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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

クラス転移で霊力無双!!

作者: えつ

見切り発車で参ります。

反応見てテコ入れした後に連載するかもしれません。

連載の場合、作品に大きな変化があるかもしれませんが悪しからず。

──式は霊気によってもたらされ

──式は理をもとに事象を得る

──式は事象を増大する

──式は肉に干渉する

──式は魂に干渉し得ない

──魂は肉の世界の裏に存在する


以上、六つの定義を基に式術を体現する。

            〜山川 剛〜


〜〜〜〜〜〜〜〜

 カイトは暗闇の中全身の力が拔ける様な感覚と浮遊感、そして体内に無理矢理何かが押し込められる様な不快感を全身で感じていた。

 体の中に……いや、魂に何かが干渉してきているのだ、そうカイトは確信した。

 カイトは無詠唱で不完全な結界を鬼の印を結びながら必死に維持する。それでも自らに流れる魂の干渉は抑えきれない。霊気が尽きかけ、カイトの意識が朦朧としてきた時だった。

 暗黒に支配された世界に一筋の光が差し込み世界が一変する。


「よくぞ参られた。勇者たちよ──。」

「ファァ?!」

ハッキリとしない意識の中、カイトは非現実的な状況に間抜けな叫び声を上げることしかできなかった。

〜〜〜〜〜〜〜〜


 4月……それは学年が一つ持ち上がり、新しいクラスに心を踊らせる季節。新入生の声が階下から聞こえ、等の2年4組の生徒たちも各々の友人同士と談笑していた。

 そんな中で、カイトは傍目では机に突っ伏しており、独り言をまるで誰かと話している様な声量で話していた。クラスメイトは少し気味悪がりながらも、気にしないようにしているふうだった。


「はぁ、眠い、ダルい、寝たい……」

当のカイトは、机に上半身を預けたまま気だるそうに言った。ここ暫く、まともに睡眠を取っていない事が原因である。

 するとカイトの耳元から、若干の寒気と共に可愛らしい少女の声が聞こえた。


『カイト……また寝不足?どーせ式術の研究でしょ?たまにはしっかり寝なさいよ!私でも睡眠は取るわよ!』

「ん?ああ、奈々子か……おはよー」

『お、おはよう……って、話聞いてたぁ?』


 カイトは少女の言葉を聞き流し、寝ぼけ眼のまま顔を上げる。

 するとそこには明らかにカイトの高校の制服ではない、セーラー服を着た中学生くらいの少女がいた。しかも、少女は体が半透明に透けており宙に浮いていたのだ。


──そう、彼女は幽霊なのだ。


 しかし、カイトには驚く様子もなく、寧ろ親しい間柄の様な受け答えをする。奈々子もカイトと話せる事が楽しいのかカイトの周りをグルグルと飛び回りながら笑顔で談笑する。それが原因でクラスメイトから気味悪がられている事にカイトと奈々子は気が付かないが……


 少年……もとい、山川 海斗は生まれつき霊能者(シャーマン)である母の家系に似て視えざる者……“幽霊”や“魂魄”が視えていた。

 その上、霊力が強すぎる為か母に期待され、よく霊能力者の学会に連れ回されていたのだ。件の寝不足もその研究のプレゼンづくりの為だったのだ。


 そんなこんなで11年と数ヶ月、カイトは霊力を鍛錬し続けていた為、奈々子程度の幽霊には動じるどころか、仲良く出来ているのである。


 閑話休題、カイトはまるで人と話すように開けっぴろげに奈々子と話していると近くに3人の生徒が詰め寄り、厳つい顔持ちでカイトに絡んでくる。


「おい、カイト。テメェ誰と話してんだよ!いい加減キメェからそのお口チャックしてお家に帰ってくれませんかね?」

「ギャハハ!そんなんじゃ甘いぜぇ。ちょっくら一発殴らないと、この子の妄想友達癖も治らないんじゃ無いか?」

「おっと、それいいねぇ。って……何冷静こいてんだよっ!!」


 どういう訳か、一年の時からこの三人組…… 増田 研、水野 修司、中山 康介たちは執拗にカイトに絡むのだ。カイトはまたか、と小さく呟き、溜息をつきながら焦りや恐怖など微塵も無い表情で彼らを見上げていた。

 その表情が増田には何か小馬鹿にされている様に感じたのだ。

──気に食わない。

増田はそう感じていた。

 一年から同じクラスだったカイト。いつもボソボソ独り言を話して社交的じゃない、絶好の獲物の……はずだった。


 それは一年の夏の事だった。カイトを初めて暴力で黙らせようとした時だった。いつもの三人組でカイトを呼び出して自分の立場ってもんをわからせようとした。

 だけど、それは失敗だった。カイトは、尽く俺たちの攻撃をヒラリヒラリとまるで次の手が読めている様に避ける。その上、疲弊した増田たちを気遣ってきたのだ!

