ガブリエル
アンナ「何だいマノンか。どうしたこんな夜更けに...。」
マグノイヤー「先生。新しい契約者です。」
アンナ「ん〜?あらまぁ、可愛い子だね。お名前は?」
マグノイヤー「私と同じです。」
アンナ「同じとはややこしいね。子猫ちゃん、こっちへおいで。この家にいるうちは、マーリン。そう呼ぶからね。」
―――
真名をもらってすぐ、私はある魔術師の元へ預けられた。
その魔術師は、先生と呼ばれるマグノイヤーさんの師だそうだ。
祖先がエルフ族と人類との混血らしく、アンナ先生にもエルフ族の血が流れているそうだ。アンナ先生とは名前の1つであり、本人も数え切れない名前で呼ばれているらしい。
それ程長生きしているのだ。
―――
談話室にて
アンナ「しかし、お前が弟子とはねぇ..。」
マグノイヤー「弟子ではありません。魔術も術具の使用方法も教えるつもりはありませんよ。」
アンナ「でも同じ名前なんだろう?嫁入りかなんかか?」
マグノイヤー「違います!...マーリンは、買い取っただけでまだ使い道は決めてません。だから、先生に...」
アンナ「...この子について、まだ何も知らずに引き取ってきたのか。厄介な事をするもんだね、人類ってのは。」
マーリン「あの、マグノイヤー、さん...。」
アンナ「マノンでいいさ。その方が呼びやすいだろう。」
マーリン「マノンさん...。私は、その、どうすれば...。」
マノン「先生に従え。それだけだ。連絡が来たらまた迎えに来る。では先生、しばらくよろしくお願いします。」
アンナ「あぁ、こんな可愛い子の世話が出来るなんて長生きしてみるもんだね。マーリン、今日から暫くここがあんたの家だ。部屋もあるから、明日に備えてゆっくり休みなさいね。」
マーリン「はい。よろしくお願いします。」
それから、アンナ先生との生活が始まった。
先生は私に、自立する為の生活力や知識、毎日色んな事を話してくれた。
そして1ヶ月程たったある日、先生は私の「力」について教えてくれた。
アンナ「ん〜もうすぐだと思ったんだが...マーリン、まだ力は出ないのかい?」
マーリン「ち、力...ですか?」
アンナ「ほら、あんたも混血だろう。その片方の力だよ、猫族の。」
マーリン「すみません、まだ何も...そもそも、猫族の力ってどんなものなんですか?」
アンナ「風の力さ。代々猫の一族は風の力を遣い、私生活でも戦争でもその力は有利だったと言われているんだ。」
マーリン「知りませんでした...。私にそんな力があったら、マノンさんと契約はしてなかったかもしれません...。」
アンナ「それは違うよ、マーリン。一族の力は真名が付けられて初めて遣えるものなんだ。それに、使い方を知らなきゃ存在してても扱えない。マノンは、あんたを見込んで真名を付けた。あんたの一生を背負って生きると決めたんだよ。」
そう、その時に初めてマノンさんの気持ちに気付いた。先生に預けられて、マノンさんはしばらく会うことは無かった。なんで買ったのかも教えてはくれなかった。
私の一生を買い、私に生きる責任が生まれ、その重さを背負おうとしてくれていたんだ。
本当の理由は分からない。猫の一族の力が目的だとしても、今は私はマノンさんのものなんだ。
アンナ「...あら、やっと理解したみたいだね。マーリン、見てご覧。」
マーリン「これは...花びら?」
窓際に置いてあった花瓶に生けていた花の花弁が、私の周りをふわふわと舞っていた。これが、風の力...?
アンナ「まだほんの小さな力だが、目覚めたみたいだね。その無自覚の力、ちゃんと使いこなせるようにするのが私の仕事さ。」
その日から、先生は毎日、力の遣い方を指導してくれた。話に聞いていた、壮大な力では無かったが...。
アンナ「まぁ、これだけ力を使いこなせれば...あとはあんたの問題だよ。その力をどれだけ活かせるかは、マーリン、あんたが決めることだ。」
扉をノックする音...先生は深いため息をついた。
マーリン「あ、マノンさん。えっと、お久しぶりです...。」
マグノイヤー「あぁ。先生から力を身につけたと連絡があったので迎えに来た。」
マーリン「え、じゃあ...」
アンナ「なぁに、永遠の別れみたいな顔して。何かあったらいつでも来ていいんだ。あんたももう、立派な私の弟子だよ。...まだまだヒヨっ子のね。」
マーリン「先生...本当に、ありがとうございました。また、いつか。」
マグノイヤー「...行くぞ。先生、ありがとうございました。」
アンナ「はいよ。またいつでもおいで。」
先生の家を出て、私とマノンさんはある場所へ来ていた。
マーリン「ここは....もう、来られないと思ってました。」
マグノイヤー「私の職場だ。次の予定まで、数日はここに居る事になる。」
半年ぶりに、施設へ帰ってきた。1号の居る施設に。




