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今昔の果て  作者: ユーリ
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5話 葛藤

黒川くんの話を聞いたあと、一人寮に戻り考えていた。当時の私は理由があったとはいえ、親友を手にかけていたという事実を知ってしまった。私という人間は最初から心の中に怪物を飼っていたのだと知り、憤りを感じていた。なぜそんなことをしてしまったのか。それは……。

 転校生に親友の由香里ちゃんがいじめられていたのは私の責任だった。私に対して転校生が好意を持っていたにもかかわらず、頑なにそれを拒んで由香里ちゃんと一緒に居たから。私ではなく、由香里ちゃんが標的になってしまった。そのせいで小学生ながらに色々抱え込んでしまい、彼女は死にたいと思うまで追い詰められていた。それを私は必死で支えようとしていたけど、そもそもの原因である私が近くにいては解決などしなかった。結局最後は耐えられなくなり、彼女は私に求めてきた。死にたいと。そこからの話は黒川くんの憶測も入っていると言っていたが彼は正しいと思う。私はそれに応えたのだろう。一緒に死ぬという道を。けど、私は生きて彼女は死んだ。これ程悔しいことは無いだろう。だから私は記憶を無くすことにしたのだろう。故意ではないとはいえ、私の思う通りになったと思う。今ならわかる。そしてこの胸の高鳴り。私は小学生にして由香里ちゃんを心の底から大好きだったのだと。親友としてではなく、恋心という不純なもので。

 話を聞いて自分がなぜ記憶をなくしたのかなんとなくだがわかった。人というのは忘れたいものがあると都合よく忘れられるものなのだと。もう思い出すことは無いのかもしれない。けど、これだけは忘れてはいけない。私は大好きだった親友を殺してしまった。この罰はいつか受けるだろう。由香里ちゃんに恨まれてもしかたないと思う。私はその罰をちゃんと受け入れる。私はそう心に誓った。

 次の日、いつも通り学校に行き、授業を受け、普段通りに過ごした。友達と楽しい会話をしてどうにか気を紛らわせようとしたけど、なかなか上手くいかなかった。そんな状態の私を見てゆきなと優里は心配してくれた。

「由香大丈夫?なんか今日無理してるように見えるんだけど。なんかあったの?良ければ相談乗るよ!」

嬉しかった。けど、この事は彼女たちには相談できない。こんなこと話してしまったらもう友達で居られなくなるかもしれない。その事を考えると絶対に話したくないと思ってしまう。もしかしたら二人は受け入れてくれるかもしれない。そう思う自分もいたけど、そうなったとしてもぎくしゃくしてしまうとも思う。

「大丈夫だよ!最近寒くて朝起きられないんだよね!ずっと眠くて眠くて!」

そう気丈に振る舞うしか無かった。気を持ち直すために放課後に三人でカフェに行くことにした。そこで少しでも気晴らしをしたかった。昼休みになるとまた黒川くんが話しかけてきた。

「なんか疲れてるな。昨日の最後の話はあくまで僕の憶測だからそこまで深く考える必要は無いと思うよ。それに小学生がやった事なんて事故でも故意でも仕方の無いことだし。あ、ごめんちょっと無神経だったかな。」

本当に無神経だなと思った。最近頼りにしているし、話せる仲にはなってきたけど、たまに無神経な事を言うこの男はやはり好きにはなれないと思った。

「私も色々考えたよ。私のせいでって正直それしか思えなくなってきてて気持ちがいっぱいいっぱいになっちゃった。これからどうしていけばいいのか分からなくもなったよ。」

黒川くんはそれを聞いてさすがに申し訳なさそうになった。

「ごめんほんとに無神経だったね。君がそこまで思い詰めるとは思ってなかったよ。でも、過去のことを気にしすぎてもダメだと思うよ。時間は過ぎていくものだし、彼女だって君を恨んだりしていないよ。君の親友だろ。」

