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GLoop〜やり直し世界と僕〜  作者: 倉里小悠
第1章 華形香織
20/21

閑話 逆鱗

お久しぶりです。

研修旅行でタイに行ってました。

今後はこういうことのないように書き溜めて行きたいです。

 "()"、西条要は今、金の月の下照らされた中庭にて、青白い顔の男を前にしている。


「なんだ貴様は? 我を誇り高きヴァンパイアと知って、我の前に立つのか?」


 男が何か喋っているようだが、心底どうでもいい。前口上は"()"がさっき律儀に聞いてやった。俺が聞いてやる義理はない。


 私は合理主義で、完璧主義だ。殺すと決めた相手でも、しっかりと話を聞いてから、効率的に殺す。そこに感情は無くて、ただミスが無いよう淡々と事を成す。


 けれど、俺は違う。

 より人間的で、より感情的、より……残酷だ。




「"我ガ望ミヲ(Reload)汝ガ知ル(and)形ニセヨ、(create,)“世界ノ記憶”(“Record”)"」

「イングラム」


 俺は銃を構えて引き金を引く。パスパスを乾いた音を立てて、鉛の弾丸が男の体を貫く。


「クハハハハッ、宝の持ち腐れとはこのことだな! よりにもよってこの私に対して現代兵器を持ち出すとは! 私はヴァンパイアだぞ? そんなおもちゃで倒せるものか!」


 男はそう言って血を流しながらも、平然と俺の方へと向かってくる。

 しかし、



「うるさい」


 俺が手をかざし、男の流した血が形を持って男を貫きはじめる。



「ぎゃああああああっ! な、なんだっ!?」


 血に貫かれて、そこから流れ出た血がまた男を貫く。そしてそこから流れ出た血がまたまた男を貫く。さらにそこから流れ出た血が…………

 さながら人間がハリセンボンに変わるかのように、男からは赤黒い槍がどんどん生えてくる。


「た、助け……がぁあああああああああっっ!!」


 まるで漫画のようだ。ドシュッという音が何度も、何度も、おかしいくらいに暗闇に響く。

 男が血に濡れた目で俺を見る。そこには恐怖があった。だが、その血も槍に変わり、彼の瞳を貫く。


 貫く、貫く、貫く、貫く、貫く、貫く、貫く、貫く、貫く、貫く、貫く、貫く、貫く、貫く、貫く、貫く、貫く、貫く、貫く、貫く、貫く、貫く、貫く、……………………………………








 華形香織と出会ったのは、随分と昔だ。1年前という大昔だ。


 ズシャッ


 俺は彼女に恋していた。


 グシャッ


 そのときは"私"もいなくて、和哉、菜穂、枋美を加えての5人で平和に、幸せに過ごしていた。


 ブシャッ


 結局彼女は和哉に取られてしまったが、彼女と肌を重ねたこともある。今の彼女にそんな記憶はないだろうが。


「た……す……け……っ」

 ズジャッ


 愛していた。ひたすら真っ直ぐに前進する彼女が好きだった。彼女1人だけじゃなくて、5人揃ったみんなが好きだった。この幸せを壊させてたまるかと、当時は思っていた。


 だから……、俺はこいつを許さない。

 愛する人を害したこの男は、絶対に苦しめて殺す。








 俺の目の前には、赤黒い針を持った大きなハリネズミが出来上がっていた。

 すべての傷が槍で埋まってしまったのだろう。新たに針が生える様子はない。


 パチンッ、と俺が指を鳴らすと赤黒い槍は無くなり、先ほどの男が全く傷のない生まれたままの姿で現れた。


「がぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

「不死身というのも困りものか。苦しみが永遠に続くんだからな」

「わ、れは……高貴なる吸血鬼だぞ……。なぜ、あの……悪魔の使い魔なんぞに……っ。この魔法は確かに……とあいつの使い魔……か使えない魔法……。だが……あいつは……などではない……。ならなぜ……こいつが、れ……を……?」


 男はブツブツと何かを言っている。俺に何かしらの疑問を持ったのだろう。



 だが、関係ない。

 私に戻ってしまう前にこいつをできるだけ苦しめたい。絶対にその罪を贖わせてやる。


 再度、男に向かって手をかざす。


「ヒィッ!! やっ、やめてくれっ! 我が何をしたと言うのだ!?」

「生まれてきた」

「はあっ!?」


 こいつの間違いは、生まれてきて、俺たちの前に立ったことだ。だから、殺す。



「"我ガ望ミヲ(Reload)汝ガ知ル(and)形ニセヨ、(create,)“世界ノ記憶”(“Record”)"」


 俺の手に青白い光線が集まり、1つの拳銃を形作る。ある名銃の形を。


「ガバメントwith silver bullet」


 そして俺はその引き金を引いた。


発射(fire)



 ––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––


「終わったか?」

「ああ、問題なくな。そっちはどうだ? また気絶させていないだろうな」

「くはははっ、儂が殺気を当てるのは初っ端だけじゃ。2度目はないぞ」

「どうかな。イタズラ好きのお前のことだ、何かしている可能性はある」


 西条要が少し目を細めて、キンを見る。

 彼女は肩をすくめて、その視線をやり過ごした。


「なに、お主の逆鱗に触れるようなことはしておらんよ。安心せい」

「そうか」


 西条要とキンはテラスから中へと入る。

 キンは中庭の様子を再び見て呟いた。


「ひどい有様じゃな」

「お前をあんな風にはしたくないな」

「はん、この儂がそう簡単にやられるものか。思い上がるなよ小僧。ただでは殺されてやらん」



 中庭は、芝生が赤く染まり、かつての男は、人の形をしていなかった。身体中に穴が開き、関節や骨など無いかのようにあらゆる方向へと曲がっている。その傍には、拳大の臓器が潰れて捨てられていた。

2度目の西条くん何やってた回です。


また戦ってただけですけどw

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