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今昔の果て  作者: ユーリ
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3話 昔の記憶

陸斗くんが学校に現れなくなって二ヶ月が経ち、白い息が出る程の寒さになっていた。最初は先生や警察が彼の捜索に当たっていたため、学校は常に騒がしい状態が続いていた。クラスメイトは心配していたが、私と黒川くんと里奈ちゃんは自業自得だと思っていた。でも二人は彼が居なくなった理由までは知らない。知っているのは私だけだ。ただ私も記憶が曖昧で何故こんなことになったのかはっきりとは分からなかった。彼がいなくなるまでの私はまるで私じゃなかったような気がしてならない。気弱で人付き合いの苦手な私は積極的に自分からなにかすることは無かったからだ。正直あれも夢だったんじゃないかと思えるくらいに。

「陸斗どこいったんだろうね。黒川が調べてるみたいだけど、所在が分からないみたいなんだよね。警察は下校中に突然いなくなったって言ってたみたい。ただ目撃者もいないから探すのも一苦労だってさ」

里奈は私にコソッと話しかけてきた。陸斗くんと詩織のことは警察にも伝えておらず、私たち三人だけの秘密となっているからだ。理由は簡単だ。詩織が疑われかねないと思ったからだ。

「クラスメイトということで詩織にも連絡言ってるみたいだけど、対応は私たちと変わらないみたいだね」

まぁクラスの一人がいなくなってるんだから当たり前だよねと思った。幸い二人が付き合っていたことは誰も話していないみたいだ。けどいつかばれるだろう。

 陸斗くんが居なくなったことは親にも伝えられた。心配なのか両親からいつもより連絡が来て少し大変だ。まぁそれはどこの家庭も同じみたいだけど。またかと思いメールを親に返していると黒川くんが二人で話したいと私を呼び出した。

「陸斗くんの事だけど、少し気になる情報が出てきたんだよね」

そう言えと真剣な顔で話を続けた。

「あの日彼はいつもの帰り道ではなく、違う道を帰っていた。それは話したと思うけど、彼の母親が病気で入院していて週一は一人で病院に向かっているって話したよね。この情報は僕が尾行して調べたから間違いないんだけど」

急に話を止めて少し黙り込んだ。そして数分の沈黙が終わり、何か覚悟を決めたのか私に質問してきた。

「この情報を知っているのは僕と石川さんと由香さんだけだよね。よくつるんでる取り巻きの奴らは知ってるみたいだけど、着いてくるなって言われてるみたいだから行かないと思う。石川さんはその日部活で陸斗くんより帰るのが遅かった。僕は情報を得るために父さんの所に行っていたんだ。つまりあの日彼の帰り道を知っていてなおかつ何か出来るとするなら由香さんだけなんだよね。もちろん他にもこの情報を知っている人はいたかもしれない。けどどうしてもその考えが抜けないんだ。由香さん、その日君はどこで何をしていた?」

長々と一人で話をして最後に私に質問してきた。まぁ消去法で私になるよねと思った。だから私は正直に答えた。

「普通に寮にいたよ。寮母さんに聞けばわかると思うし、それも警察が調べたでしょ。他の人のその日の行動も聞いていたし、私が疑われてないってことはそういうことだよ」

私はそう淡々と答えた。黒川くんの疑いが晴れたかは分からないけど、「わかった」と言って教室に戻って行った。疑われるとは思っていたが私にはちゃんとしたアリバイもあり、警察には疑われることは無かった。

 それからというもの黒川くんは私を避けるようになった。まぁ普段からよく話すわけでもなかったから前と変わりはなかった。里奈ちゃんとは少し話しやすくなったけど元々一緒にいるグループも違ったから前とそこまで変わらない関係に戻った。

「なんか最近色々あったよね〜。結局陸斗くんがどうなってるのかも教えてくれないし、勉強に集中出来ないよね」

ゆきなが頭を抱えていた。優里も集中出来ないと愚痴っていた。あれから詩織とはほとんど連絡を取れていないからそれも私たちにとって心配の種だった。今度三人でお見舞いに行こうかという話にもなっている。

「先生に住所聞いてプリントとか届けるついでに会いに行こうよ!」

夏休みから三ヶ月、詩織の顔を見ていないから寂しさが限界だった。二人部屋なのに一人で寝ている部屋をとても広く感じてしまう。入学してからの付き合いでそこまで長く一緒にいた訳では無いのにかけがえのない友達になっていた。だから今度会いに行く予定を三人で立てるつもりだ。