黒川くんは正しい。由香里ちゃんが恨んでるなんて思ってない。けど私が私を許せなかった。なんで由香里ちゃんが亡くなるような状況を受け入れてたのか。今の私なら絶対にありえない。まぁ昔の私と今の私もまた違う人間なのだろう。

「いいよ。黒川くんの言ってることは正しいと思う。確かに過去のことだし、これ以上考えても未来は変わらない。変わらないといけないのは今の私だと思う。無神経だけど、いいこと言うよね黒川くんって。」

そういうと黒川くんは顔を赤くした。この人はほんとに私に好意を持っているんだなと改めて思った。変わった人だな。

「色々調べてくれたし、休みの日に一緒に出かけるって約束してたから今度の休み一緒に出かけようか。」

顔がさらに赤くなり、あたふたし始めた。私も男の子と遊ぶのは初めてだけど、そこまでではなかった。小さな声で「よろしく」と聞こえた。

 週末の休みに向けて計画を立てようと思う。私からの提案だし、行きたいとこもあったから。そして他にも気にすることがあった。陸斗くんの取り巻き二人の事だ。学校には来ているようだけど、生徒からは無視をされ、教師にはあまり良くない扱いをされている。彼らには後ろ盾がもうないから手伝いや掃除を強制的に押し付けているようだ。まぁそれほどのことを彼らはしたのだから誰も庇う人は出てこない。

「そういえば聞いた?旧校舎で起きたあの二人の事件、犯人はまだ見つかってないんだけど、この学校の生徒の可能性が高いんだって!学校外の防犯カメラとかにも写ってなかったみたいだし、この学校から出てないって先生たちは考えてるみたいだよ!動画は削除されてて証拠も残ってないから探しようがないみたいだけど。」

ゆきなが噂を教えてくれた。と言っても私も黒川くんから聞いていた。証拠は残さないようにしたからこの学校全員の証言のみが証拠となっている。ただ、被り物もしてたし、身長や声も変えていたからどちらかと言うと男が犯人って噂が多かった。大体想定通りになった。

「早く犯人見つかるといいね。確かに二人の悪事を暴くことが世間にとってはいいことだとは思うけど、やったことはしっかり犯罪だからね。やった事の罪滅ぼしはした方がいいと思うし。」

胸が締め付けられる思いだった。私とは知らないとはいえ、私に対してこう思われてると思うと辛かった。いつか知られることになるのかもしれないと思うととても耐えられるか分からない。高校でできた友達でもかけがえのない人達だ。心の底からバレたくないと思った。

「もし犯人が友達や大切な人でも罪を償わせた方がいいと思う?」

咄嗟に出た言葉だった。聞くつもりなどなかったのにいつの間にか聞いていた。するとゆきなは、

「うーん、正直迷うとは思うよ。けどやっぱりダメなものはダメって言うと思う。それがその子のためにもなるし、見逃す方が不誠実に思えちゃうからね。でも、今回の事件に関してはそれで嫌いになることは無いと思うけどね!やり方はあれだけど、正しいことだって思うし!」

涙が出そうになった。私はもう取り返しのつかないことをしているけど、許してもらえたら嬉しいなと思った。そしてまた覚悟を決めることが出来た。

 学校は滞りなく終わり、週末の休みになった。今日は黒川くんとのお出かけだ。約束した時はそこまでだったけど、なんだかソワソワしてきた。私も緊張しているのだろうか。集合場所のカフェに向かう道すがら、心を落ち着かせながら向かった。

「あ、由香さんこっちこっち!」

約束の時間十五分前なのにもう来ていた。待たせるのも悪いので走って向かった。

「ごめんね。待たせちゃった?結構早く出たつもりだったんだけど。」

申し訳なさそうにしていると、

「大丈夫!僕がちょっと早く着いちゃっただけだからさ。なんか昨日の夜からソワソワしてあんまり寝れてないしね。早く目も冷めちゃったから早く着いちゃったんだよね。」

私と同じだった。でも、なんか恥ずかしかったから言わずにおいた。会話も一区切り終わったので、今日行く水族館に向かうことにした。私は男の子と遊んだことがないからどこに行けばいいのかよく分からなかった。ネットで調べて定番の場所ということで水族館に行くことにした。

