第11話
スポーツ描写ってやっぱり難しいですね。
次書くことはないかな…。
感想によるかも。
試合時間残り2分。またしてもボールがゴールリングを音もたてずに通り抜ける。
「っちぃ、手も足も出ねぇ!」
「はあ……はあ……、西条のヤツ、汗1つかいてないっす……」
「バケモンかよ……ふざけんじゃねぇぞ!」
息の上がったバスケ部2人が悔しそうに呟く。再度、攻めようとパスを回しながらコートを上がる。しかし、気づいたらボールを西条に奪われている。見ているこちらも何が起こっているのかわからない早業だ。
「な、くそっ、沙原ぁ!」
「またっす!? かずやん!」
「わかった!」
「俺も!」
再びゴールを決めようとコートを駆け上がってくる西条に対して、滝のような汗を流した和哉くんと陸上部の男子が進路を阻む。しかし西条の表情に変化はなく、薄い笑みが浮かんでいる。
刹那、西条の動きがぶれる。和哉くんと男子が困惑の表情を浮かべる。そして西条は何もなかったかのように、彼らを回避して進んでいく。
「またかよ!?」
「催眠術か何かなのか……?」
2人とも、目の前にいるはずの西条に反応できない。その光景は、はたから見ても異常だった。西条が妙な動きをした瞬間、彼を止めようとしていた人は困惑した様子で、彼を素通りさせてしまう。
「うぉおおお! 決めさせねぇ!」
もう1人の陸上部男子が、西条が先ほどからスリーポイントシュートをしている地点に先回りする。しかし、それは悪手だった。
「っ、バカ! 前に出るな!」
「やべ!?」
ディフェンスである男子の1人が前に出たのを見た瞬間、西条は方向転換し誰もいない場所へ。そしてそこからシュートを放った。またもや西条側の点数が3点上がる。0対72。試合時間はあと1分。それを確認した和哉くんは、陸上部の男子に駆け寄っていった。
「西条君が絶対に、あそこからシュートを決めるわけじゃないんだ。彼自身に気を付けて」
「す、すまねぇ、沙原」
「失敗したことは気にしないで。気にしてコンディションが下がる方が問題だから。それと隼人、俺が前に出るから下がってくれるかい?」
「はぁ……はぁ……、分かったっす……」
「ああ、後ろで息を整えながら、西条が上がってくるのを気にしててくれ」
和哉くんがミスした男子にアドバイスをした後、彼に失敗を気にしないように言い、息も絶え絶えで肩を上下させている伊東を後ろに下がらせる。
「沙原。俺たち2人でできる限り西条を抑えてる。その隙にシュートを頼む。体育の授業だからそうそうファールはとられないはずだ」
斎藤が陸上部の1人との作戦を和哉くんに告げる。和哉くんのプレーに頼りきった作戦だが、それ以上の良案は浮かばなそうだ。少し考えた後、和哉くんはその作戦を承諾した。
コートをボールを突きながら上がっていく斎藤。そこへ西条が突っ込むかのように迫ってくる。即座に斎藤は和哉くんへボールをパスする。
「頼んだぞ沙原ぁ!」
「こっちは任せろ!」
斎藤と陸上部の2人が西条を囲むように、周りに立つ。ボールを受け取った和哉くんはコートを一気に駆け上がる。途中、慌てた文化&帰宅部の男子たちが和哉くんを止めようとするが、そこはさすがバスケ部エース、集団で固まって迫ってくる男たち4人をうまくあしらい、独壇場へ。レイアップシュートを決めようと、跳び上がってボールを持った手をゴールへ近づける。体育館の温度が上昇していくように、湧き上がってくる。
しかしそこへ黒い影が迫る。
「っ、西条君!?」
あっさりと斎藤たちの包囲を破った西条が、和哉くんの放つボールを奪い去ろうと手を伸ばしていた。試合時間残り30秒。体育館全体に、緊張が走る。時間が引き伸ばされたかのように、和哉くんたちの動きがゆっくりに見える。
「残念だったな」
和哉くんのシュートは決まらなかった。西条が一瞬で目の前に現れて、驚いた和哉くんがボールをリングに当ててしまったのだ。西条がリバウンドをとってコートを上がる姿を見て、全体の空気が弛緩し、またかという言葉が聞こえてきた。しかし、
「まだだ!」
諦めムードになる空気を吹き飛ばすように、和哉くんが叫ぶ。走る。今まで見たこともないような速さで。試合時間が残り10秒を切った。和哉くんは西条を必死に追いかける。
スリーポイントのラインに立った西条。未だコート上を走る和哉くん。彼らの距離は、短いようで、あまりにも大きかった。
それでも諦めない和哉くんに、私も声をあげた。
「頑張れ! 和哉くん!!」
一瞬、西条の動きが固まった。すぐさまシュートのフォームに移るが、和哉くんはその一瞬を好機と、西条に手をかける。だが、西条はそれを避けながら、シュートを放った。今まで百発百中である、西条のシュート。観戦するクラスメートは、やっぱりだめかと諦める。先ほどまでと同じコースで飛んでいくボール。タイマーがビーッ、と時間の終わりを告げた。
ボールは……
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放課後の帰り道、私は用事があり、和哉くんは黒岩先生から激しい運動をしたから今日は休め、と言われて、一緒に並んで歩いていた。バカ2人も同じく黒岩先生に部活参加禁止を言い渡されたそうだ。
「いやー、惨敗だったね。ごめんね、香織。期待裏切っちゃって」
「ううん、裏切ってなんかないよ」
謝る和哉くんに私は笑って否定する。
「だって和哉くん。最後に西条に勝ったでしょ?」
そう、西条が放った最後のシュートは、それまでと同じ軌道を描きつつも、ゴールから少し外れて、決まらなかったのだ。ボールがゴール下に落ち、試合終了のホイッスルが響く中、本当の意味で無表情となった西条が非常に印象に残った。まあすぐに、いつもよりちょっと深めに笑っていたのだが。ちなみに、西条のシュートが決まらなかったのを見て、超常現象が起こったかのようにクラス中が騒いでいた。
「あはは、そう言ってくれると嬉しいよ。試合に負けて、勝負に勝ったってところかな」
「うんっ。さすが私の恋人だね! ありがとう、和哉くん」
傾きかけてきた日の中、私は和哉くんと満ち足りた気持ちで、途中別れるまで歩いた。
香織ちゃんがヤンデレしてません。
作者も驚きです。
あ、あと、あらすじでも書いてますが、感想で今後の展開の予想を大募集しています!
是非是非、送ってください!
作者がニヤニヤ、ドキドキします。