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今昔の果て  作者: ユーリ
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7話終幕

調査を初めて一週間が経過した。停学期間が終わるまであと五日。少しずつ焦りがでてきた。詩織の赤ちゃんの件については対処がすぐにできるようにした。けど、もう一つの目的、あの三人への復讐についてだ。玲央に関しては簡単だと思う。ただ芽衣と茜に対してまだ気持ちが定まっていない部分がある。記憶の混濁による影響なのか二人に対する恨みの気持ちと大切な友達になれたという幸せな気持ちが反発しあってるみたいだ。楽しかった記憶で恨みが消えることもないし、昔の憎しみで楽しかった期間の気持ちが上書きさせることもない。それが枷となってどうにも気持ちが上がらなかった。もう考えるのが疲れてしまったからまずは玲央を先に済ませることに決めた。

 それからの行動は早かった。まずは連絡先を手に入れるために動いた。ただそれに関しては簡単だった。前に玲央と芽衣と茜と四人で遊んだ時、グループを作っていたことを思い出した。友達登録はしていなかったけど、すぐに連絡することが出来た。話をしたいと送り、二人で会う約束をした。玲央の女癖の悪さは芽衣からも聞いていたし、簡単に乗ってくると思っていた。小学校の時だけど、私のことを好きだった玲央の対処は簡単だった。明日の昼間に会う約束をした。学校もサボり気味みたいだ。

「こいつなんの危機感もないのかな?ていうか芽衣はこれのどこが好きなんだろ。優しいとか面倒見がいいとか言ってたけど、浮気する時点でそいつの評価最悪でしょ。よく考えると訳分からない二人だよね。」

こんな風に二人の悪口を言うことは今まで無かった。私の心がゆっくりとだけど、落ち着き固まってきたのが分かった。これなら何とかなりそうだ。明日、まずは玲央に復讐すると心に誓った。

 一方、私が気づかないところで警察の捜査はかなり進んでいた。すぐに見つからないだろうと思っていた陸斗の取り巻き二人の遺体が発見されたようだ。どうやら親が捜索願を出し、よく二人で廃屋や廃墟に行く癖があると伝え、それを軸に警察が捜査したところ、二人を殺した場所も候補に上がってしまったらしい。普段行き慣れているとは知っていたけど、逆に誘いやすくなった。そこを差し引きしてもこんなに早く見つかるとは思わなかった。

「三上さん、例の廃工場で行方不明になっていた生徒二人の遺体が発見されたみたいです。少しですが争った形跡があり、他の人間のDNAも検出されてるみたいですね。確定は出来ないですけど、これが犯人の可能性が高いって本部は見てるみたいです。三上さんは綾瀬陸斗くんの時から担当してますし、今回も関係がある可能性高いってことで追加で捜査に加わって欲しいみたいっすよ!」

三上というのは、陸斗の事件について学校で聞き回っていたら警察官だ。私のことを疑って色々質問してきたこともあり、かなりの切れ者のようだった。今回の事も彼が居たから捜査が進んだといっても過言では無い。

「そのDNA、全校生徒と照合するつもりなんだろ?だったらまず一番に確認してもらいたい人物がいる。前々からちょっと気になっててな。優先的にやって欲しい。」

この進言によって容疑者が確定してしまう。

「この子って陸斗くんの事件の時から三上さんが注意してみてた子ですよね?流石に相手は男の子二人ですし、あの仮面の人物とも背格好が一致しませんよね?声も男だったって言ってましたし。なんでこの子にそんなこだわるんです?」

最もな疑問だと思う。ちょっと頭のいい田舎娘を疑う人なんていなかった。けど、この三上と言う刑事は常識から外れた人間だった。

「んー、正直勘かな。あれだけ大きなコートと顔をしっかり隠せる仮面があれば性別を偽らせることも可能だと思うしな。それでもあくまで勘だ。違ったら違ったでそれでいい。ただ、あの子に直接会って気になった部分がある。俺が警察だと名乗った時、基本他の生徒はちょっとビビるか本物だ!と興奮するかのどっちかだった。けどあの子は俺が警察とわかっても感情の起伏がなくて冷静だった。冷めた性格の子なのかなとも思ったけど、友達といる時は笑顔で明るい性格だって言うのもわかった。過去に何かあったか何かしらの事情を抱えてるって思ったんだ。ちょっと調べたんだが、彼女は過去に事故にあっててその時一緒にいた友達を失っているみたいなんだ。それも影響しているのかもしれないが高校生であれだけ肝が据わってるのはなかなかいないと思うぞ。そういうのもあって気になっていたんだ。」

私の過去を調べられて更に興味を持たれたみたいだ。私や全校生徒の鑑定の結果が出るのは約一週間前後。私が容疑者として上がるのは時間の問題だった。

 そんなことを知る由もない私は、今日玲央との約束の場所に来ている。映画館で見たい映画が同じだったからそれを見てカップルに人気と言われてるカフェに行く予定だ。正直一緒にいるのはすごく嫌だったが、目的のためならしかたない。

「由香ちゃん久しぶり!いやーまさかそっちから連絡来るとは思わなかったよ!中学卒業以来だけど、結構前に感じるよな!でもいいの?俺一応芽衣と付き合ってるんだよ?親友の彼氏と遊ぶってどうなのかな〜?」

こういう上から目線も軽薄な所も大嫌いだった。芽衣の幼馴染だし、彼氏だから一応仲良くしてただけで本当は絡むこともしたくなかった。

「別に会うだけなら芽衣は何も言わないよ。私が裏切るなんて思ってないと思うからね。それに今日はただ会いたいって言っただけで好きかどうかなんて言ってないし、あんま勘違いしないで。」

私のドライな反応を見て若干嫌な顔をしたが、すぐいつも通りに戻り、映画館に向かうことにした。

「まさか同じ映画を見たいって思ってたなんてな!まだ見てなくてよかったよ!俺ら意外と気が合うんじゃね?」

こいつは本当に軽いヤツだと思った。彼女がいるのにもかかわらず、他の女に言いよるような言動。まぁ私も彼女がいる相手を誘っているのだから同じようなものだけど。映画館に着き、見たい映画が始まる時間になり、席に着いた。上映されている時、ちょくちょく手を握ろうとしたり、肩に手を回してこようとしたりしてきた。気持ち悪すぎて怒鳴りたくなったけど見たい映画だったし、周りの迷惑になると思って抑えた。こいつに理性というものは無いんだろうか。

