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すがぽん珍道中  作者: サビヒメ
13/16

スガポン13 スガポン、初めてのチュウ

最近涼しくなってきましたねー

「ねぇ、お酒呑も」


「ん?」


「お酒呑んで、私も呑む、お酒のも」


「え?酒?ある?」


「ある」


「え、いいのかい?」


「のんで、呑も」


「うん、おめぇがいいってんならなぁええ、でも今まで飲まずにいられたんだから、このまんまで」「別にいいじゃない」


「ええ、そうかい、おめぇがそういうなら、おおうおおう」


「ささ、どうぞ」


「んー、どうも、しばらくぶり、達者でござったか、なはは、なぁおい、俺、やめられんだけど、呑まなきゃ呑まないでいいんだけど」


「ううん、好きなだけのんで」


「だけどおめぇ、俺呑んでべろべろになっちゃうぜ?」


「いいの、べろべろになっちゃえ」


「・・・うん、・・・」


「どうしたの?」


「よそう。・・・・・また、夢になるといけねぇ。」


「まぁ、貧乏どん底でいきなり大金が入ればね、そりゃあ浮かれもしますが、

それが二人の話になれば相手自分の考えが出てきますわな。

そこでまぁ、うーん、女のしたたかさと言いますかね、男の諦めと言いますか、でも、蓋を開けてみれば一つになる。

不思議なもんでございますね。

俺にもこういった気の利いたっつうか、

まぁ、心のそこで相手を思える相手が出来ねぇかなぁなんて、思うけれど、まぁ、難しいかな。最近忙しいし、家内っていうならまず家だ。

なんたって未だ陸地を踏んでない。まず家から買わなきゃいけねぇからな。

芝浜でござんした」


すっと背筋を伸ばしてお辞儀をする。

観客からちらほらと拍手があがる。


ああ、そうだよ、これこれ、やっぱこれが欲しかったんだよ。

いつもいつもさ、ヤシの根っこに語り掛けていたんだけど、何も好き好んで一人落語してたわけじゃなかった、ヤシの木にお礼とか言ってたのも、ぜーんぶ、強がり。


まぁ、問題と言えば観客席の。

いろはにほへとちりぬとついた客席の、全部が病人ハンモックだった。


「いやー、シュー君は話がうまいね~」


「えへへ、ありがとうございます。特技と言えば今になっちゃこれぐらいしかないもんで」


寄り席一番手前に箱を3つ置いて、ちょこんと座る右端に赤エルフ先輩と二人の女が腕を組んでウンウンと首を振っていた。


髪はブロンズ目蒼に隻眼、やや伏目がちな垂れた犬耳がルーシー。


「う・・ん。とっても面白かった・・・ていうか悲しかった?」


その隣に座るのは髪も瞳も紫で、背中に小さな羽が生えている女がシンクといった。


「・・・もう、終わり・・・?」


「うん、ごめんな、一応これで終わりなんだ」


まぁ、続けろと言われても落ちを言った後じゃ難しい所だしな・・・。

一体どこで一席ぶったのかと言えば、今いる場所は一番下の一段上、5甲板の真ん中らへん。


余談ではあるが、この船には大砲を積んでない。

なので、本来大砲を摘んでる2~3甲板から5甲板まで居住用に使える。

がしかし、人ばかり積んでもしょうがないので、大体半分は倉庫になっている。

トップヘビーを回避するため1~4甲板までは軽いものしか積めないが、それでもパンや穀物、豆類や、香辛料からその他色々水気を嫌うものを保存できるのは計り知れないメリットだろう。


こまめに箱に詰めてあるのと艦内空調で、割と品物の状態もいい。

まぁ、流石に硬く焼しめたパンもかびてきたが、それでも芋や豆類は持ちがよく、最近はそれらを煮て食べている。


さて、そんな最下層の居住区となるここは、元々4分隊の持ち場だったのであるが、病人が増えてきた上、何やら向かい風を登ってくる船がある、と。

そもそも暗礁の無い航路として多用されてる以上、行きかう船は多いのだが、向かい風に向かって登っていく船は珍しい。


船員の多くが病床に伏してるとなれば少々不安になることもあるだろう。

俺たちの船は、海風潮に乗って、アズマから大陸沿いにぐーっと南に降りて、北セントガーデンから、南セントガーデン、そして大洋の中央やや南にあるグレードヘッド大陸へと、航行する予定だったのだが・・・。