 それから二週間が経ち、詩織の両親に連絡をとって日曜日の今日に家に伺えることになった。友達ということで両親はぜひと心優しく迎えてくれた。詩織のことが心配で友達なら何とかしてくれるのではないかという期待もあるみたいだった。

「詩織?ゆきなだけど、起きてるかな?部屋から出たくなかったらそれでもいいんだけど久しぶりに四人でお話しない?私たち詩織のことが心配で会いに来たの!」

そうドア越しに話したけど、反応はなかった。三人で声をかけたけど話はしてくれなかった。中にいるのは間違いないみたいだけど、誰とも話したがらないそうだ。何度も話しかけて粘ってみたけど今日は出てきてくれなそうだ。私たちは諦めてまた来ることを伝えて帰ることにした。帰る時、詩織のいる部屋の窓に影が見えたような気がした。

「よっぽど嫌なことがあったんだろうね。あんなに明るかった詩織が全く反応しないなんて明らかにおかしいもん!」

二人は詩織が不登校になった事情を知らない。陸斗くんの件もあり、間違いなく二人の間に何かあったのだとは思っている。ばれるのも時間の問題かもしれない。

「警察はあれから何も教えてくれないけど、陸斗くんが居なくなったことと絶対関係あるよね!詩織の為にも私たちになにか出来ないかな?」

私だけが彼の行方を知っている。ただこれを話すわけにはいかない。詩織のため、友達のため、何より私のためにも。二人と別れたあと、自分の過去を知ろうと思い、今度実家に帰ることを両親に伝えた。

 私は小学校までの記憶がほとんどない。両親からは事故にあい、記憶が無くなったと聞いている。けど身体の不自由もないし、周りからそんな話を聞いたこともない。おかしいとは思っていた。疑問に思ったのは、中一になった時だった。両親は過保護なのか私のことを常に気にしていて学校のことや休日のこと、人間関係などどんな些細なことも気にしてきた。ただ私は基本誰かと関わることも無く、友達もいなかったためあまり話すこともなかった。

「由香ちゃんって中学に入って性格変わったよね?」

たまに家に電話がかかってくる。両親がいる時は基本その電話を取っていたけど、いない時は私が出た。その相手は私と同じ歳くらいの子だった。誰かは分からないけど、少し話しただけでそんな言葉を投げかけられた。当時はよく分からなかったけど、今思うと私のことを知っている子だったのだろうと思う。

 休みになり、実家に帰る日となった。帰って早々両親を呼び話し合いをしたいと言いました。両親は何かを察したのかすぐに応じてくれた。

「今日はわざわざ帰ってきたけど、なにか話があるのよね?」

ママとパパが真剣な顔をして席に着いた。私は何から聞けばいいのか考えてきたのに言葉がすぐに出てこなかった。

「最近あったことと何か関係ある?余程のことだからわざわざ帰ってきて話し合いたいって言ったんだよね。」

ママは何となく私が聞きたいことが分かっているようだ。だが自分から言いづらいのかなかなか本題に移れないでいた。これ以上長引くなも良くないと思い、直球で聞くことにした。

「私の記憶のことなんだけど。小学生までの記憶が無いのは事故のせいって言ってたけど、なんの事故だったの?正直他に理由があると思ってるから真実を教えて欲しい」

そう聞くと両親は黙り込んでしまった。少しの沈黙を果て、パパが口を開いた。

「やっぱり気になっていたか。まぁもう高校生だしな。気にならないわけないよな。分かった、これから全てを話す。それなりの覚悟を持って聞いてくれ」

真剣な表情でパパは話し始めた。

「確かに記憶に関しては事故が原因とは違うかもしれない。けど記憶を無くす原因はその後の事だった。小学生一年生の頃、由香は友達と下校中に交通事故にあったんだ。由香は一命を取り留めたんだが、友達は亡くなってしまったんだ。当時の由香には耐えられなかったのだろう。小さな頃から友達だった親友と呼べるほどの子を失った事実を知り、事故の後にそれを知った時点での記憶を無くしてしまったんだ。」

驚きのことばかりだった。私に親友がいたこと、交通事故はほんとにあり、そこで親友を失ったこと。全く覚えていない記憶だが胸の奥が苦しくなるのを感じた。

「でも私の周りで事故のことを話している人が居ないのはどういうこと?人が一人死んでるのに噂にもなってないっておかしいよね?」

そう私が質問するとママが、

「当時の由香は精神的に未熟だったし、心が壊れかけてたの。だから周りの人達はその事に触れないようにしようって約束してくれてたの。記憶を失った後もそれを守ってくれていたわ」