 昔からそうだった。小学生で転校してきて一緒のクラスになってからよく絡んでくるやつだった。好意があるって言うのはわかってたけど、当時の私は全く興味がなかった。友達も多く、好きな人という感覚もよく分からなかったからだ。いじめが始まった時も奴は実行役として振舞っていた。私の気を引くためかただのバカなのか指示されたことをすぐやるようなやつでよく教師にも怒られていた。例え本人にいじめている感覚がなくても許されることでは無い。間違いなく由香里ちゃんが死にたいと思った原因の一人だ。

「面白かったな!これ続編が決まってる映画だからまた一緒に見に行こうぜ!次は結構有名なカフェだろ?早く行こ!」

相変わらずテンションは高い。やたらセクハラしてきたことを言おうか迷ったが、変な空気にして帰られると困るし、耐えることにした。

「私あそこのパンケーキ食べたいんだよね。ただ、カップルが多くて一人で行けないんだ。だから玲央くんにお願いしたんだよね。私他に男友達いないし、芽衣と茜ともなかなかタイミング合わなくてさ。」

適当なことを言った。気があるような素振りをして油断させた。怪しまれることはないと思うが、念の為にしっかり作戦は立てておいた。カフェに入り、席に着いた。

「周りカップルだらけだな!俺らもそう思われてんじゃね?趣味も合うし、意外とお似合いなのかもな〜。」

また馬鹿なことを言い出した。嫌だったがそうかもねと返した。嬉しそうにしている玲央を見て殺意が増した。

「由香のお目当てのパンケーキも食べれたことだし、次行くとこ決めよーぜ!カフェまでしか予定立ててなかったしな!どうする?カラオケとかいく?」

玲央が次の予定を立て始めた。けど、私の行きたいところは既に決まっていた。

「ちょっと行ってみたいところがあるんだけどいい?かなり古くて整備もあまりされてないけど、私たちでも入れるようなホテルがあるんだよね。どうかな?」

私の提案に驚いた玲央は一瞬黙ったがその後すぐに行きたいと言った。まぁ男なら誰でもこの誘いには乗るものだと里奈が言っていた。さすが彼氏が耐えない子だなと思う。

 カフェを出て目的のホテルに向かった。かなり田舎のところにあり、バスと電車を乗り継いで一時間半かかった。着くまでの時間玲央はずっとウキウキしている様子で話していた。私にとっては苦痛の時間だった。その時間を超えてやっとホテルに到着した。私も見るのは初めてだったが確かにこれは話題になるだけのことはある。ネットでたまたま見つけたというのもあるけど、他にもここを選んだ利点があった。

「なんかすごいね。てか、これほんとにやってんの?めちゃくちゃ心霊スポットなんだけど。あ、でも営業中にはなってるな。しかも受付無しに入れるっぽいね。確かにこれは高校生でも入りやすいかもな。」

見た目は完全に廃墟だが中はしっかりしているようだ。一応ラブホテルとしてちゃんと営業はしているみたいだ。戸惑いながらも部屋を選び私たちは中に入った。

「結構綺麗じゃん!風呂も大きいし、ベットもめっちゃでかいな!とりあえず風呂入る?一緒に入っちゃう?」

きも!と声が出そうになったのを抑えて先に入っていいよと伝えた。玲央は多分この後の流れを頭の中で想像しているのだろう。あいつの思うようにはならないけど。風呂に入るのを確認すると最後の仕上げをした。二十分後、玲央が風呂から上がってきた。準備をするのには十分な時間だった。

「上がった!入っても大丈夫だぞ!」

せっかくなので私も大きなお風呂に入ることにした。玲央には再度入ってきたら許さないということを伝えるとしょんぼりとしていた。適当な理由をつけてささっとお風呂に入った。こういう所には縁がないと思ってたけど、まさか友達の彼氏と来るとは思わなかった。私がお風呂に入っている間なにやらゴソゴソとしていると思っていたけど、上がった時その理由がわかった。色々雰囲気を出すために照明やものの位置などをいじってたみたいだ。さすがの私もこれには少し戸惑った。今まで男性経験のない私からすると全て初だからだ。

「ここに来たってことはそういうことだよね?ここに来るまで結構我慢してたんだよね。もういいかな?」

そう言いながら玲央が私をベットに寝かせた。私に覆い被さり、顔を近づけてきた。首元をキスをしてきてどんどん興奮してきている。そのまま上に上がってきて今度は口にキスをしようとしてくる。これ以上は耐えることが出来ないと思った私はベットの下に準備していた物を玲央目掛けて刺した。

「痛って!何してんの!」

私が手にしていたのは、注射器だった。その中には睡眠薬が入っていてそれを勢いよく押し込んだ。玲央が注射器を引き抜くまでに中身は全て身体の中に注入されていた。いきなりのことで気が動転したのかベットの下に転げ落ちた。何がどうなっているのかわからない玲央は私を問いただした。

「どういうことだよ。なんでこんなことしたんだ!一体俺に何注射した!」

質問が止まらなかった。私は一つずつ答えることにした。「ごめんね騙して。今日一緒に色々回ってもらったのはこれがしたかったからなんだよね。なんでと言われると説明めんどくさいから後で話すけど、簡単に言うと私はあんたを恨んでるんだよね。それで今日はあんたに復讐するためにここまで来てもらったわけ。なんでか聞きたいとは思うけど、多分もうすぐ眠くなるだろうからまた後で話すね。」

