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そして・・・

過去作品なので表現の古さはご容赦ください

 ジュノウは、真っ白な上下のスーツに赤いネクタイという目立つ姿で港の倉庫のひとつの中にいた。

「白虎。朱雀。青龍。玄武。四人とも位置についたな」

 ジュノウはインカムを通じて四人の部下に連絡を取る。

「後はお客さんが来るのを待つだけか」

 配置完了の合図を示すコールが入ると、ジュノウは、純度99,987%という末端でグラム千五百は下らないアイドル・エンジェル十キロがはいったアタッシュケースをながめる。

「赤い星。火を吹く虎」

 ふいにジュノウのまえで小さな声が聞こえた。

「青い星。邪悪な天使」

 ジュノウは、合言葉を叫ぶ。

「あなたが売人ですか。若いですね」

 ジュノウよりわずかに年上といった感じの声が聞こえてきた。

「純度コンマ987の極上物だ。俺みたいなやつが運ぶとは思わないだろうから裏をかいたのさ」

 ジュノウはふてぶてしい口調で、肩をすくめる。

「ものを見せて貰おうか」

 闇の中から三人の男たちが姿を表した。

「ファイヤーワールド・メッセンジャー。グエン。ウーンド。ドラーゴこりゃ大物だ」

 ジュノウはわざとらしく大声で叫ぶ。

「俺の名はジュノウ・ラージェリ」

 ジュノウはアタッシュケースのふたを開く。

「色はエンジェルです」

 隻眼の男ドラーゴは、アタッシュケースからエメラルドグリーンの液体が入ったアンプルを取り出してグレンに見せる。

「どうやったら信じてもらえる?」

「まあ待て。ものには強烈な媚薬効果があるからな。証明するためのとびきりの晩餐を用意している」

 グエンは不敵に笑う。

「遅くなってすいません。No.2」

 闇の中からにじみ出てくるようにピエロの仮面の道化師マースクが現れ、抱えていたものを降ろす。

「エンジェルの今夜の晩餐が到着したようだ」

「晩餐?なんですか?それ。げっ。麗華先輩!」

 のぞきこんだジュノウは、自分が最悪のセリフをいったことに気が付いた。

「先輩?州警察の警官は初等教育からのたたき上げのエリート。ということは貴様刑事か」

 マースクの言葉で、4人は素早く散解する。

「ちっ!しくった」

 ジュノウはアタッシュケースを投げつけ素早く後に飛びずさる。ワンテンポ遅れてジュノウのいたところに4発の穴があいた。

「動くなグエン。俺の仲間がお前を狙っているぞ!」

 物影に隠れたジュノウは、懐からグランモール88と呼ばれる拳銃を取り出してかまえる。

「着弾パターンからいって、建物の四隅に一人づつライフルによる狙撃だな」

 ゆっくりと建物の四隅を見ながらグレンは指摘する。

「そうだ。グエン=キ=バーグ!!貴様をSDS法第一条「犯罪組織」に基づき、四虎、朱虎のNo2として逮捕する。おとなしく武器を捨てろ」

 ジュノウが叫ぶと、グレンは大きな声で笑い始めた。

「そうか。お前が我々をコケにしてきてくれた餓狼のメンバーか。私を罠にかけたということは褒めておこう。だが、これが誤算だったな」

 グレンは、足元にたおれている麗華を指差す。

「ジュノウ君。取り引きをしよう。君の部下をこのまま引かせれば、君の大切な先輩は解放する。決着はこれで決めようではないか」

 グエンはもっていた銃を振る。

「う、判った。すぐ引かせる。青龍!先輩連れて出ていけ」

 グエンの提案をジュノウは即座に受入れた。

「他の三人は、まだお前を狙っている」

 闇から姿を現した青龍は麗華を抱きかかえる。

「御武運を祈ります」

 青龍はゆっくりと出口にむかう。

「言った通りにしたぞ」

 ジュノウはグエンをにらみつける。

「ジュノウ君。君は真に正義の味方だよ」

