第7話 -開いてる扉-
「ーー゛-ー゛ー゛…」
俺達は部室へと走り出した。
その廊下の途中。
"人影"の1体が首をこちらに向けて立ち塞がった。
「こーするんだぜ」
ユズは俺にそう言った後、モップを構えた。
どかっ。
「……ー-ッ…ーッ」
ユズはモップの先端を"人影"の胴に突き立て、そのまま突っぱねた。
「必殺のツンツン」
「ユズ、今のうちだ」
"人影"が突き倒されたスキに、俺達はその場を通り抜けた。
「GRR、こいつらさ」
「やめ」
俺はユズの言葉を遮った。
ユズの見る方に振り返ると、倒した"人影"は立ち上がっていた。
首から足先まで力無くだらんとした足取りのまま、俺達の姿を追うようにふらふらと歩いてくる。
「こいつらさ、顔が」
「急ぐぞ」
言われんでも見えてるよ、ユズ。
廊下は月明かりが射し込んで"人影"の全身が見えた。
その"人影"の頭部は、あるべき目や鼻、おでこのところがえぐられたように潰れてる、ように見えた。
異常だった。
「こいつら、息し」
「前、あと2体」
冷える廊下。"俺達の吐く息は白く凍る"。
「…ーッ……-」
「…………ー-ッ……」
俺とユズはモップを構え、途中の"人影"を2体、手早く突き倒した。
「俺でも一突きでコカせる」
「GRR、見ろ」
"人影"を突き飛ばした先、部室の入口に辿り着いた。
「やっぱり扉が開いてんぞ」
「やな予感がする」
俺とユズは扉の手前で立ち止まり、周囲の見た。
俺達が通ってきた廊下には、"人影"が集まりだしていた。
「ユズ、来てる」
「中だ、行くぜ」
俺は、部室内に『知らせ』の光を確認した。
「これ、部長様達のじゃないよな」
部室の入口前。
室内から差す照明の光で、廊下の模様まではっきりと見える。
「だといいな」
床に飛び散っている赤黒い跡を見て、ユズはモップを握りしめた。