薬の効果はすぐに出てくる。準備は念入りに済ませたのでここまでは順調そのものだった。

「こんなことしてただ…で済むと…思ってる……の…か。」

薬が効いてきたのか玲央は倒れ込むように寝た。ここから一時間は何をしても起きないだろう。最後の復讐をするために準備を始めた。

 一時間後、玲央は目覚めた。

「ん……なんだこれ……動けない……」

玲央は起きてからすぐに気づいた。全く身動き取れないくらい拘束されていたことを。どれだけもがき足掻こうとビクともしない鎖に繋がれていた。

「なんだよこれ!おい!由香!どこ行きやがった!」

大きな声で怒鳴った。けど、ここはラブホテル。部屋ごとの壁は厚く、外にも聞こえない。部屋の中で怒声が響くだけだった。

「うるさいよ。騒いでも外には聞こえないよ。でもうるさいから黙ってて。」

私は準備を終え、風呂場から出た。

「なんだよその格好は!一体俺に何するつもりだ!ていうかなんでこんなことを!お前俺のこと好きじゃねーのかよ!」

的はずれなことを言い出した。こんな状態で自分のことを好きだと思っている時点でやっぱり頭がおかしいやつだなと思った。

「私があんたのことを好き?気持ち悪いこと言わないでよ。私はね、昔からあんたのことが嫌いだったの!転校してきてから馴れ馴れしく関わってくるし、私の親友をいじめるし、最後は彼女の心を壊して殺した。そんなやつにいい印象を持つわけないでしょ?」

はっきりと答えた。その中に玲央が驚くであろう言葉も入れて。案の定、そこに引っ掛かりを覚えたのか唖然としながらまた質問してきた。

「おい……今言ったことは本当か?昔から嫌いって言ったよな?お前……もしかして……記憶が戻ってんのか?じゃないとそんな言葉出てこないよな!」

こんな馬鹿でもそういうことには気づくんだなの感心してクスッと笑ってしまった。最後に教えてあげるのが優しさというものだろう。

「そうだよ。色々あってつい最近思い出したんだよね。まぁ過去のことは知ってる人から聞いてたからどの道あんたには復讐するつもりだったけどね。記憶を取り戻してその気持ちがさらに増したって感じかな。どう転んでも結果は変わらなかったと思うけどね。」

包み隠さず教えた。結局はこういう状況になっていたということを伝えて絶望を与えるためだ。こいつはただ殺すだけじゃ済まさない。最後の最後まで絶望させるつもりだ。

「心配しなくてもすぐには殺さないよ。私の親友をいじめ殺したことをしっかり反省してもらうためにもじっくりとやらせてもらうね。」

徐々に冗談ではないということに気づき始め、焦りの顔になってきている。

「勘弁してくれよ!昔のことだろ?それに実際に俺が殺したわけじゃない!自殺だったんだろ?確かにいじめてたのも認めるし、悪いとも思ってる。けど、こんなことまでされることじゃないだろ!それにいじめられる側にだって原因があるかもだろ!しかも殺すとか。そんな簡単に出来るわけないだろ!」

自分は悪くないと言い訳を繰り返している。そして私に殺しなんてできないということを。まだ希望を持ってるみたいだからそれを潰していこうと思う。

「まず実際に自分で手を下してなくてもお前がいじめていたのは事実。それに私は聞いた。由香里ちゃんはお前達に虐められて毎日泣いていた。でも、両親に心配かける訳にもいかないと思って辛くても中学校に来ていたの。何度かやめてと訴えてたみたいだけど、あんたらは気にせずいじめてたんだよね?それで自分のせいじゃないなんてよく言えるよね。あと私が殺しなんかできないって思ってるみたいだけど、見当違いにも程があるね。私はもう既に三人を殺してるんだよ。今後どれだけ増えても正直変わらないと思ってる。多分私はそういう感情が欠落してるんだよね。だから簡単にできてしまう。脅しでこんなことしてる訳じゃないからね。」

大人しくなった。逃げられないと知ったことは何よりの絶望だろう。いい感じに静かになったからそろそろ始めようと思う。

「ここの部屋三日は泊まるようにお金も払ってるから時間は十分ある。受付もいないし、監視カメラすらつけてない。こんないい場所はないよね。それじゃ初めていくよ。痛いだろうけど、最後の最後まで死なないでね。」

これから始めることはもう意味の無いことなのかもしれない。由香里ちゃんはもう居ない。こいつらを恨んでいるのは私と由香里ちゃんのご両親くらいだ。でも、前に進むためにもやるべきだと思う。もう迷うことは無い。復讐を始めた。

「これは大昔、まだ拷問があった時代に行われてた方法だよ。痛みを与え、長く生き延びさせられる。単純なもので、簡単にやれるものなんだよ。大掛かりな道具もいらないしね。斧を探すのは大変だったけど。」

大きなバックから斧を取り出した。私がやる拷問は手、足、頭、胴体をそれぞれ大の字になるように固定して身動き一つ取れないように拘束する。この時になるべく外側に引っ張って固定するのが大事だ。まっすぐ引っ張ることにより、腕や足の関節にほんの少しだが隙間ができて斧をその隙間目掛けて振り下ろす。この方法を使えば女性でも人のを部位を切断することが可能になる。歴史の勉強をしていた時たまたま見つけることが出来た。

「切ったあとは止血をしっかりすれば死ぬことないのよ。止血の方法もしっかり勉強してきたから安心してね。」

安心できる訳もなく、顔は涙でぐちゃぐちゃに。お漏らしもしているようだ。恐怖のあまり声も出ていない。

「や……め……てく……れ。」

それを見てこれまでに無い気持ちになる。私はもう普通の人間には戻れないんだと実感した。泣きわめくこいつを見ても何も思わない。何故か幸福が増す。最後まで私は笑顔だったみたいだ。

 夜が明けた。いつの間にか寝ていたみたいだ。目を覚まして玲央を見てみるとまだ息がある。指、手、腕、足、耳、鼻、陰部、色々なところを切り落とした。その度に止血を繰り返し、すぐに死なないように心がけた。もう悲鳴もあげない。虫の息だ。こんな状態でよく生きているものだと笑ってしまう。私が起きたことに気づいたのか、玲央が私に懇願してきた。

「も……う……ころ……し……てく……れ。」

か細い声で力いっぱい捻り出した言葉だったのだろう。動けないし、力も入らないから自殺することも出来ない。心からの願いだったのだろう。正直もう十分だったから私は斧を力いっぱい首元に振り下ろした。五回振り下ろしたところで切断に成功した。これで復讐は達成した。達成感と幸福感が身体を走り巡る。返り血を受けたからまずはシャワーを浴びた。血液は中々落ちないようで苦労したが何とか綺麗になった。綺麗な服に着替えて玲央の遺書を書こうと思う。もちろんこんな状態で自殺に偽装なんて出来ない。警察が見るものと仮定して玲央が犯した罪、その時の警察の対応を非難する文面を作った。

