第6話 -こっち-
「GRRのダチか?」
「ノー」
『知らせ』の光と共に現れたのは、多数の"人影"だった。
「………---、ーーー…」
「…ー-ー-、ー-…」
階段から、東側への廊下から、屋外へ出る西の出入り口側から。
俺達は取り囲まれていた。
「どうするよGRR。また殴ってくるぞ」
「待って待って」
俺は『知らせ』の光を確認し、光の数が少ない方向に体を向けた。
最も危険が少ない方向だからだ。
「こっちだユズ」
「ん、そっち?」
「こっち」
俺はユズを呼び、2階への階段へ走り出した。
「GRRッ」
ユズが俺を追い越し、進行方向に蹴りを入れた。
「…ーーーッッ」
行く手の"人影"が1体、壁へと叩きつけられた。
「アイツら、こっち来るぜ」
ユズは階段の踊り場から俺の手を取り、そう言った。
「ーーーーーーーー…」
「……ーーーー、--……」
階段下の"人影"の集団はこちらにグルリと首を向け、うめき声を出し歩み寄ってくる。
「こっち。部室に戻るんだな、GRR」
「光が少…あーいや、そう。部室まで逃げるぞ」
階段の踊り場。
俺は2階への階段を見上げた。
『知らせ』の光は、部室までの道中にも確認できた。
「ユズ。多分、途中に3体位居る」
「どうして分かる」
「光の…あーいや、勘」
俺とユズは背後からの気配をチラ見しつつ、階段を登り、2階の廊下へ着いた。
廊下の一番奥。
遠くに見えるパソコン部部室の照明が、部室の入口前の廊下を照らしていた。
「なんで部室の照明が見えんだ?」
「ユズ、やな予感がする」
廊下の途中、ゆらりと動くものがいくつか見えた。
"人影"だ。
「ユズ。ここって確か」
「"工事中"、だったぜ確か」
ユズと俺は階段横に歩いた。[2階の男子トイレ]だ。
「使わねえだろ。借りるぜ」
ユズは"工事中"と書かれたテープをまたぎ、掃除用具入れの中からモップを2本、ごそりと取り出した。
ユズは「蹴り疲れた」とぼやいた後、モップを1本、俺に寄越した。
「行こう」
俺とユズは部室へと走り出した。