私の事を想っての嘘だと言うのだ。けど私はそれでも真実を知りたかった。親友のことと事故の詳細を聞くことにした。

「私の親友って誰だったの?正直小学生までの同級生ですら私の記憶にないんだよね。中学校には同じ小学校出身の子はいなかったのはなんで?それに一人亡くなった程の大事故でなんで私だけ助かったの?」

話を聞く度に疑問も増えてくる。そう聞くとパパが困った感じで話し始めた。

「事故の後俺たちは引っ越したんだ。本当の地元は違う場所だ。親戚のみんなにも話を合わせてもらっていたんだ。由香には新しい学校で楽しく過ごして欲しいと思ってたんだ。」

確かに昔を思い出すことは無かった。けど、私の性格が前と真逆になったせいで友達も出来ずに孤立していた。両親はそれに気づいていたけど、これも私だと見守っていたらしい。

「多分引っ越しをしなくて前の友達と同じ中学に行ってたとしても上手くいっていたとは思えないよ。けど、記憶がなくても友達がいたんなら私はそこに居たかった。」

正直な気持ちを両親に伝えた。二人は申し訳なさそうにしていた。思うところはあったが、私には聞きたいことが山ほどある。

「事故のことは?なんで私は後遺症もなく、普通に生活出来てるの?亡くなる程の事故だったんだよね?」

事故のことを聞くと両親は口を閉ざした。全部話すと言っていたのにと思ったけど、余程のことなのかとも思った。数分後ママが重い口を開いた。

「事故のことは正直私たちもはっきりわかっているわけじゃないの。原因は相手の車の居眠り運転だろうって言われてたんだけど、本人は違うって言ってたの。それでなぜこうなったのか聞いてみたら信じられない話をしてきて当時の私たちはそんな訳ないと聞きもしなかったのよね。」

それを聞いて私の今を考えた時、その運転手が何を見たのか想像がついたけど、あえて聞いてみることにした。

「その人は何を話したのか教えて」

最初は聞かない方がいいと言われたけど、何とか説得して聞くことが出来た。

「ほんとに私たちは信じてはいないのよ。今でもありえないと思ってる。だから話半分で聞いて欲しい。あの日由香が友達と帰ってた時、信号機のある交差点で赤信号に捕まったの。もちろん車の方は青だった。運転手が言うには交差点に侵入して由香たちの前を通ろうとした時、急に二人が飛び出して来たっていうの。それもただ飛び出してきただけじゃなくて由香が友達を後ろから押して自分も出てきたって」

なんとなく予想はできていた。ただ今の私にはその記憶がない分、衝撃的な話だった。そんなことするわけが無いと思ってはいても心の奥底でやっぱりなと思っている自分もいる。最近の自分の変化を見てきて絶対にありえないと言えない。

「由香大丈夫?実際にどうなのかは本当に分からないの。運転手も見間違いだったかも知らないとも言ってたし、ドライブレコーダーもなかったから事実は分からないの。だから気にする事はないわよ。友達が亡くなったのは悲しいけど、由香だって怪我をした被害者でもあるんだから。」

ママは励ましてくれたけど、真っ向から否定出来ないから何も言えなかった。するとパパが

「この話を聞きたいと思った理由は何かあるのかい?今の高校には由香の過去を知る人は居ないはずだけど、どうして気になったんだい?」

聞かれるとは思っていたけど、いざ聞かれると答えに困った。ほんとの事は言えないので誤魔化すことにした。

「記憶がないことも気になってたし、家に小学生までの記録が何も無いこともしってたんだよ。それで聞きに来たんだ」

事実と嘘を混ぜて答えた。両親は納得したように見えた。嘘をつくのは嫌だけど、ほんとの事なんて口が裂けても言えない。私の犯した罪。ばれる訳にはいかない。

 陸斗くんが居なくなった前日、彼は母親の見舞いに行くためいつもの帰り道とは違う病院に向かう道を一人で歩いていた。それを知っているのは、彼の取り巻きと私と黒川くんと由香ちゃんだけだと思う。学校が終わり、私は寮に一度戻った。寮母さんと挨拶をかわし、帰ったことを報告した。部屋に戻り、服を着替えて道具を準備し、裏口から外に出た。裏口から直で学校の外に出ることが出来るので他の生徒や先生に見つかることはない。部屋も勝手に他人が入ることもないからいるかどうかは寮母さんの確認だけで消灯の点呼の時以外は確認されることはない。裏口からでて病院へ行く道で私は陸斗くんを待った。人通りの少ない河川敷でたまにお年寄りが散歩してるくらいの道だ。大きな木の裏に隠れていると陸斗くんが鼻歌混じりでヘッドホンをしながら歩いてきた。周りに人がいないのを確認して気配を消し、陸斗くんの後ろを付いて歩いた。街路樹で死角ができる所までたどり着いた時、後ろから首めがけてナイフを振った。首の動脈を切り裂き、血が飛び散りそうになった所をタオルで塞いだ。道路や草むらに血が飛び散らないようにしたかった。彼は何が起こったのか分からないようで振り返った顔は目をまん丸にして驚きの表情をしていた。私は彼を抱えて木や草むらで囲まれた死角に引きずって連れていった。タオルを更に首に巻き、紐で括って血を完全に防いだ。簡単に死んで欲しくなかったから出血を防いで絶命するまでの時間を稼いだ。喉を切ったから上手く話せないけど彼に質問をしてみた。