(俺は小学生の時、一人の女の子をいじめていた。初めは好きな子に対するアピールのつもりだったけど、エスカレートしていくうちに関係の無いその子の親友をいじめるようになった。やりすぎだと自分でも分かっていたけど、どうしても辞めることが出来なかった。そのせいでその子は小学生という身で自殺を選択する他無くなってしまった。これは俺が彼女を殺したと言えるだろう。こんな事になってしまったのは全て自分のせいだ。そしてただの自殺と判断し、いじめをしていた件を見逃した警察にも責任はある。今後、こういったことが起きないように頑張ってもらいたい。)

こんなことを書いてもあまり意味が無いのかもしれない。世間に公表されることもなく、ただの殺人としてもみ消されるだろう。でも、少しでも警察の意識を変えることが出来れば、こいつみたいないじめをするやつや私みたいに復讐したいと思うやつは少なくなるだろう。世間からいじめをなくそうだなんて大層なことは考えていないけど、私のやった事を無駄しない為に理由も必要だと思う。

「私って何がしたいんだろ。なんかよくわかんなくなってきたな。恨みはまだある。けど、もう死んでる気持ち切り替えないとね。もう少しで終わるよ。由香里ちゃん。」

大事なものをバックに詰めた。全てを終えて部屋を出る。前より気持ちが軽くなったのを感じた。

 ホテルを出て電車に乗り、実家の最寄り駅に到着した。早く帰らないとまた両親に怒られるかなとは思ったけど、少しだけカフェによることにした。そこでスマホを取り出し、ネットニュースの通知を見た。それを見てまた達成感が湧いてきた。

「ネットニュースの会社に送った資料役に立ったんだね。これで陸斗の家も終わりだな。ちゃんと被害者の名前や情報は伏せてあるしこれなら問題ないな。」

そこには陸斗が行なった犯罪を被害者が分からないよう報道している。停学が始まってすぐ情報を渡した。この辺で力を持っている家の跡取りである子供がこんなことをしたと言うことになればかなりの大事件だろう。話題になると思って取り上げてもらえることになった。そして陸斗が殺されたことも。陸斗の両親が警察に圧力をかけて報道をさせないようにしていたようだ。けど、報道陣も納得が言っていなかったみたいで私の話に乗ってくれた。

「これなら詩織にちょっかいかけてる場合じゃなくなっただろうな。あの子は詩織の子だし、渡す訳にはいかないしね。こんなこと勝手にしたら詩織に怒られちゃうかな。」

何を言われてもやるつもりだった。私の目の届かないところでなにかされると守ることなんて出来ない。多分これから近くにいることも出来なくなるから。少し暗い気持ちになったけど、ケーキをおなかいっぱい食べて気分を上げた。まだやることはある。気持ちを切り替えて実家へ帰る。

 実家に到着し、静かに玄関を開けた。幸い今日は平日で両親は二人とも仕事に出ていた。怒られるのは確定だろうけど、とりあえず今は大丈夫そうで良かった。疲れを取るためにすぐにお風呂に入った。お風呂から上がってリビングに向かうと食卓に私用のご飯が用意されていた。置き手紙で(帰ったら食べなさい。説教は帰ったからね。)と書いてある。最後にハートマークがあったけど、それには何やら不穏なものを感じた。

「多分結構怒られちゃうよね〜。覚悟しとこ。まぁもう会えないかもしれないんだけどね。」

私は覚悟している。あの記事が出たということは警察が本格的に動き出すということ。多分私に辿り着くのは時間の問題だと思う。あまり時間もないし、残りの二人への復讐を始めよう。二人を呼び出すために連絡をした。

(おつかれ!いけたらでいいんだけど、今日会えない?ちょっと話したいことがあるんだよね!ご飯奢るから会いたいな!)

多分これで二人は飛んでくると思う。今まで何度も連絡が来ていたけど、あまり返していなかった。そんな私からの誘いは断れないと思う。こんな変な自信があるのは、中学卒業してからの関係性が良かったからだと思う。案の定、今から行くと返信が来た。あの二人のことだ。学校をサボるくらいなら余裕でできる奴らだ。時間を指定してそれまでの時間に準備をしようと思う。そしてこの家には二度と帰ってこれないかもしれないと思い、しっかりと目に焼き付けておこうと思う。

「パパ、ママ。こんな親不孝な子供でごめんね。犯罪者の子供っていうレッテルを押し付けてちゃうのはほんとに申し訳ないな。私のことは忘れてね。」

復讐の準備を終え、両親に手紙を書くことにした。昔のこと、今の状況、私の気持ち、そして謝罪。書いてるうちに涙が出そうになったけど我慢した。

 後ろ髪引かれる思いではあったけど、早く実家を出たかった。パパとママに出会ってしまうと多分決心が揺らいでしまうと思ったからだ。実家からでて駅まで少し歩いたところである人物からの電話があった。少し躊躇ったが最後だと思い電話に出ることにした。

 (もしもし?ごめんちょっと忙しいからまたにしてくれないかな?)

会話もせず、早々に電話を切ろうと思ったが、電話の相手から重要な情報を聞かされた。

 (さっき入った情報なんだけど、警察はもう今回の殺人事件の犯人を君だと推測してるみたいだよ。未成年だし、簡単には確定できないけど、取り巻き二人の遺体が見つかった場所で二人とは違う髪の毛や指紋が見つかったみたい。今DNA鑑定してるみたいで多分それも一週間後には確定すると思う。でもそれを待っていられない警察側は君を事情聴取の為に任意同行させるつもりみたいだよ。もうこれ以上手助けはできそうにない。僕がどれだけ頼んでも止まらないとは思う。けどこれだけは言わせて。どんな君でも僕はずっと好きでいる。だからちゃんと生きて欲しい。)

そう言い終わると最後に「ばいばい」と少し寂しそうな感じの言葉を残し、電話を終えた。ほとんど一方的に話をされた感じだったけど、なんだか安心する声だった。今まで色々頼ってばかりで申し訳なかったなと思う。最後に黒川くんと話せて良かったと思う自分がいることに驚く。もしかするともう少しで彼のことを好きになっていたのかもしれない。でも、彼は警察官の息子で将来は警察になるという夢もある。私にみたいな犯罪者と関係を持つことは許されないのだ。心の中でそういう気持ちがあったからこそ好きという気持ちまで行けなかったんだと思う。