 その時、増田は酷い怒りと憎悪に襲われた。いつも弱いものを虐げ、強さに酔っていた増田のプライドを土足で踏みにじった。

 例を上げればキリがない。成績も増田にはそれなりの自負はあったのだがカイトから引ったくった回答は全て自分より圧倒的に高い。

……その上


「やーやー、皆さんおっはよ~!!」

 一人の女子生徒が教室に飛び込んできた。腰まで届く烏の濡羽色、そんな例えが相応しい艷やかな髪に若干垂れた大きな瞳は優しげで美しい。スッと通った小ぶりな鼻筋に薄い唇が完璧な配列で並んでいた。


 彼女は花咲 舞、この学校で男女問わず人気を誇り、その明るい性格と美貌からこの学校の天使とまで言われていた。

 そんな、舞がカイトに気がつくやいなやカイトの元まで走って来るではないか。

「あれあれ〜〜?何で、増田くんカイトの事絡んでるの?ダメだよそんなの」


 クラスの空気が凍りついた。あの天使と詠われている舞がカイトを庇ったのだ。その上、名前の呼び捨てで、だ。クラス中の男子の凍てつく視線がカイトに突き刺さり、カイトは困った表情で苦笑いをする。


「そ、そんなんじゃねぇよ花咲さん。俺は独り言がうるせぇって注意しただけだ!だろ?山川くん」

「本当?」

「う、うん」

 舞の疑わしそうな目に若干戸惑いながらもカイトは返事を返し、増田達は悔しそうな面持ちで別の場所へすごすごと逃げて行った。

 身分相応で無い女子、それも増田には到底手の届かない高嶺の花に仲良くしてもらっている。それもカイトに対する嫌悪の一つだった。

 そんな背景があったために増田はカイトを異常なまでに敵視していた。

 

 ともあれ、増田が居なくなったことでカイトは少し肩の力を抜きホッとした顔になる。

すると、また別の三人がカイトに話しかける。


「あらあら、カイト君おはよう。毎日大変ね」

「山川くん、君のその癖そろそろ治らないのかい?舞も毎度毎度、君を庇う訳にはいかないんだ」

「全くだ。こんなことを言うのも何回目だと言うんだ。去年より酷くなってやがるぜ。」


 唯一カイトに挨拶をしたのが立川 時雨。舞とは幼なじみで親友みたいな関係だ。そして身長が173センチと高く、切れ長の凛とした目と短く切り揃えられた髪は可愛いと言うよりかはカッコいいそう思えるような女性だ。

 剣道部の期待の新星と言われてるみたいで、面倒見が良くて、姉御気質のせいか女子からよく告白されている。


 次にカイトにまるで自分が絶対的に正しいのだと言うような臭い発言をしたイケメンが星野 (ひじり)彼もどうやら幼なじみの様な関係にカイトには見えた。

 彼のその端整な顔立ちとカリスマ性が女子を惹きつけるらしくファンクラブ出来る程だった。頭脳明晰、運動神経抜群、その上サッカー部主将で去年はスタメン入りしてすぐにチームを全国大会に導いた男だ。これで靡かない女はいねぇ!そんなの男だ。

 

 最後に呆れた様な言葉を言ったのは松平 健二、聖とは小学校からの付き合いで親友どうしである。

 とあるサンバの曲を歌った俳優を彷彿とさせる名前だが、見上げるほどに高い身長に、制服の上からでもわかる筋肉は流石としか言えない。

 熱血漢で努力、友情、根性が好きな彼はカイトの様な悪いところを直さない所が気に食わないらしく、聖と自分の忠告を聞いてヘラヘラと言い訳をするカイトを鼻で笑い無視の態勢に入った。


「舞も人が良すぎるんだ。こんな男と話していないで皆で昨日の事について話し合わないかい?」

『こんなとは何よ!!カイトだって好きでこの体質じゃ無いのよ!』

 聖の言葉に奈々子は怒りを見せるが幽霊のため声はカイトの元にしか届かない。カイトもそろそろ開放してくれないかな、と困った顔をしていた。


「何で、聖くんが私に指図するの?私は今、カイトと話したいんだけど……」


 舞の言葉にざわつく教室。男子たちは歯を食いしばりカイトを睨みつけ、聖と健二は驚きに目を見開いていた。増田たち三人組に至っては昼休み、カイトに一矢報いる作戦を検討している。


「ま、舞は優しいな〜山川くんのためにそこまで言うなんて」


 取り繕う様に聖はそう言い、カイトは射殺すような男子の視線に逃げるように窓の外を見る。あぁ、青空が綺麗だ。カイトはすぐ側でギャースカ話している聖、舞、そして二人の周りを奈々子も一緒にギャーギャー騒いでいた。

(いや、お前視えて無いから……)

さっき注意されたカイトは内心ツッコミをする事に留めていた。


「悪いわねカイト君。あの二人悪気は無いのよ」

彼らの心情をよく察ししている時雨がカイトに謝罪をする。

「それは解っているが、そろそろあの二人を回収してくれないかな?」


 時雨はそれもそうね、というと聖と舞の耳を引っ張り上げ引きずるようにして移動する。二人は揃って悲鳴を上げる。カイトはその姿を見て若干微笑んだ後にふと思い出し声を上げた。


「花咲さん、さっきは助かったよ。ありがとう」

すると、舞は痛みが吹き飛んだ様な満面の笑顔で大きく返事をしたのだった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜

 時は少し流れ、朝のショートホームが始まる。担任の川端 梓先生が出席を取る。カイトの番まで後、数人くらいだった時だ──


 教室の床と天井に金色の幾何学模様をした紋章が現れる。眩い光はカイトや生徒たちの視界を覆い尽くす。梓先生はとっさに「皆!早く外に!!」と叫んだ瞬間だった。


 紋章はさらにその光を激しくさせ、教室を金色に塗りつぶす。叫び声や驚きの声の中でカイトは咄嗟に鬼の印を結び大声で叫んだ。


『鬼術第六十三式 籠城!!』


 数十秒と続いた黄金の光は少しづつ静かになり、教室には机やイスなどの備品や道具類の一切を除くすべての人が消え失せていた。


 後にこの事件はとある高校の不可解な失踪事件や神隠し事件として世界中で報道される事になるがこれはまた別の話である。

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