは、私のことだ!