「水族館か!いいね!小学校の遠足以来行ったことないから楽しみだな!」

なぜかテンションの高い黒川くんをみて緊張もほぐれてきた。若干空回りしている所は引いたけど、ちょっと楽しくなってきた。

「私も中学の時、両親と行ったきりなんだよね。友達と行くのは初めてかも。小学生までに行ったことはあるのかもしれないけど。」

黒川くんは嬉しそうに話した。

「なら今の由香さんと水族館に行った初めての友達は僕なんだね!なんか照れるね。」

ほんとに変わってる人だなと思う。私は特別可愛い訳でもないし、話が上手い訳でもない。こんな私を好んでくれるのだから変わっている。けど、悪い気はしなかった。

 水族館に着き、私たちは唖然とした。休みだからかもだけど、入場口は長蛇の列ができていた。確かにここは日本でもかなり有名な水族館で各地から観光客が来るとは聞いていけど、ここまでとは思っていなかった。

「これは入るまで時間かかりそうだね。僕もまさかここまでとは思ってなかったよ。」

もっと調べればよかったと後悔した。けど、黒川くんは嫌な顔一つせず付き合ってくれている。むしろ話せる時間が多くなったと笑いながら言ってくれた。変な人。

「やっと動き始めたね!これ中入れるのかな?パンパンで魚とか見れないかもしれないね!それはそれで面白いけどね!イルカショーは絶対みたいよね!」

何を話していいか分からない私に対して黒川くんがずっと話し続けてくれて助かった。そうこうしている間に入場することが出来た。ただ彼の言うとおり、満員電車状態で展示を見るのも一苦労だった。何ヶ所か展示を見てイルカショーの会場に向かった。なるべく前を取るために早めに向かうことにした。

「結構前の席取れたね!早めに来てて良かったよ。」

朝からバタバタしてて落ち着かなかったからようやく座って落ち着けることが出来てよかった。ショーが始まるまでまだ少しあるため黒川くんと話をしていると後ろがやけに賑やかになった。同じ歳くらいの子達が私達の二列後ろで楽しそうに会話しているのが聞こえてきた。なんとなく聞いていると聞き覚えのある声だと気づいた。嫌な予感がして黒川くんに後ろの話している子達を見てもらおうとお願いした。

「ねぇ、後ろで話してる女の子二人くらいの子達なんだけど、ちょっと顔だけみてもらえない?」

黒川くんは快く応じてくれた。後ろを振り返り、顔を確認したのか前を向き直して私に話しかけてきた。

「僕は見るのは初めてだけど、写真では見た事がある。多分由香さんもわかってるんだよね。君の予想通りだよ。」

息が苦しくなってきた。その二人の声はよく近くで聞いていた聞き覚えのある声。友達だと思って裏切られていたと知ってから考えないようにしていた存在。芽衣と茜の声だった。

「大丈夫?苦しそうだけど、見るのやめて別の場所に行く?さすがにわかった後で楽しめないよね。」

事情を知っている黒川くんは何とか私を落ち着かせようとしてきた。けどなかなか動悸が収まらない。バレないように身体を縮こめていた。けど、近かったせいでそう上手くもいかなかった。

「あれ?もしかして由香!?由香だよね!久しぶり!芽衣

だよ!こんな所で出会うなんて奇遇だね!」

バレてしまった。こうなると反応せざるおえない。ただもうショーが始まるので、手を振るだけで終わった。結局抜け出すことも出来ずに見ることにした。今抜け出すと変に思われるからだ。二人が気になって楽しんでみることはできなかった。

