ナイト
婦警は変えた方がいいのかなぁ
「さらばだ諸君」
真っ赤に逆立った髪をした男が叫ぶのと同時に、割れんばかりの喚声がドームを包み込む。男は、大量のドライアイスに包まれて姿を消した。
「グ・エ・ン!グ・エ・ン!グ・エ・ン!」
ドームにいる九割の人間が彼の名を叫び、残る一割の人間は失神した。
四年前流星のようにロック界に出現した新星ファイヤーワールドメッセンジャー(FWM)サラマンダー初の三十万人オールナイトコンサートは、大盛況のうちに幕を閉じた。
前日の午後七時から今日の午後十時までの二十七時間中、失神者は五千五百二十三人。しかし、負傷者が一人もでなかったのは奇跡であった。
「ウーンド。用意できているな」
グエンは、ダークグレーのマントをつけながら、頬に傷のある男に問いかける。
「999なら10キロ買い付けるだけの現金を用意しました」
「でも、本当に999でしょうか?」
隻眼の男は不審そうに言う。
「あちらは我々が四虎のナンバーだというのを知っていますから、大丈夫だと」
道化師の仮面をつけたマースクが、ぼそりという。
「マースク。今回の生け贄は、今日この俺に説教した、あのはねっかえりの婦警がいいな」
「判りました。手筈を整えましょう」
マースクは、靜かにうなずいた。
ありがとうございました