葛西陽子の眠れない寝室
「パパったら、遅いわね~」
その家の妻、葛西陽子は既に就寝済みの幼い娘に、自らも娘のように語りかけた。
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陽子の携帯が鳴り、数秒足らずで陽子が電話に出る。
幸いにも相手の声が聞こえる。
『もしもし?陽子?』
「うん、どうしたの?パパ?」
『今日も帰れなさそうだ。こんな遅い時間になってまでごめんな』
「・・・そう、お仕事頑張ってね!おやすみ」
『ああ、おやすみ』
電話が切れる。
「はぁ・・・」と陽子の深いため息が、寝室に木霊するようだった。
それもそうだ。夫はもう三日も帰ってない。
仕事柄、私生活に影響がでるのは分かる。でも幼い娘と優しすぎる妻を家に残したままなんて・・・
とか思ってんだろうな、陽子は。
「ミコも悲しいよね、パパに三日も会えないなんて」
ミコ、僕の名前だ。神社で拾われたからこの名前。
オスにこんな名前をつけるとは、陽子もセンスがいいのか悪いのか。
僕は陽子に「ミャーァ」と鳴いた。
少しでも癒されて欲しい。少しでも救われて欲しい。
今にも泣きそうな陽子に鳴いた。