アズマから出てすぐ嵐にあって舵機が故障し、ずるずるとグレードヘッド大陸の方へ流されている状態である。

このままいけばグレードヘッド大陸にはたどり着ける。

この船には物資が大量に積んであり、船員自体が飢える事はなさそうだが、ここに来て熱病で伏している者たちはおそらく大地を踏めないだろう。

その者たちを1か所にまとめ、看病をしろと言われたのだ。

だが如何せん一人で20人もの看病はとにかく大変だった。

正直看病と言っても、出来ることは多くは無い。

精々がトイレに行くのに付き添ったり、頭にタオルをのせ、寝る前に体をふいてやる。


最初は体をふくときに目のやり場に困ったのだが、4人を超えたあたりでじっとりと全身に汗を感じ、一人で20人拭き終った時には立っているのがやっとだった。

ひと段落したところで、この状況の危険度合いがうかがいしれた。


3割程度の患者は、パンやチーズをかじれるのだが、熱でうなされている残りの7割の者がろくに食べられないのだ。

こうして寝てても食べずにいれば、生きて帰れる保証はない。

なので、パンや豆を粥にして配り、さらに食べられない者には手ずから食べさせたりしたのだが、

寝る時間もろくに取れず2日でぶっ倒れた。


そこで見かねた偉大で至高な赤エルフ先輩が、配下を連れてやってきてくれたという所だ。


たかが一人と二人が増えたところでとはいうものの、甲板要員が明らかに足りてない今、増員を送ってくれただけで御の字なのである。

さて、人が増えたところで伏しているクルーに目をやる。

日に日に少しずつ容体は悪くなっていて、このまま航海を乗り切れるような気がしない。


さてどうしたものか。

持てる知識を漁ってうんうんうなった。

恐らくこれは、壊血病だ。言わずと知れた死の病。


となれば、ビタミン補給をせねばならぬ。


そこでどうにか補給するならどうするか、釣った魚の刺身でもいいが消化に悪いだとか、ライムもレモンも切れている等と、うんうんと素人ながらに考えた。

結局病人には粥か、今できる新鮮な野菜と言えばモヤシだな。早速もやしを生やしてみた。


お湯に浸してふやかして、水を抜いて上からサラサラとシャワーを掛ける。

育て~育て~と念じながら水やりをしたところ、不思議とすぐに芽をだして、半日程度で3cmほどまで伸びた。

もはや成長速度に突っ込むのは負けかなと、それにしてももやしにしてはだ早いかとは思ったものの、背に腹は代えられない。

麦をコトコト煮た粥に、軽く蒸したモヤシのペーストをまぜ、塩味をつけたカユを作った。

ようやくにして出来た栄養粥ではあったが、粥が出来た時点ですでに、粥も食べる元気もないものが出始めた。


さてどうしたものかと来たところで女衆である。


「・・・これは、シュー君が口移しで食べさせてあげるしか・・・」

「うーん、・・・お母さんも・・・病気の時・・・してた?」

「・・・スガーヤ、・・・みんなが死んじゃう・・・たぶん」


えっ、なにその、何も俺言ってないのにすでに俺が悪い状況これな!


「・・・・、いやいやいや、やっぱ俺がさ、やるより、女同士の方が絵面的にいいんじゃ・・・」


等とやんわりと断りを入れようとしたら、寝入ってたはずのクルーがもぞもぞと動き出して。


同性はいや・・・、後生だから・・・、スガヤ・・・頼む・・・等と、はいずりだしてきて、軽くゾンビパニック系帆船になりかけたので「わーかった分かったから!寝てろお前ら!病人なんだから!」


結局押されに押され、口移しをすることになった。


やってる最中に気づいたのだが、多分、赤エルフ先輩とかは、病気を移されたくないとか、そんな理由だろうな。

この高熱が壊血病だとは言ったものの、ただのウィルス性の感染症の可能性も捨てきれないではないか、とも思ったのだが、一度決めたものだし、半数以上過ぎてから、君からやらないよとも言えず。

しかしまぁ、内容としては色っぽいものは無く、淡々と、しかしちゃんと食べてくれたので少し安心した。

無事にもやしのビタミンが届いてくれればよいのだが。

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ようやくの所で一段落した。

介護の人手の余裕もでき、休憩時間と相成ったので、慰問も込めて一席打ったというわけだった。

今日も昼時を過ぎて少し経ったところ、いい感じに作業疲労を感じたので、一息つけようと相成った。


「ふー、そいじゃちーくと休憩としましょうか。ここズット出ずっぱりで少し疲れましたんで。ルッカ先輩、一服いきませんかね」


「うん、そーだね、ちょっと行ってこようかぁ」


じゃあ、ちょっと行ってくるね、と赤エルフ先輩は二人に軽く挨拶をしとことこと部屋を出ていく。


この船では酒はある程度なら適当にくれるのだが、タバコと紅茶は高級品のため、購入する形式になっていた。

素寒貧で乗った俺の財布に金があるはずもなく、何かあるたびに赤エルフ先輩にたかっていた。

いやぁ、やっぱり赤エルフ先輩の選ぶ品目は美味しいですねと言わねばタバコが吸えぬ。

さりとて俺の給金なんぞはでるのかね、小姓とかいってたけどそれって実際どうなんだろう。


それはともかく休憩か、と階段を上ってると、ギィィ~~~~、ゴンゴンゴン。という音と共に、横にわずかに変な揺れ、波という感じではなく、どちらかと言えば、擦りあって跳ね返ってぶつかって。といった出で立ちの。

またね~

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