「面会に来てくれたらその時に謝ればいいかな。」

そんなことを考えながら駅に向かった。

 二人との集合場所に到着したのは、待ち合わせ時間の一時間も前だった。早めに実家から出たとはいえ、変に緊張しているのか早くついてしまった。気持ちを落ち着かせるために近くのカフェに入った。コーヒーを飲みながら最終確認をする。

「今回はただの復讐じゃないよね。色々確認したいこともあるし、抑えなきゃね。」

決意を固めた。今回の舞台は私の母校の中学校がある今の地元だ。平日にも関わらず、若い子が周りに多いのは文化祭があり、その振替休日が今日らしい。当時の私は友達もおらず、家にずっとひきこもってたけど、友達と振替休日にカフェに行ったり、カラオケに行ったりと充実した休日を送れている子達を見ると羨ましいなと思ってしまう。そんなことを思いながらのんびりしていると待ち合わせ時間になった。ギリギリで二人が到着したのはいつも通りのことだった。

「由香ごめん!ギリギリになった!待たせちゃったね!」

二人は息を切らしながら駅の方から走ってきた。久しぶりの再開に嬉しさが込み上げてきた。それと同時に憎悪も膨らんでいく。昔と今の違った感情が入り交じり複雑な気持ちになったけど、平静を装いつついつも通りに接する事が出来るように努力した。

「大丈夫だよ。私もさっき来たところだから。それよりごめんね。こんな平日に呼び出して。最近なかなか会えなかったからまた予定立てようかなと思ったんだけど、まさか今日来てくれるとは思ってなかったよ。学校とか大丈夫だったの?」

いつも通り話せているはずだ。正直どうなのかは分からないけど、頑張っている。

「大丈夫!別に私ら学校抜け出すとか楽勝だからね!由香忙しいだろうし、会えそうな時に会いたいから全然大丈夫だよ!てか、たまたま聞いたんだけど、今停学中なの?あの真面目な由香がなにしたの!色々聞きたいことあるし、まずはカフェ行こ!」

興奮気味なのか二人はキャッキャしてた。なんだか落ち着いてしまう雰囲気にまた複雑な気持ちになる。その気持ちをグッと堪えてカフェに向かった。向かったのは中学を卒業して初めて三人で遊んだ日に入ったカフェだった。まだ一年も経っていないけど、かなり前のように感じる。

「そういえばここで初めて三人でお茶したよね!その時に由香とちゃんと友達になれたんだよね!私たち三人の原点ってここなのかもね〜。」

変に語り出した芽衣を茜がいつものように冷静に突っ込んだ。

「年寄りみたいに言うな。そんな前でもないに。由香もそう思うよね?」

私も笑いながら芽衣に突っ込んだ。この流れもいつも通りだった。場が和んだところで質問攻めが始まった。

「それでそれで色々聞きたいんだけど、まず停学って何したの?結構やばい感じ?」

深刻そうに聞いてきたので、大したことないと思わせるために明るく話した。寮生なのに無断で外泊したこと。それで停学になったことを伝えた。それを聞いた二人は静かなカフェの中で拍手した。さすがに恥ずかしかったから止めた。次にネットニュースの話しになった。

「あとこれ聞きたかったんだけど、この虐められてた子ってもしかして由香と同じ学校の子?前に聞いてた地元で結構な力を持ってる家があるって言ってたよね?確かその家の名前とこのネットニュースの加害者の子の名前が同じなんだけど、そういう事なのかな?」

やはりネットニュースの影響力はかなりあるみたいだ。地元の人間じゃない二人が覚えているほどだし、そう簡単に消えることもないだろう。詩織の安全が保証されているようなものだから少し安心した。

「私は直接は知らないけど、そういうことがあったみたいだね。一時期警察がウロウロしてて結構な騒ぎになってたからね。」

二人は驚きを通り越して興奮していた。まぁ身近にそんな事件が起きることなんてほとんどないからだ。ちょっと不謹慎ではあるけど、仲間内の雑談だしそこは目を瞑ることにした。近況と色々なエピソードを話しているといつの間にか二時間が経過していた。これ以上長居するのも申し訳ないから次にショッピングモールに向かった。

「そういえばここも来たよね!初めて三人で遊んだ時に!なんか聖地巡礼みたいだね!とりあえず冬服でも見てみる?」

さっきと同じようなことを言っている芽衣をスルーして服や雑貨などショッピングを楽しんだ。私にとってはこれが最後の買い物になるだろうから。

「結構歩いたね!この後どうする?特に予定立ててないけど、カラオケでも行く?」

芽衣が提案した時、私が割って入った。

「ちょっと行きたいところがあるんだけどいいかな?今日私たちが通ってた中学校振替休日で休みみたいなんだよね。当時の担任に聞いてみたらこっそりなら来てもいいってことだから行ってみない?」

私の提案に二人は大賛成した。母校訪問なんてあんまりできるものではないからとウキウキで向かうことにした。

「めっちゃ楽しみだね!なんか懐かしく思えちゃうよ!私たちが出会ったのもここだし、色々な原点だよね!」

芽衣は興奮していた。茜もクールだけどどこかソワソワしているようだった。私はそれを見て心が冷めきっていた。二人は私が記憶を取り戻したことを知らない。だからこんなとぼけたことが言えるのだろうと呆れ返っていた。

 学校に到着して裏口から学校に入った。本当は担任に許可をとったのも嘘だった。この裏口はほとんど使われることもなく、施錠もされてないことが多い事を知っていた。中学では一人お昼ご飯を食べる事が多く、誰もいないところを探してはそこで食べていた。その中の一つがこの裏口だった。教師ですらほとんど寄り付かず、当時のままで鍵も空いていた。

「ここから入っていいらしいから行こ。先生たちも今日は休みみたいだから学校にいるのは私たちだけだよ。」

そういうと二人はまた興奮し出して、懐かしの母校を見て回った。職員室や体育館、保健室や化学室。どこも三年間の思い出が詰まった場所だった。一通り見て回り、最後に三年生の時の教室に向かった。

