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LOST DAYS  作者: GRR
5/8

第5話 -事態-


「ーーーーーーーーーーーーーーーーッ」



獲物が射程圏内に入るのを待っていたような初速だった。


目前に迫る"人影"は、その右腕を大きく振りかぶった。



「右のっ」


「手だっ」



俺とユズは左右に散った。


"人影"の身体は大振りの右パンチごと、空振った勢いで反対の方向へ流れた。



「野郎ッ」



ユズは体勢を立て直した。

床に軸足を残し、そのまま"人影"の背面に蹴り掛かった。


ズンッッッ、っと。重い音を一つ。

"人影"の身体は廊下の壁に叩きつけられた。



「ーーーッッ…」



"人影"から『知らせ』の光が消えた。

同時に、"人影"は短い呻き声を残し、動かなくなった。



「(あの『光』が消えた、俺の警戒し過ぎなのか)」



俺はユズの手を借りながら、尻もちついた腰を上げた。



「やべーや、センセー来る前に逃げようぜ」



ユズは頭を掻いていた。

"人影"、もとい、蹴り飛ばした相手の生徒を見ながらそう言った。



「だな。早く部室に――」



俺が返す時だった。



『光』が、うずくまる"人影"から再び現れた。



「ーーーーーーーー…」



"人影"が、動いた。


"人影"はそのままゆらりと立ち上がり、再び俺達の方向に首を向けた。



「俺の蹴りを食らって、なんとも無えのかよ」



それはグラついた足取りで歩み寄って来た。


うめき声にも聞こえる、"人影"が発する声のようなもの。

それに意思っぽいのは感じなかった。



「ちっ、先制キックッ」



ズンッッッ、っと。

ユズは"人影"の間合いの外側から、先程より重い蹴りを"人影"に叩き込んだ。



「ーーー、ーーー、」



"人影"は廊下を転がっていった。

だが、何事も無いようにむくりと起き上がり、すぐにこちらに向かって来る。



「こいつ、変だ。気味が悪い」



その光景を見たユズは、困惑の表情だった。

ユズは俺と"人影"の間に位置取り、再び蹴りの構えを取った。



「もういい、相手すんなユズ、こっちだ。早く」



俺の声に、ユズが応えるのが見えた。

俺達はその空間から足早に立ち去ろうとした。


"事態"に気が付いたのは、その時だった。



「GRR、"こいつら"は何だ」



ユズが尋ねてくるより早く、俺の足は止まっていた。


『知らせの光』が、再び発生したのだ。



「分からない。気を付けて、1人や2人じゃない」



"人影"は1体ではない。

『知らせ』は階段、東側への廊下、屋外へ出る西の出入り口側から、俺を囲うように発生した。



「俺はウンコしにきただけだっつうのによ」



俺達は取り囲まれながら、"そいつら"に身構えた。



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