 ショーが終わり、お客さんが会場を出ていく中、芽衣と茜が近寄ってきた。

「由香!久しぶりだね!ここ最近連絡も無かったから心配してたんだよ?でもまさかこんな所で出会うとはね!今日はもしかしてデート?」

いつも通りに話す二人をみて心がモヤモヤする。前は楽しく遊べていたのに今そんな気分にはなれない。今までどんな気持ちで私と会っていたのか。二人の考えることがほんとに分からない。

「く、黒川くんはクラスメイトでお願いを聞いてもらう為に約束しててそれで今日遊んでるんだよね。」

私はテンパって余計なことを口にしてしまった。

「なーんだ、彼氏じゃないんだ!でも、男の子と遊ぶなんて由香も隅に置けないね!て、お願いって何聞いてもらったの?」

いつも通り自分中心で話す芽衣。それをじっくり聞いている茜。いつもの二人だ。前の私なら楽しく会話していただろう。けど今は無理だ。

「由香さんが熱で休みだった時、授業の内容の書き写しとか課題のプリントとか届ける約束しててそのお礼って事で今日一緒に出かけたんだ。どちらかと言うと僕が付き合ってもらってるって感じなんだけどね。」

黒川くんがすかさずフォローしてくれた。二人は納得したようで、質問してきた。

「黒川くんだっけ?君は由香の事好きなの?遊ぶつもりなら許さないよ。」

茜が黒川くんに聞いた。あまり恋愛に興味のない子なのに気になったようだ。

「……そうだね。まぁもう本人にも伝えてるしいいんだけど、僕は由香さんのこと好きだよ。遊びじゃなく本気でね。今回はお礼って事で由香さんに誘われたけど、本当は僕なら誘いたかったくらいだよ。」

真面目な顔で言った。先程から二人の事で頭がいっぱいだった私は急な事で顔が赤くなった。照れてるわけではない。多分。

「そうなんだね。遊びじゃないならいいんじゃないかな。由香は友達だから心配になったんだよね。この子男子に免疫なさそうだし。」

私の事を心配という茜。それにも驚いた。

「確かにね!私も由香を傷つけるようなことになったら許さないからね!」

続けて芽衣も黒川くんに釘を刺した。よく分からなくなった。二人のことが。黒川くんも少し動揺していたけど、変に思われないように平静を保っていた。

「裏切ることは無いから大丈夫。まぁ僕も人を好きになるのは初めてだし。」

この人はほんとに恥ずかしがらずにこういうことを言う。けど、二人を前にして動揺を隠せない私にはちょうどいい。落ち着いて話すことができそうだ。

「二人はほんとに仲がいいよね。高校違うのに一緒に水族館に来るなんて。」

二人はニコニコと仲良いアピールをしてくる。前までは微笑ましく見てたと思うけど、今は嫌悪でしか無かった。ここまで自分の気持ちが変わっているとは思っていなかった。少し話した後、邪魔しないようにと二人は別の場所に向かった。二人が見えなくなった後、私達は胸を撫で下ろした。

「びっくりしたね。まさかあの二人がいるとはね。こんな所で会うとか予想できないしな。」

驚きつつ、もう会わないために水族館を出ることにした。その後ショッピングモールに向かった。けど、お互い何か欲しいものがある訳でもないため、モールを一周してゲームセンターでクレーンゲームやレースゲームで遊び、興味は無いけど服屋に立ち寄り、のんびりぶらぶらしていた。お昼ご飯も食べて最後に向かいたい場所があると言い、ショッピングモールを出た。特に何も伝えていないけど、黒川くんは楽しそうについてきた。電車に乗り、向かったのは学校の近くにある廃工場だ。さすがに彼も驚いていた。

「えっと……ここはなにかな?学校の近くまで戻ったと思ったらこんな廃工場。ここって誰も近づかないことで有名なところだよね?確かここで経営者の家族が一家で自殺したとかだったよね?もしかして心霊スポットに興味あったの?」