「懐かしいね!私の席ここだったよね!今思うと中学の時、由香ともっと遊べてたら良かったな~!なんかもったいないことしたよね!由香は結構後ろだったよね?あの頃は後ろでずっと本読んでたよね!そのおかげであんなに頭良かったのかな?私ら勉強なんてあんまりして無かったから今大変だよ~!」

中学の頃はほとんど関わらなかったけど、同じクラスだったこともあり、行事や普段の生活の風景は同じだった。

「楽しかったね!夕方になってきたし、そろそろ帰る?さすがに長くいすぎるのも良くないしね!」

そういうと帰り支度を始めた。そこで私は提案した。

「せっかくだし、教室と一緒に三人で写真撮らない?こんなことできることほとんどないと思うし、記念になると思う。」

二人はいい案だといい、教室全体が映るように黒板の前で並んだ。芽衣と茜の間で少し後ろに下がって私が並んだ。カメラを黒板の縁に置き、タイマーをかけて三人でポーズをとった。二人はピースして前を向いている。その後ろで私はカバンから予め出しておいた薬をハンカチ二つに染み込ませ、準備が完了した。タイマーが終わる直前に私は二人の耳元で囁いた。

 (いい記念になるね)

二人が振り向こうとした瞬間、口元に薬を染み込ませたハンカチを強く押し当てた。勢い余って倒れ込んだが、ハンカチが外れないように私も一緒に倒れ込んだ。二人は息を勢いよく吸ったのかすぐに意識を失った。念の為にハンカチは五分ほど外さずにいた。しっかりと意識がないことを確認した後、ゆっくりと立ち上がった。

「よかった。倒れた時はやばいって思ったけど、何とかなった。それにしてもこの薬良く効くな〜。よくドラマとかで吸ったらすぐ意識なくなるシーンあったけど、こんなに効くなんて思ってなかった。ていうか学校もまだこの薬が減ってることに気づかないってどうなんだろ。規則は厳しいのにこういう所は緩いよね。まぁ科学担当の教師が面倒がってしてないだけかもね。」

この薬は前に科学室からちょろまかした物だ。取り巻き二人を眠らす時に使ったから結構前の話になる。ばれたら問題になるのは分かってたから念の為に薬を抜いた空き瓶に水を入れて置いた。見た目はほとんど同じだったからばれていないのだろう。けど、授業で使うこともあるみたいだからばれるのも時間の問題だと思う。そう思いながら二人が起きる前に準備を始めた。

 一時間後、二人はゆっくりと目覚めた。頭が混乱しているのか自分の状況を把握するのに時間がかかっているのか周りをキョロキョロ見回していた。意識がしっかりしてきたのか目の前の教壇に腰掛けている私に同時に目をやった。

「……由香?これ……どういうこと?なんで私たちを椅子に縛ってんの?」

芽衣も茜も状況が分からず、質問を繰り返した。それを聞いて私は答える。

「そうだね。急にこんなことになって混乱してるよね。今まで仲良くしてた私がこんなことするなんて思ってなかったよね。けど、私がこんなことをする理由知ってるはずだよね?だって二人は私の過去をよく知ってるんだから。仲良くしてたのは私のことを見張るためかな?どういう気持ちで私と接してたのかな?色々聞きたいな〜。」

二人は察したのだろう。私の記憶が戻っていることを。焦りを感じ初めているのか、冷や汗が止まらず、言葉が出てこないようだった。

「驚くよね。私の記憶が戻ってることに。やばいって思うよね。過去にあんな酷いことをしてた子が戻ってきたことに。そりゃそうだよね。だって二人は由香里ちゃんを死に追いやったんだから。」

二人は涙を浮かべ始めた。たったこれだけの告白でかなり追い詰められている。最後の復讐にしては拍子抜けもいいところだ。すると茜が口を開いた。

「由香。記憶が戻ってたんだね。全然気が付かなかったよ。戻ってるってことは昔のことも思い出したんだね。私たちを恨んでるっていうのはわかったよ。今謝ってもどうしようもないのはわかってる。けど聞いて欲しい。あの時は小学生で善悪の区別もつかなかった。だからいじめていいとはならないけど、今ならわかる。あんなこと人のすることじゃないって。だからって訳じゃないけど、たまたま私たちの引っ越した所に由香が引っ越してきて中学も同じになって同じクラスになって。正直最初は私たちを追いかけてここに来たのかと思った。けど、話しを聞いてみると事故の時の後遺症で小学校の記憶がなくなってるって聞いて、私たちは罪悪感に押しつぶされそうになった。由香里ちゃんの件で私たちも地元に居られなくなって引っ越すつらさは分かってた。それ以上の苦しみを由香が抱えてしまったことに罪の意識がさらに重くなったの。だから極力学校生活では関わらないようにしてたの。変に関わってしまうと記憶が戻ってまた苦しむと思った。でも、あの卒業の日、もう会えなくなると思うとどうしても話しをしないといけないと思ったの。だから誘ったの。その後の関係に嘘偽りはなかった。一緒に遊んだり、お泊まりしたのもすごく楽しかった。恋バナしたり、踏み込んだ話もしてすごく仲良くなれたと思う。ほんとに由香のことを好きになったの。だから許して欲しいとは言えない。そんな簡単に許されることじゃないのはわかってる。わがままだと思うけど、それでもわかって欲しい。こんなことやめて欲しい。」

長い演説だ。そうとしか思えなかった。結局のところ子供のしたことだから許してくれって言っているだけだと思う。たとえその後の私との関わりが本当だったとしても罪が消えることは無い。

「結局許して欲しいってことでしょ?二人を許しても由香里ちゃんは帰ってこない。それなら直接謝れば?その手伝いはしてあげられるよ。」

そういうとリュックの中から大きな袋を取りだした。芽衣がそれは何かと問いかけてきた。

「そ……それはなに?やたら大きなカバンだと思ってたけど……一体何が入ってるの?」

私はニヤリと笑って答えた。

「ねぇ、芽衣ってまだ玲央と付き合ってたよね?ちょっと今電話かけてみてよ。あ、手が塞がってるか。なら私が耳に当ててあげるね。」

芽衣のカバンからスマホを取り出して玲央に電話をかけた。耳に当ててからすぐに教室のどこかから着信音が響いた。

「え……どういうこと?なんでこの教室から聞こえるの?」

芽衣が周りを見渡した。茜もキョロキョロしていた。私はとぼけた感じで答えた。

「あ!いけないいけない。そういえば持ってきてたんだった!これじゃあ確認のしようがないよね!ごめんね忘れてて!まぁでもどこにあっても同じだったかもね!」

私は着信を続けたまま中学の頃の自分の席へ向かった。そこから取りだしたスマホを芽衣が見た途端、目を見開いて言った。

「それ!玲央のスマホ!なんでここにあるの!?由香が持ってるなんておかしいよ!教えてよ!」

そう聞かれたので素直に答えた。

「昨日玲央に会ったんだよね。一応デートって名目だったんだ。芽衣と別れたのかなと思ったんだけど、まだ付き合ってたみたいで驚いたよ〜。まぁ私にはそのつもり無かったし別によかったけどさ。それでその時にスマホ盗んできたんだよね。」

