第2話 -『知らせ』-
「どなたすか」
「…………」
返事が無い。
日本史の米川(超無口なセンセー)かな。とか思いながら、俺は扉に手を掛けようとした。
その時だった。
「あ」
空中が光った。
扉と俺の間。
光が割り込み、周囲が鈍い黄金色となった。
「ふうむ」
俺はこの現象を知っている。
光が舞う方向。
<―――トビラノムコウ―――>
光はそう『知らせた』。
「そうか」
同時に、『これ』が起こった意味を理解した。
扉を開けようとした手で、そのまま錠を閉めた。
「誰なの、GRR~?」
俺、GRR(あだ名だ)は部長様の声の方を向き、一息挟んで言葉を出した。
「誰も、気のせいよ。良かったな、センセーじゃなくて」
「僕も帰って試験勉強しなくちゃ~」
「なんで鍵持ってたの」
部長様とその他の面々へ作業再開を促した後、俺は扉にもう一度目を向けた。
「そうかあ」
「試験期間だぞ。早く帰れ」と帰される。
長くてきっつい説教を食らう。
『訪問者』がセンセーだったら、たぶん、こんな具合で済む。
「いつもより多いんだ、光が」
俺の持つ『知らせ』の光。それは『危険の合図』。
今そいつが現れた。
そこから先は、俺の判断次第だ。
扉を開けない。
ここにいる部員達から『訪問者』を遠ざけた方が良い。
俺はそう判断した。