「なんて詩織にあんなことしたの?好きだったんじゃないの?彼女なのに学校来れなくなるまでのことをして。答えれるなら答えて」

彼は息苦しそうに必死で呼吸をしながら、小さな声で答えた。

「ご……めんな……さい……」

泣きながら私の方を見てそういった。最低最悪のクズなのに最後はちゃんと改心するのかと思ったけど、そんな謝罪受け入れるわけもない。詩織にしたことはそんなことで許されることではない。詩織の代わりに制裁をくだせた事に少し喜びもあった。絶命するまでそれを見届けた。死に絶えたそれを見て心がスッとした。自分でも狂っているというのはわかったけど、友達を苦しめたやつを許すわけない。遺体は草むらに隠すように放置した。

 パパとママは知る必要は無い。これは私の問題だから。

「何か私たちに言いたいことある?」

ママにそうたずねられた。これ以上心配をかけたくなかったから大丈夫とだけ伝えた。事実過去を知れたことにほっとした。今の私と昔の私、真逆の存在がある二つの私がやっと一つになれたと思ったからだ。問題はあるだろうけど。多分聞かれたくないことだろうと思ったけど、二人の答えを聞きたかったから聞いてみた。

「パパとママはもしその時の私が事故の原因を起こしたって言うのが本当だとしたらどう思う?正直まだ思い出せてもないけど、それが本当だとしたら二人は私の事を疎ましく思っちゃう?」

こんなこと聞くのはダメだとは思った。けど、二人を大好きだからこそ聞いておきたかった。実際に起きた事故だし、証言もあるから全く気にしていないわけないと思ったから。

「正直なところよく分からないの。あなたとお友達はほんとに仲が良くてね。親友と呼べる存在だったと思う。よく遊んでたし、家に泊まりに来てたからね。だからありえないとは思ってるよ。でもそれが事実だとしてもなにか理由があったんじゃないかなと思うし、疎んだりはしないわよ」

ママは優しい表情でそう答えた。それを見て自然と涙がこぼれ落ちてきた。泣きじゃくる私を二人は優しく抱きしめてくれた。こんな試すような質問をした娘を嫌な顔せず抱きしめてくれる二人を心から感謝した。三人でひとしきり泣いたあとは一緒にご飯を食べて夜は一緒にゲームをして一緒に川の字になって寝た。前より家族仲が深まった気がする。いつもよりぐっすり寝れた気がする。そういえばママが芽衣と茜との事をやたら聞いてきたのは何かあったのだろうか。そこは少し気になっていた。

 朝になり、寮に戻る日になった。ママの朝ごはんを食べてパパと新聞の取り合いをし、いつも通りの朝の風景だ。

「しっかり食べていきなさいね。次いつ帰ってこれるか分からないしね。色々あるみたいだけど、しっかり学校も楽しみなさいね」

最近の学校での出来事は全生徒に広まっており、親の間でも広がっている。ただ、まだ行方不明とだけしか伝わって居ないから心配はしていない。

「次の試験が終わったらまた帰るつもりだからその時はよろしくね!」

私はいつも通りに接した。二人は安心したように送り出してくれた。駅まで送ると言われたけど、少し歩きたいと行って一人で家を出た。別の目的があったからだ。

 昨晩、二人が寝た後に自分のアルバムや小学校までの記録を探した。今まで見たことがなかったから正直ここには無いと思ったが、一箇所探してないところがあったからそこを探してみた。するとそこに私の名前が書いてあるダンボールを見つけた。

「あった。物置部屋の奥に隠してたんだな。そういえばここは危ないものがあるから近づくなって言われてたっけ。そういうことだったんだ。」

ダンボールを開けて中身を確認したところ、卒業アルバムや産まれてからの写真のアルバムがあった。見ても正直覚えてないから誰が誰かも分からなかった。私が知りたかったのは、亡くなった親友の事だ。写真を見て行ったところ、よく二人で映っている子がいて多分この子だろうなと思った。小学校のアルバムも二人で映っていることが多く、ほんとに仲が良かったのだというのが分かった。

