17号
1号が眠り、どの位経っただろうか。自分が施設に来て、約1年。色々な事を教わった。毎日起きては1号が息をしているか確認する。もう、目覚めないのだろうか。
そう思い、ルームチェアへ腰掛けた時だった。
部屋の扉が開き、職員達が私を引っ張り、強引に部屋の外へ出される。何が起きた?そのまま、お湯を張った大きな部屋で室へ体を洗われ、新しい服に着替えた。
あの質素な部屋とは違い、豪勢な柄の絨毯が敷かれた部屋へ連れていかれた。この感覚...。また私は、買われたのか...。
職員A「お待たせ致しました。17号お連れしました。カーテンを開いてもよろしいでしょうか。」
男「構わない。書類は?」
職員B「はい、お持ち致しました。記入については両者合意であると判断した場合のみ可能でございます。」
男「では、17号をここへ。」
無機質な会話が終わり、自分の前に閉じられていたカーテンがゆっくり開いた。その向こうには、ガラス板があり、反対側に男が座っていた。手前には椅子があり、施設の人に座るよう促された。
男「17号か...。今はそう呼ばれているのだな。名前はなんと言う?」
17号「...クロ、です...。」
教会や闇市で売買されていた時の通称だった。その名前を知ってるのは、商人や資産家位だ。
男「あのクロで間違いない様だな。して、真名はなんと言う?」
17号「無い...初めて付けられた名前がクロ...です。」
真名とは、その意味の通り真の名前の事だ。
普通は親なんかが付け、自分も自分の名前であると自覚し、隠して生きる。言霊という一種の呪いだそうだ。親でさえも、真名では呼ばない。それ程、真名には強い魂が宿るとされる。
男「真名が無いだと?それではクロという名にいずれ魂が宿るぞ。この意味が分かるだろう。お前はこのままで良いのか?」
17号「...分からない。あなたは、私を買いに来たんですよね?そのまま、買えばいい。好きにしてください。」
真名が無くても、買われる以外に生きる方法が無かった。いずれ、クロに魂が宿り、クロが真名になる。そうなれば、一生、奴隷としての自覚が芽生え、消えない呪いとなる。
男「好きに、か。ではそうさせてもらう。職員よ、今から私は17号に新たな名を言い渡す。本人が受け入れれば、同意と捉えて良いな?」
職員A「はい。合意であるとし、我々もそれを受理します。」
男「お前も本当にいいんだな?最後の確認だ。言霊という呪いを背負い、一生を私に捧げるという事だぞ?」
17号「...はい。」
男「では、名付けの儀を始める。我が名はミカエル・マグノイヤー。今から汝、ガブリエル・マグノイヤーへ命ず。我と契約し、一生を我に捧げることを誓うか?」
17号「...はい。ガブリエル・マグノイヤーとして、一生を捧げる事を誓います。」