私は心霊系の物は信じていなかった。見えないものを信じる必要なんてないからだ。ここに来た本当の理由を伝えることにした。

「ごめんね。ここに来たのは遊ぶためじゃない。ここでやりたいことがあったからなの。もちろん黒川くんとの約束を果たすためでもあったんだけど、君には伝えないといけないと思って今日ここに来たんだ。」

少し残念そうにしていた。それはそうだろう。彼はこの日を楽しみにしていたと言っていた。なのに私は別のことも考えていたのだから。ただ、楽しかった気持ちは伝えようと思っている。

「騙してたみたいでごめんね。でも、今日一緒に色々なところに行けて楽しかったよ?私多分男の子と休みの日に遊びに行くのって初めてだったと思う。昔どうだっかは分からないけど、初めてが黒川くんで良かったと思ってる。好きかどうかは分からないけど、君のことは良い友達だと思ってるよ。」

思っていることを全て伝えた。彼は理解した上で私と一緒にいることはわかっていたけど、本心を聞いてみたかった。

「楽しんでくれてたなら良かったよ。僕も女の子と遊ぶなんてしたことなくて何話していいか分からなかった。けど、由香さんとなら気楽に話せるってわかったんだよね。今日一日過ごしてやっぱり好きだなって思った。まだ付き合うとかそういうのは無理だってわかってる。だから全部一段落したらまた考えて欲しい。僕はいつまでも待つつもりだからね。」

ほんとにいい人だなと思った。こんな黒川くんだからこそ私も心を許せてるのだと思う。

「ありがとう。その気持ちが何よりも嬉しいよ。でも、君の言う通り今その気持ちに答えることは出来ないよ。私にはやるべきことがまだあるからね。かなり待たせると思うけど、それでもいいなら待ってて。」

そう伝えると黒川くんは頷いた。それから今回ここに来た理由とやることを伝えることにした。

「ここに来たのは、この場所を見ておきたかったのと黒川くんに伝えないといけないと思ったからだよ。私はずっと考えてた。詩織に酷いことをしたヤツらがなんでのうのうと生きてるの?社会的に終わらせることも出来ると思う。なんせ彼らはそこまでのことをしたし、その証拠だってあるからね。でもそれじゃ生ぬるいと思ってしまうの。自分がおかしいっていうのは自分が一番わかってる。でも止めることが出来ないんだよね。だから私はここで復讐をしようと思ってる。」

黒川くんは何も言わずに聞いてくれた。私の話が一段落したところで口を開いた。

「なるほどね。何となく予想はしてたけど、まさかほんとにそこまで考えてたなんてね。復讐っていうのは具体的に何をするつもりなの?正直聞かなくても予想できるけど、あまり当たって欲しくないことなんだよね。」

流石だなと思った。彼は勉強はそこそこなのにこういう推理はほんとによく当たる。警察に向いてると思う。だからこそ頼ってしまうというのもある。

「まぁ、黒川くんなら分かってるかなって思ってた。その予想通り、私は彼らをここで殺そうと思ってる。」

それだけ伝えた。けど、その言葉の中に私が伝えたいこと全てが入っている。黒川くんは青ざめた顔になったが、少し時間が経ち、落ち着きを取り戻してまた話し始めた。

「やっぱりそうだよね。君がそう言う人間だとわかってた。そんなことして欲しくない。けど、僕には止めることができないと思う。権利もない。悪い事だと僕もわかってる。警察官の息子として止めるべきでもあると思う。でも、やっぱり出来ない。」

俯きながら言った。止められるとは思っていなかったから話したんだけど。ここまで考えさせてしまうとは思っていなかった。まぁ、人を殺すと言っているのだから当たり前だろう。それでも止めるのが普通だとは思うけど。

「止めないんだね。そう言うと思って話したんだけどさ。でも、協力して欲しいとかそういう話しをするつもりは無いからね。ただ色々協力してもらったからここは話さないといけないなと思って話しただけ。君は私の全てを知る唯一の友達だからね。陸斗くんのことだってわかってると思ってるし。」