「この子の家に行ってみよう。」

私はほんとの地元に向かうことにした。二時間ほどかかる場所ではあるけど、めんどくささより知りたさが勝ち行動に移そうと思えた。

 実家から出て駅に向かった。もちろん学校方面ではなく、ほんとの地元方面だ。二人には事実を伝えてもらったけどやっぱり自分の目で確かめたいという気持ちが出た。前までの陰気な私ならここまでの行動はしなかったと思うけど、芽衣や茜、詩織やゆきなや優里と出会ったからこそ前向きにもなれたし、過去を知る決心もついた。みんなに感謝しないとなと思った。

「疲れた〜。流石に電車乗り継いで二時間はきつかったな。」

昨晩は遅くまで両親とゲームをしていたので、ちょっと寝不足だった。もう少し寝てたら良かったなとちょっと後悔した。地元に着き、駅から出るとなかなかの田舎で驚いた。街の地図が駅前に張り出されていてコンビニやスーパーはあるものの小学校が一校で中学校や高校は電車で一時間のところにしかないほどの田舎だった。やはり記憶が戻ることはまだないけど、なんだか心がモヤモヤする。前ここにいたんだなと懐かしく思えた。

「えっと、住所は確かこの辺だよね。家が少ないから分かりやすいな。」

倉庫で私の前に住んでた家の住所と亡くなった親友の家の場所は分かっていた。親友の名前はまだ分かってはいないけど、実家の二軒隣りの家ということは分かった。

「ここだね。結構大きい一軒屋に住んでたんだな~。今は売家になってる。人が減り続けてるって聞いたけど、空き家多いな。」

ぽつぽつと人が住んでる家はあるがやはりかなりの田舎のようだ。これ以上減ると合併も有り得るだろうなと思った。家に入ることは出来ないから周りを見て記憶が戻らないか試してみたけど、特に何も変化はなかった。なんとなく見覚えがあるような気がするくらいだった。

「もう少しいたいけど、明日も学校だしもう一つの目的の場所に行こう。」

元実家を後に小学校の頃の親友の家に向かった。

「池田さんか。名前を聞けば少しは思いだせるかな。」

チャイムを押し、出てくるのを待った。インターホン越しに声が聞こえてきた。

「はい。どちら様?」

挨拶をしようとしたが、そういえばなんて言えばいいか考えておらず、あたふたしてしまった。少し間が空いてしまって気まづい空気がながれたとき、向こう側から質問が来た。

「あの〜もしかしてなんだけど、狩野さんのとこの由香ちゃん?」

そう聞かれて驚いた。三年も離れていたから小学生の頃に比べると身長も顔立ちもかなり違うと自分でも思う。気づかれるとは思っておらず、動揺しながら「はいそうです」と答えることしか出来なかった。その後少しの沈黙があり、玄関扉が開いた。家に入るとまずは亡くなった親友に線香をあげさせてもらった。「ありがとうね。」と一言だけもらい、居間に案内された。

「久しぶりね。三年ぶりくらいかしら。引っ越してから連絡をとってなかったから驚いたわよ。話があるんでしょ。とりあえず座りなさい。」

淡々と話すのを見て私のことをよく知っているように見えた。なにか思うところもあるんだろうけど、事情を知っているから入れてくれるのだなと思う。

「よく来てくれたわね。正直もう会うことはないと思ってたわ。ここに来たってことはある程度ご両親からは話しを聞いてるのかな?」

一見怖そうに見えたけど、話してみるとドライなだけだったみたいだ。久しぶりに会ったということで緊張もあるみたいだ。

「話しは親から聞いてます。小学校までの記憶が無い原因が事故で起きた出来事が原因だったこと。その関係でここから離れたところに引っ越したこと。そして私には親友がいたこと。」

昨日両親から聞いたことを話した。一通り話し終えると池田さんが質問してきた。

「それ以外のことは聞いてない?まぁ全部話す必要もないか。とりあえず聞きたいことがあるなら聞いて。話せることは話すから。」

意味深なことを言った気がするけど、聞きたいことは沢山あるので聞くことにした。

「最初に聞くべきだったんですが、娘さんのお名前を聞いてもいいですか?」

苗字はわかったけど、名前は結局知らなかった。写真はあったものの名前の入っているものはなかったからだ。

「やっぱりうちの娘の事は何も聞いていないみたいね。うちの事名前は由香里っていうの。由香ちゃんと仲が良くなったのは名前が似てるからって由香里はよく話してたわ。」

よくある話だなと思ったけど、なんだかしっくりきた。池田由香里。その名前を聞いた時、胸に痛みを感じた。

「由香里さん。まだ記憶は戻りませんが、名前を聞いた時胸が痛くなりました。私にとって大切な人だったのは色々話を聞いて分かりましたけど、他に何かあったんじゃないですか?上手く言えないんですが、ただの事故だとはやっぱり思えないんですよね。教えてください。私と由香里さんのことを。」