簡潔に答えた。芽衣は納得できていないのかさらに質問してきた。

「スマホ盗むってそんなことしたらすぐばれるよね?なんで私にも連絡来ないの?玲央は適当で女癖も悪いけど、私のことは大事にしてくれてたの!何かあったらどんな手段使っても連絡してくるし!何も連絡ないってことはできない状況ってことだよね?玲央に何かあったの?それなら許さないよ!」

玲央のことが大好きな芽衣はこんな状況でも私に怒ってきた。だからはっきりさせようと思う。

「私の記憶が戻ったっていうのはもうわかったよね?なら私の復讐の相手が二人だけなんてことはないってわかるよね?まぁそれも分からないほど動揺してるのはわかるけど、少しは頭使ってね?芽衣が私に怒る道理なんてどこにもないんだよ。」

そういうとさっきリュックから出した大きな袋を芽衣の膝の上に置いた。

「これは……なに?」

そう言われて私は袋の入口を下にして勢いよく上に引っ張りあげた。その後に教室に響き渡ったのは二人の悲鳴だった。

「きゃーーーー!!!!!!」

芽衣に渡したのは、切り落とした玲央の頭だった。

 その頃、私の知らないところで状況が大きく変化していた。警察が三人を殺した犯人は私だと断定して逮捕するために動いていたということだ。どうやら警察に確実な証拠が提出され、信ぴょう性のある証言をした人物がいたらしく、すぐに警察も動けたようだ。その事を知ったのはかなりあとのことになるが。

「三上さん!どうやらこの連続殺人の犯人は狩野由香みたいですね!三上さんの予想通りだったじゃないですか!タレコミによると今日別の事件を起こすために動いているって情報もあるみたいですし、すぐに捜査本部も設置されるみたいですよ!俺達も呼ばれてますし、すぐ行きましょう!」

すぐに三上と後輩は捜査本部に向かった。会議はすぐに終わり、情報を精査する時間も惜しいということですぐに次に事件が起きると予想されている三箇所に向かった。

「俺たちが受け持ったのは狩野由香が通っていた中学みたいですね。でも、こんな時間にいるとは思えないんですよね。三上さんはどう思いますか?」

三上は予想通りだと答えた。

「狩野由香の過去はもう知ってるだろ?そこから調べてわかったんだが、同じ中学に池田由香里をいじめて死に追いやったとされる生徒が転校してたらしい。偶然ではあったみたいだが、狩野由香が記憶をなくし、転校する原因を作った奴らが近くにいたんだ。もし記憶を取り戻したとしたら復讐したいという気持ちが出てくるだろう。それを実行するかしないかはその人間性によるが俺は前校長室で狩野由香に会った時、狂気的な感覚を覚えた。奴ならやりかねんと思ったな。だからこそ常に狩野由香の存在が俺の頭の中から外れなかった。この三箇所の情報で最も復讐の適しているのは学校だろうと判断したんだ。再会した場所でもあり、人の目に付きにくいという面もあるしな。まぁとにかく急ごう。」

本当にこの警察官は優秀だったと思う。たとえ私と直接会っていなくてもいずれたどり着いていたと思う。一番の敵は奴だったと思う。そんなことは知らない私は二人への復讐を始めようとしていた。

「この通り、もう玲央はこの世に存在しない。由香里もちゃんと文句は言えてるかもね。そろそろ二人も由香里に会わせてあげないとね。これで私も少しは落ち着けるかな。」

一息ついたところで道具を取り出した。二人は怯えて身体を震わせていた。布で口を塞ぎ、声を出せないようにした。私は長く苦しみを与えるためにある拷問について調べていた。二人にヘッドホンをつけ、取れないようにガムテープで頭のヘッドホンを固定した。そして私たちがカラオケでよく歌っていた曲を音量マックスで流した。二人は耳が痛いのか頭を振りヘッドホンを取ろうとしていたけど、ガチガチに固定していたから取れることはなかった。

「それ、拷問としてはかなりいいみたいだからあとで楽しみにしててね。て、もう私の声は聞こえてないか。次は痛みを与えていくからね。」

ペンチを取り出し、二人の後ろに周り指を持った。

「ネイルしてるね。こんな派手なの付けて学校なんて行って大丈夫なのかな?校則違反になったらいけないし、私が外してあげるね!」

聞こえていないのはわかっているけど、私は丁寧に話しかけた。二人は何をされるのか分からず、全く動けない身体を動かそうともがいていた。そんなことお構い無しに持っていた指を爪をペンチで挟み、思いっきり引っ張った。一回ではなかなか取れず、何度も何度も力いっぱい引っ張ってやっと一枚とることが出来た。すると芽衣激痛が襲い、身体全身に力が入っていた。口を縛っていて声としては小さかったけど、とても痛いんだろうなって言うのはわかった。涙が溢れ出てきていた。連続は可哀想だなと思ったので、次は茜の指を掴んだ。

「茜はネイルとかしないよね。けど、綺麗な爪。いつも手入れしてたし、清潔感あっていいなって思ってたんだよね。でも、手入れするの大変そうだし、その手間なくしてあげるね。」

そういうと爪をペンチで挟み、また力いっぱい引っ張った。茜の爪は柔らかいのかすぐに剥ぐことができた。もちろん大泣きして痛がっていた。あのクールな茜のこんな一面が見られるなんてと少し笑った。お互い一枚ずつ剥いだところで二人へ黒板に文字を書いて質問してみた。