黒川くんは誰にも話さないと約束してくれた。今日はここで解散することにした。また学校でと挨拶をして黒川くんは帰っていった。私はこの廃工場を見て回った。しっかりと作戦をねるつもりだ。

 寮に戻り、寝る時間になったのでベットに寝転んだ。今日は色々あってかなり疲れたからかすぐに眠ってしまった。その夜、私は昔の夢を見た。今は忘れている昔の記憶。朝には忘れているだろうけど、これだけは覚えているだろう。「強く生きて。」その言葉は、記憶が無くなる前、事故が起きる直前に親友である由香里ちゃんが私に向けて言った言葉だという事を。もしかしたら私が生き残ったのは偶然ではなく、由香里ちゃんがそうなるようにしてくれたのかもしれない。そう思った。

 翌朝、目覚めると私は泣いていた。なんの夢を見ていたのかは思い出せない。けど、由香里ちゃんの顔が浮かんできた。そしてあの言葉。彼女は私を生かしてくれた。この命彼女の為に、そして私のために使うと心に強く誓った。

「由香里ちゃん。私はあなたの為に生きることにしたよ。けど、少しの間だけ、今の親友のためにこの命を使うことを許して欲しい。望まれてないかもしれないけど、私はあなたを死に追いやった奴らも許すつもりは無いからね。」

久しぶりに芽衣と茜に会ったからだろうか。こんな夢を見たのは初めてだった。やっぱりあの二人は由香里ちゃんと関係しているのだろうと思った。この調子で記憶が戻ってくれるといいなとも思う。私は私のやるべきことを考え、気持ちを新たにした。

 週明け、学校が始まりいつも通りの日常に戻った。勉強をして友達と遊んで楽しい日々を送った。ゆきなと優里ともいつも通り接することができている。でも、心は落ち着いていなかった。これからまたやることが多い。今回は一人でやる必要があるからだ。誰も巻き込むことは出来ない。

「そういえば、また警察が来てたっぽいよ?なんか陸斗くんの事件の事で進展があったみたい!さすがに内容までは分からなかったけどね。」

ゆきなはよく職員室に呼ばれているから情報が早い。学校によく漫画を持ってくるから没収されて呼び出されるって流れが週に何回かある。でも、そのおかげで私にも情報が入ってくる。ただこのタイミングでの警察の訪問は良くないと思った。陸斗くんの事件の犯人がこの学校の関係者だというとこまで絞れて入ると思う。この前の旧校舎での事件と繋がりがあることもわかっている。私にたどり着く事はないと思ってるけど、なるべく早く実行しようと決めた。早速行動に移すことにした。

「ねぇ、陸斗くんの取り巻きはちゃんと学校に来てる?」

その事は優里がよく知っていた。友達があの二人のクラスにいて逐一情報をくれるらしい。何をするにも噂になるから色々助かっている。

「ちゃんと来てるみたいだよ!けど、肩身が狭いのか二人で教室の端っこにいつもいるみたい。もうこの学校にあいつらの味方はいないみたいだね!まぁ自分らが悪いんだし、仕方ないよね!」

学校に来てると聞いて安心した。不登校とかになってると探すのも大変だし。所在がわかってた方が何かと助かる。

「やっぱり気になる?詩織はあいつらのせいで学校に来れなくなったんだもんね。一番仲が良かったの由香だし、二人のこと許せないよね。けど、あんな奴らのこと考えるだけ無駄だよ!現に今バチが当たってるわけだしね!これからもまともに生活していけないと思うよ!」

その通りだと思う。彼らは今悪い意味で学校中に注目を浴びている。更に噂が広まり、校外でも二人は厳しい目で見られている。それもこれも私のせいだけど。孤立させることが出来てやりやすくなったと思う。週末に実行に移そうと思う。それまでは学校生活を楽しもうと思う。この生活がいつまで出来るか分からないからだ。