池田さんは少し悩んだけど、話し始めた。

「私が知っていることはそんなに多くないけど、話すわ。由香里はあまり社交的な性格じゃなかったからあまり友達がいなかったのよね。その事で私達も悩んでたんだけど、小学二年生の時、あなたと出会ってから色々変わってきたの。明るくて元気なあなたは友達も多くていつも周りが賑やかだったわね。そんなあなたが一人孤立していた由香里をクラスに馴染ませてくれたの。それからは毎日笑顔で学校に行くようになって私達も安心してた。よくお互いの家にお泊まりもしたし、家族ぐるみで仲良くしていたわ。覚えていないだろうけど、あなたは人を引き寄せる魅力があったと思うわ。」

昔の自分と今の自分が真逆すぎて少し羨ましさもあった。でも確かに中学を卒業してから友達も増えたし、親友と呼べる子もできた。無意識にでもその魅力が発揮されていたのかなと心の中で思った。色々あった楽しい思い出を池田さんは話してくれた。けど、事故が起きた小学六年生の話まで近づくと暗い話が出てきた。

「でも小学五年生になった時、一人の転校生が現れてからクラスの雰囲気が変わったわ。五年生のクラスもあなたと同じクラスになったんだけど、そこに転校生の男の子が来たの。家庭の事情で母親と二人でこっちに引っ越してきた子だったんだけど、ちょっと荒れた性格で転校早々問題を起こしていたわ。ガラスを割ったり、授業中に遊んだり、喧嘩もよくしてたわね。そこで目をつけられたのが由香里とあなただった。クラスの中心だったあなたの事を好きになった転校生は毎日アピールしてたそうよ。けどあなたは見向きもせずに由香里や友達と楽しく遊んでいたんだけど、それをよく思わなかった転校生は一番よく遊んでた由香里をターゲットに選んだ。そこからは陰でいじめを繰り返していたみたい。あの子はあなたや私達に心配をかけさせたくないと思ってずっと黙ってたのよ。私がそれに気づいたのは小学六年生になった頃だった。たまに教科書が破れていたのは見ていたけど、それは友達とふざけてた時にやっちゃったって言われててまぁそれくらいならよくあることだろうと思って聞いてたんだけど、明らかに遊びの範疇を超えていることが起きたの。」

そこからの話は小学生とは思えないいじめの内容だった。階段から押されたり、体操着をハサミで破かれたり、体育倉庫に閉じ込められたりなどさまざまだった。当時の私はそれに気づいて転校生の事を先生に抗議したようだけど、学校側は大事にはしたくないようであまり聞いてくれなかった。クラスメイトは巻き込まれないように由香里ちゃんを避けたり、仲間はずれにし始めたようだ。けど私はずっと彼女と一緒にいたらしい。

「六年生のほとんどをあなたと由香里は二人で過ごしてたみたいね。由香里が事故で亡くなったあとに担任が泣きながらその事を謝罪をしてきたわ。あの時は怒りを抑えるので精一杯だった。あんな学校に行かせるんじゃなかったと思ってる。けど、それでも毎日学校に行けたのはあなたがいたからだと思うわ。だから感謝してるの。」

私に感謝をしてくれて嬉しかった。記憶はないけど、誰を助けていたという過去があるだけで気持ちが昂った。その流れでもう一つ聞きたいことを質問した。

「あまり思い出したくはないと思いますけど、これだけは聞きたかったんです。由香里ちゃんをいじめていた男の子の名前を教えてください。」

そう聞くと池田さんは立ち上がり、物置部屋の方に向かった。少しすると卒業アルバムをもって戻ってきた。

「教えてあげるわ。あなたも知る権利があるしね。転校生の男の子とその周りでよくつるんでた女の子が二人いたみたい。他にもいたのかもしれないけど、クラスメイトが言うにはこの三人が主犯で間違いないそうよ。それがこの三人。」

池田さんはクラス写真を開き、その三人を指さした。その時、私は動揺した。なぜならある人達に似ていたからだ。名前を確認すると驚きのあまり脳が考えることをやめてしまった。

