スガポン03 すがぽん、引きこもる!
ガッ
「あががががが」
毎度お馴染みのモーニングショットを頂き、一しきり転がり終えたら朝食である。
昨日は結局ウニが食えなくて酒も飲めないのでヤシの実がまた落ちてくるまでふて寝してしまった。
え?ヤシの実食った後だって?もちろんふて寝だよ。
「いただきます」
さてはて、今日は一体全体何をしようかなと思案する。
シャクシャクとナタデココをやっつけつつ、では、無人島に持って行けるなら何を持っていくか。持っていけるものは一つではなく二つとする。として考えを進めていく。ナイフを持って行ってもさびてはだめだろうだの、マッチをもっていってもしけてしまうなだの、水や食料はすぐに食べてしまうであろうと考えてく内に、二つに割れたヤシの実を見れば、
「二つならおっぱいか」
と、口にだして一人でニヤニヤして、ほんとうにダメだなとひどく後悔した。
なにがおっぱいだよ、そんなもんはねぇ、馬にでも食わせとけって言うんだよ、と、悔し紛れに口にしするも、当面やることが無いのは事実である。
ふと後ろを見やってみれば、凛々しくそびえるヤシの木が。
たもとに殻と、結構大きなヤシの葉が。
これを使って何か面白いことができねぇかなあと思ったあたりでヤシの実が食い終わる。
「ごちそうさまでした」
ふむ、改めてみてみるとこのヤシの葉は普通のそれよりも大分大きいようだ。
茎の部分も木の様に堅く、葉の部分の繊維もしっかりしている。
ヤシの葉1枚で大きさが4m近くある。葉をむしり、よじよじと綱を作ったり、茎を折ったり、ウニの大きな棘を使ってキリを作ったり、はたまたそれらで続くものをつくって2日が過ぎた。
やはりやることがあると人間時を忘れるな。
手前味噌な出来ではあるが自分としてはよくやった方だなと思えるものが出来た。
先ずは、編んだ綱と茎で作った弓型火付け棒だ。これと砂で作ったカマドにヤシの実のナベ。取っ手も付いている。チャコールロープで作ってあるので燃えるかも知れないが。
これで薪(ヤシの葉)がある間は煮炊きが出来るようになったと思う。
次にこれがあっと驚く今回の目玉商品だな。
「じゃじゃーん、これ、ヤシの実ブラと葉っぱふんどし」
ヤシの殻がとても固くて穴をあけるのに一か所で30分ぐらいかかった。こんなものでもいざ出来上がると愛着がわくのが不思議である。
ふむ、・・・どうせ誰も見ていないのでつけてみようと思う。一応サイズは取りながらやったので問題なく着用出来た。
いざ出陣である。
海の深さ1mぐらいのところでざぶざぶと適当に泳ぐ。
ここにきて動くといえば海水浴ぐらいしかないので、少し泳ぎも上達してきたようにも思える。
一しきり泳いでぷかぷかと浮かんでいると、近くに漂う小瓶を発見した。
何やら液体が半分ぐらい入っているようだ。
瓶が黒くて中身の色は分からないが、コルクの栓がしてあるところを見るともしやこれはと察するところである。
思わぬ戦利品を携え四畳半に戻り、いそいそと元の服に着替える。
ビキニのつけ具合は悪くなかったのだが、如何せんヤシの繊維は堅すぎて、つけたところが全部擦り切れていた。
泳いでいる最中は気が付かなかったが、現在絶賛痛み奔っている。
さてさて、この瓶は何なのか、チャプチャプといつまで振っていてもらちが明かないので栓を開けてみる。
「あ、これ酒じゃん」
中からは芳醇なウィスキーの香りがした。久方ぶりの酒の香りに当てられて、ついつい匂いを嗅ぐだけで1時間程経ってしまった。
「うーん、これはバーボンかなー、バーボンっぽいなぁ」
如何せん海を漂っていたので、若干潮臭いのである。
それが呑むのをためらわせていたのだが、とうとう我慢の子をやめて、くいっと一口煽ってみる。
「ぶっ、しょっっっっっぱ!」
やっぱりなぁー。
塩水入っちゃうよなぁー。
まぁ、想像はしてたけどなー・・・。
等と考えつつも、それでも久しぶりのアルコールに脳がやられ、しょっぱ過ぎる酒をちまりちまりと舐めるのであった。
ザブーン、ザブーン。
夢の中の様であった、自分はクラゲで、ただたゆたう事に任せて、何かをしなければいけないような、それでいてただ浮いてるだけで満足しているような気分で浮いていると、
目の前の水面でロシア人が二人相撲を取ろうとしていた。
ああ、これは夢だな。前も見たが水面はさすがにどうかと思うが、試合結果は腰砕けで終わった。
それに怒ったロシア人がこちらに向き直り、ハッケヨーイノコッタァーと水面すり足で近づいてくる、えっ、俺クラゲだし相撲とかとれねぇよ?
ガッ
「あががががががが」
久しぶりの酒にすっかり酔い、寝入ってしまったようだった、さらに悪い酒を飲んだおかげか頭痛もいたやのたまあられ、いやこれはヤシか、しかしこれはいつもより酷い様な気がする。
ついでに拭っても拭っても顔やら体やらから汗が止まらず拭いきれない。
これはとうとう三途の川の渡り時かと寝ぼけ眼を開いてみれば、世界は一面豪雨であった。
バケツをひっくり返したようなとはこのような状況を言うのだろうか。
目を開けているのも辛いが、取りあえず折角作ったヤシのグッズが全部海に流れてしまった。
かまどももう無い。
泣きっ面を蜂が刺すように痛む頭を抱えつつ、これを無くせば六段目と大事にヤシの実抱えてどこ行こう。
狭いこの島じゃ行く先も、せいぜい木の陰隠れて少しの雨宿り、立って一歩あるいてみれば、したたか小指を打ち付けた。
「いたたたたたたた」
なんでこうも何もねえ島で怪我ばっかりするのかねぇと、嘆きながらに足元見れば、雨で流れて地面に戸板が見て取れる。
「は?え?ドア?」
わけもわからず開いてみると、戸板の中は一坪程度の部屋になっていた、ここにいたんじゃ夕飯にもありつけぬと一足飛びに駆け込んだ。
「ふぇー、いやー、マジでえらい目に合った。やはり拾い食いならぬ、拾い飲みは一考の余地があるな。」
等といいつつ部屋を見やってみると、中は薄ぼんやりと明かりがあり、降りたところが土間になり、ついで畳が一枚座布団一枚、バスタオルの様な布が1枚置いてあった。
「おっとこれは用意がいいんじゃないの」
濡れ鼠はたまらんと服を脱ぎ、体をふく、タオルの下にも白い布があり、広げてみればふんどしであった。
着るものも他にないのでふんどしをつけ、一心地つける。ともあれ夕餉にありつこうといった次第であった。やはりふんどしは木綿に限る。
「頂きます、と、ふーんむ、これは一体全体どうしたことかねぇ、取りあえずは雨は入ってこねぇ、地下だが海水も漏れねぇみてぇだな。これはあれか?○イレーツオブ何チャラにあったようなワインセラーの様なものなのか?」
ナタデココをシャクシャクやりながら、よくよく周りを調べてみる。
壁は茶色い石でできており、清潔感はあったがそれ以上は無く、ワインも無かった。
うすぼんやりと光るはヤシの実で、やはりこの木は不思議な木だなぁと思案する。
「・・・・ふむ。何もない、まぁ、一番気になるのはこれだわな」
座布団正座で真ん前に、小さな自動販売機。