「土曜日久しぶりに三人で出掛けない?ちょっと遠いけど、テーマパークのチケット三人分手に入れたんだよね!二人は予定大丈夫?」

ゆきなが週末の予定を立ててくれた。私と優里は二つ返事で了解した。絶対にそれまでに終わらすと心に誓った。

 学校も滞りなく終わり、金曜日になった。私は復讐を実行に移すために準備をしていた。二人の下駄箱をある手紙を置いた。手紙の内容を話すためにこの前下見をした廃工場に来るようにと言う手紙だ。二人は必ず来るとわかっていた。それだけ二人には重要な情報だったからだ。放課後のホームルームが終わり、指定した時間まで最終チェックをすることにした。あらかじめあることで教師に放課後二人が職員室に向かわせるように仕組んでおいたので時間までは来ないだろう。

「これができるのは一回限り。失敗はできない。もし上手くいかなくても絶対に成功させないと。準備は出来た。あとはあいつらが来るだけ。」

二人が来るのを待った。

 約束の時間に二人は廃工場に現れた。

「おい!来てやったぞ!さっさと出てこい!回りくどいやり方しやがって!」

怒鳴りながら入ってきた。怒るのも仕方ないだろう。こんな所に呼ばれて、イライラしないヤツらではないからね。それに手紙の内容からして早く会いたいとも思っているだろう。私が彼らに書いた手紙はこう書いた。

「君たちを陥れた奴を知っている。もし知りたければ指定した時間に廃工場に来い。そこで誰かを教えてやる。」

あえて上から目線で書いた。その方があいつらが来る確率が上がると思ったからだ。そしてノコノコとやってきた。入口から分かりやすいように向かう方向に矢印の書いた紙を貼っておいた。グチグチ言いながら二人はそれに従って歩き始めた。

「くそ!こんな無駄なことしやがって!さっさと教えればいいものを!こんな所どこで話しても同じだろーが!」

そう言いながらも矢印の方向に進んでいく。やっぱり馬鹿だな。そう思いつつ、進んでいくのを見ていると目的の場所に到達した。そこに着いた二人は目を見開いて驚いた。

「な、なんだこれ。この廃工場にこんなもんがあんのか。実際入ったの初めてだけど、これはやべーな。だから立ち入り禁止なのか。」

二人が驚くのも無理はない。そこにはまるで地球の中心まで続いているような丸い穴が空いているのだ。どういう理屈でできているのかは謎だけど、とにかく底が見えないほどの穴があった。穴の壁はツルツルで登ることも出来なさそうだし、ハシゴなどの登る部分も存在しない。なぜこんなものを作ったのか謎すぎる。でも、私にとっては好都合。こんなに使えるものはないと思う。二人がいい位置にたった時、私は穴を挟んで向かい側にこの前のうさぎの仮面と黒のカッパを着て登場した。

「やぁ、やっと来たね。待ってたよ。まんまと引っかかるなんてやっぱり君たちは馬鹿だね。前と同じようなシチュエーションなんだから気づきなよ。」

そうバカにする言葉をぶつけると二人はキレ始めた。

「てめぇ、あの手紙はてめぇだったのかよ!あれから俺らがどんだけ生きづらくなったか知ってるだろ!あんなことしやがって!責任取れよ!」

呆れて言葉も出なくなる。自分たちで招いたことなのにこちらのせいにされても困る。

「僕はただ事実を広めたにすぎないよ。別に君たちを陥れたかったわけではない。ただ事実を広めたかっただけなんだ。それで恨まれるのはお門違いってものだよ。」

笑いながら答えた。沸点の低い二人はブチ切れてこちらに向かってこようとした。

「今からそっちに行く!覚悟しろや!」

二人が動こうとした瞬間、作っていた仕掛けを発動させた。私が紐を引っ張ると丸太に紐を括り付けた物が振り子の法則を利用して飛び出してくる仕掛けだ。勢いよく二人の背後から丸太が落ちてきた。でも、音でバレたのかすぐに後ろに振り向かれてしまった。