「二人はほんとに自分が悪いと思ってたのかな?あの頃、二人の親に会ったけど、いじめられる方にも原因があるって言っててそれに賛同してたよね?多分あれが本音なんだろうなって思ったよ。今はどう思ってるのかな?芽衣から答えてね。」

そう書くと芽衣から話し始めた。

「あの……頃は……私は……ほんとに……悪くないって……思ってた。いじめられてたのも……死んだのも……由香里ちゃんが……全部悪いって……思ってた。けど……今は……そんなこと……思わない。全部……私たちが……悪かったって……思ってる。ほんとに……ごめんなさい。」

泣きながらか細い言葉で答えた。次に茜の方を向き、答えさせた。

「由香里ちゃんが事故でなくなったって聞いて……私のせいだって思った。パパとママは悪くないよって……言ってたけど、悪いのは私だって分かってた。でも、両親に心配をかけたくなくて……両親の指示に従ってた。本当はすごく謝りたかったの。ごめんね。由香。」

二人は懺悔の言葉を口にした。やはりどう聞いても子供の頃の話だから許して欲しいにしか聞こえない。もちろん小学生なんて間違いだらけだと思う。けど、私は思い出した。由香里ちゃんをいじめている時のあの三人の満足した顔。あれは子供だからと許されるようなことでは無い。明らかに楽しんでいた。そして由香里ちゃんが死んだ後も適当に謝ってきていたということを。結局のところこいつらの性根は腐っているのだと改めて思う。そう思い黒板に私の気持ちを書いた。

「そう。二人ともやっぱり自分は悪くないって気持ちがあるみたいだね。結局その程度の人間でしかないってことだね。もうこれ以上会話は必要ないね。もう終わりにしよう。」

そう書き終えて二人を見る。涙で顔はぐちゃぐちゃ。何を言っているか分からないけど、多分謝り続けている。そんなことどうでもいいと思い、また二人の後ろに向かい、再開しようとした時、外からパトカーの音が聞こえた。

「嘘でしょ!?なんでここがわかったの!ありえない!こんなに早くばれる訳がない!ここに来るなんて誰にも言わなかったのに!仕方ない!さっさと終わらせなきゃ!」

予定変更してバックからナイフを取り出した。早く終わらせるにはちょうどいいからだ。ナイフを構えて二人に近づく。

「じゃあね二人とも。もっと苦しめてやりたかったけど、警察が来た以上悠長なこと言ってられなくなったから。さっさと終わらすね。」

一呼吸置いてナイフを振りかざす。心臓の部分にしっかりさせるように勉強もしてきた。そこ目掛けてナイフを振りおろした。けど、刺さる直前で手が止まる。なぜか分からないが手が震えて力が上手く出なくなっていた。

「あれ?なんでだろ。おかしいな。いつも通りすればいいのに。なんか手に力が入らないや。なんでこんな時に。なら寝かせて全体重をかければ上から刺せば何とかなるかな。」

拘束している状態で椅子と一緒に寝かせた。二人は何も聞こえないせいで状況が全く理解できていなかった。そんな二人を構わず、跨り、ナイフを両手で持ち大きく振りかぶった。だが、やはり刺せなかった。自分でも分からない状態で身体が固まってしまっていた。すると後ろから人の足音が近づいてきて、教室の扉が思いっきり開かれた。

「動くな!狩野由香だな!ここはもう完全に包囲している!そのナイフを置いて投降しろ!」

警察はよほど私のことを危険視してきたのだろう。私は初めて拳銃を自分に向けられる形で見ることになった。銃口は私に真っ直ぐ向けられている。けど、なぜか恐怖はなかった。覚悟をしていたからだろう。いつかこんな状況になると想像はしていたから。私は咄嗟に芽衣の首元にナイフを突きつけた。

「高校生に銃を向けるなんて酷いですね!まだ未成年ですよ?まぁそれほど警察も私のこと危険だと思ってるんでしょうね!でも、撃っていいとは言われてないですよね?この日本でそう簡単に射殺命令でないだろうし!」

私の言ったことは事実だったのだろう。警察は引き金に指をかけることはしていない。これも黒川くんに警察事情を色々聞いていたおかげだろう。けど、もう逃げることはできない。この状況を打開できる策はもう私にはなかった。

「もうこれ以上罪を増やさない方がいい!君はまだ若い。更生する道はいくらでもある!君がなぜこんなことをしたのかもうわかっている!過去の復讐に囚われて人生を棒に振るなんて間違っている!君の思いがどれだけの事かは俺には図ることはできない!だが、これ以上進めば戻れなくなるぞ!」

警察は私を説得しようとしていた。けど、全く心に響くことは無かった。なぜならもう覚悟は決まっているからだ。そして復讐とはまた違う感情が私を突き動かしている。もう止まれないんだ。

「どれだけ説得しようと無駄だよ!言葉じゃ私を止まらないよ!そんな簡単な気持ちで今までやってきてないのわかるでしょ!」

どれだけ説得を試みてもダメだと悟ったのだろう。警察はなにやらイヤホンで話し始めた。すると、

「三上さん。これマジすか?いくらなんでもこの命令は……。」

コソコソ何かを話している。もう悠長なこと言ってられなさそうだった。止められないとわかっている。けど、何故だろう。芽衣も茜もいつものようにやることができない。そう足踏みをしていると警察側に変化があった。引き金に指をかけていたのだ。

「あれ?もしかして撃つつもり?そんな覚悟あんたらにあるの?日本の警察は人を撃ったことなんてほとんどない奴らばっかでしょ!撃つ覚悟がないのに銃なんか向けるな!」

手の震えを無視してナイフを振りかざした。振り下ろす途中で教室が震えるほど大きな音の銃声が響く。それを聞いたあと、私の手からナイフがこぼれ落ちる。手に力が入らず、じんわり暖かくなる。よく見るも腕を銃弾が貫通していたことに気づく。身体に激痛が走り、私は後ろに倒れ込む。けど、痛みはすぐ収まった。それ以上に私の心は安心に満ちていたのだ。なんでそんな気持ちが湧き上がってきたのかは分からないけど、これで私も終わりだろう。倒れた瞬間警察官が何人も教室に入ってきた。芽衣と茜の拘束を解き、私は動けないように拘束された。死なないように止血をされながら。ここで私の意識は遠のいて行った。


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