「この三人って・・・そんな・・・ありえない・・だって」

言葉にならなかった。池田さんの間違いだと信じたかった。そこからの記憶はほとんど思い出せない。気がついたら寮のベットに倒れ込んでいた。

 次の日、いつも通り学校を向かう。けど昨日のことがフラッシュバックされて思うように歩けない。やっと教室につき自分の席に座ったらすぐにゆきなが話しかけてきた。

「ねね、朝職員室寄ったんだけどなんか警察らしき人達が来てたんだよね!また何かあったのかな?」

最近は見回り程度で学校に来ることはあまり無かった警察がなんの用かなと思ったけど、理由はすぐにわかった。朝のホームルームでその話が出た。

「みんなに知らせなければいけないことがある。本当は内密にすると学校側は意見が一致したんだがいずれバレることだからと公表することになった。うちのクラスメイトである綾瀬陸斗くんの行方不明の件だが、今朝通学路とは外れた河川敷の草むらで遺体で発見されたらしい。何らかの事件に巻き込まれた可能性があるらしく、警察が今後また学校に出入りしたり、騒がしくなると思うがみんなはいつも通りの学校生活を送ってくれ。」

驚きのあまりみんな固まってしまった。ただの家出くらいにしか思ってなかったからだ。いつも通りにと言われてもなかなかできる状況にはなかった。ただ私と里奈と黒川くんは知っていたのと予想していた事で冷静でいられた。それと同時に黒川くんの視線は私を見ていて恐らく犯人は私なのだと思ったのだろう。ホームルームが終わり、一時限目の準備をしていると黒川くんが話しかけてきた。

「今日の放課後時間ある?ちょっと話したいんだけど。」

まぁそうだろうねと思い、特に断る理由もなかったから会う約束をした。そして里奈からも昼ごはんを一緒に食べようと誘われた。

「ゆきな達と食べる予定だったよね。ただ朝の事、聞きたくてさ。陸斗が見つかった所ってお母さんの病院に行く道よね?それって私達とちょっとしか知らなかったことよね。正直考えたくは無いけど、この知ってる人の中になにか知ってる人がいるんじゃないかな?まぁ他にも知ってる人はいるかもしれないけど。」

里奈が言いたいことはわかる。私でもその可能性を考えるだろう。多分なにか知ってる人ではなく、死に関わってる人がいることも何となく気づいてるだろうけど、なかなか言葉にできることでもない。

「確かにその可能性はあるけど、それは警察が調べることだから私達があまり深く関わらない方がいいと思うよ。けど、なにか警察に聞かれたら知ってることをちゃんと話した方がいいよ。変に疑われるのもめんどうだしね。」

少し不安そうだった里奈に大丈夫と言いながらこれからどうすればいいか教えた。実際に関係はないから大丈夫だろう。

 昼ご飯を食べ終わって午後の授業も滞りなく終わった。陸斗くんの訃報もまだ話題になりそうだけど、それと同時に昔の噂もどこからか広がっていったため、既に全校に広まっていた。授業に支障はなかったけど、どことなく集中出来てない雰囲気がずっと続いていた。放課後になり、黒川くんに普段使われない会議室に呼ばれていたから向かった。

「お待たせ、遅くなってごめんね。」

会議室に行くと黒川くんが先に来て待っていた。その顔は真剣で何となく何を話したいのか察することができる。

「急に呼び出してごめん。けど、朝の事でどうしても確認したいことがあってさ。陸斗くんが見つかった場所は母親の病院へ向かう道だったよね。それを知っていたのは俺と君と里奈さんと取り巻きの2人と父親だけだったんだ。もちろんどこかから情報が漏れていた可能性もあるけど、彼は地主の息子だからね。結構ガードは硬かったんだ。つまり殺せるとしたらこの情報を知ってる人間かもしくはたまたま同じタイミングであそこを通りかかった人間になる。ただあの道は人通りがほとんどない道だからたまたまっていうのはないと思う。だから俺は残り俺含め6人が容疑者候補になると思う。それでその日のアリバイを全員分調べたんだ。はっきり言うよ。君に関してのアリバイは信用にかけると思う。」

長々と話して最後に結論を出した。直接の言葉はなかったけど、私がやったと思っているのは分かった。これ以上誤魔化すのは難しい。少し鎌をかけてみた。

「信用してもらえないか。ならもし私が犯人だとしたらどうするつもり?犯人として警察に突き出す?それとも見逃してくれる?」

かけるつもりで直球に聞いてみた。私がやった証拠がある訳では無いからそこまで心配はなかった。

「別に通報するつもりは無いよ。実際彼はろくでもない奴だったわけだしね。ただ見てみたかったんだ。君がどんな反応をするのか。僕は君が好きだからね。」

突然だった。話の中に自然の混ぜた告白をされた。流石に予想してなくて戸惑ってしまった。前に私の事を好きだということは聞いていたがこのタイミングなんてありえないと思った。