「丸太が落ちてくる!やばい、避けろ!」

両サイドに避けたが、一人は当たり、一人は避けることが出来た。落ちた一人は大声で叫びながら大穴の底へ消えていった。

「助けてくれぇぇぇ……!」

下で何かに激突したような音が小さく聞こえた。やはりこの穴の深さは相当らしく、声を出すことは二度となかった。だが、もう一人は丸太に当たらず、避けきることが出来てしまった。

「嘘だろ……こんなん絶対死んだだろ……こんなこと許されるわけない……ただの殺人鬼じゃねーか」

穴の中を見ながら呆然としていた。その隙を狙って背後から背中を押すつもりで突進した。けど、何かを察したのか直前で振り向いてきた。

「ふざけんな!」

穴の縁で取っ組み合いになった。奴は何とか私を押さえることができたけど、あと半歩進めば穴に真っ逆さまという状況だ。私は力いっぱい奴を穴の方に押した。けど、男と女の力の差か徐々に押し返されてきた。

「お前見た目の割に力がよえーな!落ちるのはお前だ!」

何とか押そうとしたが、押し戻されてしまった。一旦距離を取ってどうしようか考えた。すると、奴は近くにあった鉄パイプを持って私に襲いかかってきた。

「これでもくらいやがれ!」

避けられないと思い、手で何とか防いだけど、打撃の衝撃でしゃがみこんでしまった。それを見た奴はすかさず何度も鉄パイプで叩いてきた。最後防ぎきれずに頭にまともに受けてしまい、意識を無くしそうになった。動けなくなっている私を見て奴は勝ち誇ったように話し始めた。

「陰湿なことしかできねーからよえーんだよ!まともにやって勝てないから回りくどいことしかできねぇ!典型的な雑魚だな!まぁもうこれで終わりだろ。あいつは死んじまったけど、俺のせいじゃないしな!せっかくだし、その面拝んでから警察に突き出してやるよ!」

奴はうずくまっている私の面を力いっぱい引き剥がした。そこで私が女であり、詩織の親友だったことに気づいた。

「おい、マジかよ。てっきり男だと思ってたわ。まさか狩野由香だったとはね。詩織の復讐でもしたかったんか?あいつは陸斗に自分からついてきたんだよ!そんなもん自己責任だろうが!彼女だったんだし、彼氏の言うことならなんでも聞くのが当たり前なんだよ!てか、もしかしてだけど、陸斗が死んだことにもお前が関係してんのか?だとしたらお前まじで殺人鬼だな。二人も殺したんだし、相当な罪になるだろうな。こんなことしても結局てめぇは不幸になるだけなんだよ!」

勝ち誇ったように笑みを浮かべ、笑いながら喋っていた。私は痛みを堪えつつ、その言葉を聞いて怒りを抑えられなくなっていた。そのおかげか身体中に力がみなぎってきて、一瞬だけ動くことができた。

「笑ってんじゃねーよ!」

奴に向かって思いっきりタックルした。今回は不意をつけたようで動けないと思っていた私がいきなり掴みかかってきた事でバランスを崩して後ろに勢いよく転んだ。そしてそこには大穴があった。

「う、うわぁぁぁぁ!嫌だぁぁぁ!死にたくねぇぇぇ!」

叫びながら落ちていき、鈍い音が響いた。間違いなく死んだだろう。目的を達成できたことで安心してしまったのか強ばってた身体から力が抜けて、意識がどんどん遠くなり、眠りについた。そこで私は昔の夢を見た。覚えていない記憶。失った記憶が夢の中で繰り返される。産まれてからの記憶が夢として溢れ出てきた。意識が戻ったの次の日の昼頃だった。

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