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GLoop〜やり直し世界と僕〜  作者: 倉里小悠
第1章 華形香織
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第12話

寝落ちしたあああ!

遅くなってしまった…。

 和哉くんと別れた後、私は以前西条に教えられた住所のところに来ていた。


「何この豪邸……」


 目の前には、白塗りの壁でできた大きな洋館が建っていた。

 濃い藍色の屋根に、真っ白な壁。ところどころにある大きな窓からは、中の様子はうかがえない。教会だと言われたら信じるくらいの巨大かつ清潔感のある建物だ。

 私は洋館の大きさと雰囲気に圧倒されつつ、黒い金属製の柵のような門の側にあるインターホンを、恐る恐る押した。


『はぁい。あ、香織さんですね? 今参りますから、少々お待ちくださいー』


 インターホンから、気の抜けたゆるい女性の声が聞こえた。相手は私の名前を言い、すぐにブツリ、とインターホンを切った。名乗っていないのに、なぜ私が誰か分かったのだろう? 顔も西条以外知らないはずだし……。

 不思議に思っていると、建物の中から、


 ドガーンッ、バキィッ、パリーンッ、メリメリメリィッ、……


 とてつもない破壊音が響いてきた。


––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––


「すみません、お待たせしましたぁ」


 5分後くらいに、黒髪青目のメイドさんが出てきて、門を開けた。声は気が抜けている感じだが、メイド服でお辞儀する姿はとても綺麗だ。ショートボブの髪に、木片が付いていなければ。気付いてないのだろうか……。


「今すぐ、ご主人様のところまでご案内しますね」

「ア、ハイ……オネガイシマス……」


 本人が気にした様子ではないので、私も気にしないことにしよう。私は本能的に悟った、つっこんだら負けだと。

 しかしこのメイドさん、すごい残念臭がするが、かなりの美人だ。残念そうだが。

 特徴的な青目は、燃えるように明るく、ふんわりとした黒のショートボブとの組み合わせが印象的だ。顔立ちは和風美人といった感じで、おっとり、という言葉が合うだろう。フリフリの白いエプロンドレスに、シックな黒いロングスカートのワンピース。白いフリルが付いた黒のカチューシャ。ヴィクトリアンメイド・タイプ、というものだろうか。某電気街のミニスカート等にアレンジしたものと違って、媚びた様子が無く、清楚さを感じさせる。しかし、フリルのせいで普通は体のラインは出にくいと思うのだが、彼女の胸部はエプロンを押し上げ、これでもかとその存在を主張している。歩くたびに少しはねるその双丘を見て、私は自分のを思わず見やり、ため息を吐いてしまう。


 玄関から中に入り、洋館なので予想はしていたが、靴は脱がずにそのまま上がらせてもらった。玄関から上がってすぐは、大きな吹き抜けのホールで、生地が赤で金色の刺繍がされた大きなカーペットが敷かれていた。庶民的にはこれがクラスメイトの自宅の玄関口だとは思いたくない。目が回りそうだ。

 辺りを見回すと、先ほど聞こえていた破壊音の痕跡が見えず、代わりに他の使用人達の疲れた様子が見えた。なんか、お疲れ様です。


 残念メイドさん(仮)に案内され、エントランスホール奥の中央にあるゴシックな木製の階段から2階へ上がる。そして、上がって右手の廊下を進んで右側2つ目の部屋に入った。途中の廊下の壁には、よく分からない絵が飾ってあったが、どうせ高いのだろう。下手に触れないのが正解だ。

 道中、メイドさんが2回ほど転んだ。1回目は、階段で足を滑らせて。2回目は、何もないところでスカートに足を引っ掛けて。両手を上げ、顔から床にダイブしていてかなり痛そうだったが、彼女はえへへー、と恥ずかしそうに笑ってから何事も無かったかのように立ち上がり歩いていた。つっこんだら負け。起き上がるときに手を貸したのは言うまでもない。


 いろいろと圧倒されつつも、目的の部屋に到着し、メイドさんがノックしたあと西条の返事が聞こえてきて、部屋に通された。


「よく来てくれた。歓迎するよ。そこにかけてくれ」


 西条が部屋で待っていて、いつもの調子で迎えてくれた。西条がいた部屋は、部屋に向かい合うように置かれた一対の黒革のソファが置かれていて、そこの片方に西条が座っている。窓から陽光が差し込み、ソファの間にある机を照らす。


「ここって、西条の実家なの?」


 勧められたソファに座り、思い切って私は西条に聞いてみた。先生がここに家庭訪問していたなら、腰をぬかして、職員の間で噂になっていただろう。いや、黒岩先生の腰を抜かす姿は想像つかないが。


「いや、この家は知り合いの家だ。いつも入り浸っているがな」

「なんでクラスメイトを知り合いの家に呼ぶのよ……」

「実家は必要な物しかないから、ここより少し小さい」

「少しなのね……」


 そうちょっとしたつっこみを入れたとき、先ほどから近くにいたはずの残念メイドさんが、紅茶を私と西条の前に出した。


「どうぞ〜」

「え、いつ淹れたの……?」


 紅茶は湯気がたち、とてもいい香りを放っている。メイドさんはさっき持っていなかった銀のお盆を、胸に抱くようにかかえている。この部屋には湯沸かし器等は見当たらないし、銀のお盆もない。


「メイドですからぁ」

「メイドだから全てできるってわけじゃないと思うんだけど……」

「カンナはドジらなければ優秀なメイドだからな。頭に木片をつけていても、メイド長だ」

「ふえ? ……あらぁ、さっき床に穴開けちゃったときに付いたのでしょうか……」


 こんなのがメイド長で大丈夫なのか、西条の知り合い……。

カンナちゃんが出ると、常にギャグな空間になる気がスル。

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