 どういう意味だ!と叫ぶよりも早く、グエンは銃でジュノウの右肩を射ちぬいた。

「貴様・・・卑怯だぞ」

 射たれた肩を押えながらジュノウはうめく。

「卑怯?だからなんだというのかね?私は君の言うところの犯罪者だよ。犯罪者が警官との約束を守るとでも思ったのかね?」

 グエンは、冷ややかな微笑を浮かべながら、ジュノウの腹部に二発射ち込む。ジュノウの着ている白のスーツが、見る間にどす黒い血の色に染まっていった。

「残念だったな」

 グエンは、闇のなかに姿を消す。

「俺としたことが・・」

 ジュノウは、腹の傷を押えながら外にでる。いま彼の生命をつなぎとめているのは、気力だけだった。

「た・隊長」

「わりぃ。しくじった」

 玄武はあわててジュノウに肩をかす。

「おい朱雀。お前の服・・かせ。このままじゃ先輩にバレちまう・・・」

「何を言っているんですか!早く病院に行かなければ」

 白虎は悲痛な面持ちでジュノウの傷に止血を施す。

「き・気休めはいい。自分の体が、どれくらいもつのか判る。さ・最後のわがままぐらい聞けよ」

 気迫に押された朱雀は上着を脱いでジュノウに渡す。

「いっちょ気合を入れるか」

 朱雀の上着を着込むと、ジュノウの顔は普段とまったく変らないものになった。

「いいぞ。おこしてくれ」

 青龍は、気付け薬を取りだし麗華に嗅がせる。

「こ、ここどこ。たしか後から変なものを嗅がされてって・・・私・・・ええ?ジュノウ?なぜあなたがここにいるの?」

 麗華は、ボーッとした瞳と、たどだとしい口調で尋ねる。

「なぜここにじゃないですよ先輩。波止場の倉庫街に呼出され、来てみれば先輩は道路の上で大の字になって寝ている。何があったのか知りませんが、はっきりいってハジですよ」

 ジュノウは、大げさに肩をすくめる。

「は・ハジですって!何も知らないくせに!」

 顔を真っ赤にしながら麗華は、ジュノウの腹に肘をいれる。

「い゛」

 言葉にならない苦悶の表情をジュノウは浮かべる。

「やーだ。なにおおげさな顔してんのよ」

 うにうにといった感じで麗華はジュノウの腹をつつく。

「とにかくもどりましょう麗華先輩。車をまわしてくれ」

「あ、はい」

 慌てて白虎は姿を消す。五分もたたずにジュノウたちのところに一台のワゴン車がとまった。

「ささ。姫様どうぞ」

 ジュノウはドアを開けるとおおげさに前かがみになる。

「ありがと」

 麗華は優雅に一礼して後部座席に乗込むと、つづいてジュノウと玄武と朱雀が、青竜は助手席に座わる。

「どうしたのジュノウ?顔色は優れないし、脂汗なんか流してるけど。大丈夫?気分悪いなら寝てていいのよ」

 あまりにも青い顔に脂汗をながし、荒い息をしはじめたジュノウをみかねて、心配そうに麗華はいった。

「ずいぶん酒を飲んでましたし、アルコール抜かずに、走り・・ましたからね。悪酔いしたんでしょ・・・お言葉に甘えて、すこし寝かせても・もらいますか。ついたら・・・起こして、くださいよ。きっと・・・・ですよ。麗華せ・んぱい・・・・」

 ジュノウの言葉はだんだんか細くなり、まぶたもゆっくり閉じられた。荒々しかった呼吸も静まり、表情も穏やかなものになる。

「へぇー。ジュノウの寝顔ってかわいいのね。はじめてみちゃった」

 麗華は、いままでジュノウには見せたことのない、暖かい微笑みを浮かべる。まるで愛しい人をみつめるかのように。

「ううっ」

 朱雀たちは夜の闇を幸いにと声を殺して泣いた。麗華の視線はいまだジュノウの顔に注がれており、彼らの涙には気付いてはいなかった。

この話はこれで完結です

次の話はあるのですが蛇足感もあるのでとりあえず止め

ありがとうございました

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