「分かっててそんなこと言うんだ。彼と同じで私もろくでもない人間だよ。黒川くんが知ってるようにね。」

もう隠すのはやめた。黒川くんの捜査力は陸斗くんの動向を探るときにどれほどのものかよくわかった。彼が一番に気づくだろうと薄々思っていた。

「まぁどの道いつかは私がやったってばれると思うし、やったことを後悔はしてないから。詩織を泣かせたやつは許せないからね。」

黒川くんは少し黙り込んだが、事実を知っても私のことを好きだと言った。

「僕の気持ちは変わらないよ。誰かに言うつもりもないし、君のことを陥れることもしない。まずは僕の気持ちを知って欲しかった。」

そう答えると、また明日と挨拶して帰って行った。ほんとに変な人だなと思ったけど、とりあえずまだ捕まることはなさそうだと安心した。

 週末になり、私とゆきなと優里で詩織に会いに行くことになった。メールを送っていたけど、返信はなく、今どういう生活をしているか分からない状況だった。陸斗くんのことは保護者間の連絡で知っているかもしれない。早く学校に戻ってきて欲しいと思い、また会いに行くことにした。

「今日こそは会えるといいね!由香と優里もメールは送ってたんだよね?誰にも返信ないってやっぱり不安だね。」

不登校になったあと、また何度か三人で会いに行った。けど、一度も会えずにいた。詩織の両親とは何度も会って話しもしていたけど、部屋から出てくることはなかった。普段も部屋の前にご飯を持っていくだけで、外に出てくることはほとんどないみたいだった。ただ食べてはいるみたいだからそこは安心した。

「おはよう。また三人で来てくれたのね。とりあえず冷えるし入りなさい。」

随分とやつれている。もう四ヶ月も引きこもる娘の事を考えると大変なんだろう。理由もざっくりとしか伝えられてないみたいで心配が大きいと思う。けど私たちから理由を話すのも違う気がする。そこは詩織の家族の問題だと思うからだ。

「詩織はまだ出てきてくれませんか?伝えたいこともあります。これ以上彼女が悲しむことはないことを。今日私たちが連れ出します!」

そう宣言した。まだ半年くらいの関係ではあるけど、毎日楽しく生活していた。早く戻ってきて欲しいとずっと願っている。今日詩織に全てを話すつもりだ。私が犯した罪は伝えずに陸斗くんのことを伝えるつもりだ。

「全部話すの?詩織には辛い話になると思うんだけど。」

ゆきなと優里はどちらかと言うと反対のようだ。余計出てこない可能性もあると思ったからだろう。でも変に嘘をついたところでいつか分かること。早いか遅いかだけだと思う。

「大丈夫。私から話す。二人はお母さんと話してて。絶対に説得するから。」

そう話して私は一人で詩織がいる部屋へ向かった。何度も来ているが今日は少し緊張している。ただ早く詩織に会いたくて頑張ろうと思う。

「詩織?いる?由香だけど。今日はお話と報告があってきたの。返事は出来なくても大丈夫だから聞いててくれない?」

返事はなかったが少し物音がしたから聞いてはくれているようだった。私はそのまま話し続けた。

「詩織が学校に来なくなってもう四ヶ月も経っちゃったね。まだ出会って間もないけど、詩織がいない学校は寂しいよ。地味で暗い私に最初に声をかけてくれたのは詩織だったよね。まぁ同じ寮部屋だったってだけだったのかもだけど、私はそれでもすごく助かったの。知らない土地で初めての生活をするのにすごく不安でどうすればいいか分からなかった。人見知りで自分から話すことも出来なかったからね。そんな私に詩織は紳士に向き合ってくれて一緒に遊んだり、勉強したりしてくれたよね。本当に嬉しかった。私にとって詩織は一番の親友だよ。だから詩織が困ってたら一番に助けたかった。詩織にとって私はどんな存在だったのか分からないけど、これが私の気持ちだよ。これからはもっと私が詩織を守る。だから一緒に学校いこ?」

本音を全て伝えた。こんなこと普段言うタイプではなかったから少し恥ずかしかったけど、このままじゃだめだって事を伝えたくて必死になっていた。すると部屋の中から物音がして、鍵が開く音がした。

「入ってもいい?」

そう聞くと小さな声で「うん」と聞こえたから中に入った。四ヶ月ぶりの対面でやっと話せると安堵したが、詩織を見た私は衝撃を受けることになった。

 


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