第4話 -人影-
目的地にたどり着いた。
[1階の男子トイレ]、俺は連れと用を足しに来た。
「外で待ってる」
しかし俺の小便は口実だ。
連れであるユズの便(すごく長い)が済む間、俺は廊下で『知らせ』の正体を探っていた。
「(どこだろう。この先かな)」
探索の途中、『例の光』が静かに起きた。
「(ん、違う)」
だがその光は弱く、すぐに消えた。
そう思った直後、目の前の掃除用具入れに立てかけていたモップが倒れてきた。
「あぶな」
カラーーンッ
俺はモップを躱した。
「おわっ。誰だ?」
「ユズ、モップだ」
丁度、"事"を終えたユズが出くわした。
ユズは屈んでモップを拾い、元の位置に戻した。
「なんだよ。急に倒れんなよな、ビビっから」
『知らせ』は俺の特異体質だ。光は少し未来の身の危険を伝える。
『知らせ』の危険度の目安は光の強さ。
今の程度の『知らせ』は日常でよく見る。
俺にとっては"いつものこと"レベルだ。
「急だとね」
そして、光は俺以外には見えていない。
「GRR、今日のは太くて長えのが、」
「いいわ言わんでも」
俺達は[1階の男子トイレ]を後にした。
校舎の西側。
部室に戻るため、2階へ向かう[西階段]に差し掛かる頃だった。
「おわっ。誰だ?」
ユズは声を出して立ち止まり、俺も歩みを止めた。
踊り場窓からの光が薄っすら差し込む踊り場と1階廊下の間、階段の上。
"人影"がひっそりとそこに佇んでいた。
「なあGRR。パソコン部以外に残ってる生徒が居たんだな。おっす」
「……………………」
「………」
「………」
俺達は1階廊下から人型のシルエットを見上げている。
「道、どいてくれねえな。GRRのダチか?」
「暗くてよく見えねえ」
『知らせ』を確認するまでもなく、それは不審だった。
そして、その『光』は部室の入口で見た『訪問者』のものだった。
「(フツーの生徒に見えるけど、こいつだ。しかし光が強い)」
『知らせ』の危険度の目安は光の強さだ。
さっきのモップ程度だったらかわいいもんで、光があの時みたいに弱くてすぐ消える。
「(こいつの何が危険なんだ、喧嘩でも吹っ掛けられるのか)」
俺は振り向き、東側の階段までの廊下を見回した。
「ユズ、あっちの階段で戻」
ユズに声を掛けようとした時だった。
周囲を舞っていた『光』が動きを見せた。
<―――ミ ギ ノオテ テ―――>
「ッ。ユズ、こいつの右手だッ――」
「あ、なんだって?」
俺は咄嗟に、ユズに『危険』を伝えようとした。
「ーーーーーーーーーーーーーーーー」
同時に"人影"が動いた。