敵地へ
「はー、しんどい。もうすぐ、はー、体力が切れる。」
今、涼と鈴は走っている。
「これも、はっ、トレーニングと、はっ、思えば、
はっ、頑張れる。」
鈴は一つに束ねた長い髪を揺らしながら並走。
「そんなこと言って、はー、疲れたら言えよ。」
それに頷いた鈴は前を向いた。
「こんなしんどい思いもあいつのせいだな。」
時を10分巻き戻し、校門前
「では、行きましょうか。」
そう言ってストレッチを始める鏡。
「まさか、歩いて行くのか?車とかは?」
「いいえ、走ります。免許証は一応持ってはいますが、
走ったほうが速いので。
では、集合地点はココです。頑張ってください。」
そう言いながら地図を渡された。
「一緒に行かないのかよ。」
「私のスピードに追いつけるのであれば、
一緒に行ってもいいんですが?」
やれやれみたいに首を振りながらこちらを見る。
イラッとくる態度だ。
「やってやろうじゃねぇか。」
その言葉に少しわらいながら、
「行きましょうか。」
その瞬間、鏡が消えた。道の先に小さくいるのが見える。
「なあ、鈴。あれは走ってるのか?
瞬間移動じゃないのか?」
「速すぎて見えなかったわ。私達も走りましょう。」
「あいつは化物にしか見えないな。」
それから走り続けてそして今に至る。
「もうすぐ、はー、ゴールだ。」
角を曲がると鏡が物陰に隠れて廃工場の様子を
窺っているのが見えた。
俺たちがその物陰にはいると鏡がこちらを向いて
「お疲れ様です。あの廃工場が敵の基地なので
休憩したら行きましょうか。」
涼は廃工場を見る。
「なんか見張りが多くないか?」
「ええ、中にも人が結構います。学園襲撃の第二陣
なのか、他にも何かするのか。」
その時、銃声がなった。
「何がっ。」
横で鈴がゆっくりと崩れ落ちる。
何がなんでも見てしまう、鈴のお腹あたりから血が
出てるのだ。涼は鈴を抱きとめ、鏡に助けを求める。
「鏡、鈴が、鈴が」
鏡はずっと前を向いている。その方向に顔を向けると
「ははははははははははははははははひーやばい、
お前の顔、傑作だなぁ!やっぱ女撃つと男の反応が
面白いよなぁー?」
そこにいた男はずっと笑っている。
それとは反対に鏡の顔が無表情になる。
「か、鏡?」
鏡が鈴に近づきお腹あたりに手を当てる。
「応急処置はしときました、学園に帰りなさい。」
有無を言わせない口調だ。
「ああ、帰すわけぶげぁ!」
鏡が男の口を塞ぐように持ち、そのまま廃工場に
投げつける。男が当たった衝撃で廃工場の鉄製の
スライドドアがひしゃげ壊れ開く。
それでも勢いは止まらず奥まで飛んだ。
「お前は、お前らは絶対に殺す。」
そんな鏡の怒りの咆哮が響いた。