新しい生活
国内のみの仕事ではあったが、あの日、ホークランド邸での初仕事から、毎日のように魔術具を届け回る日々が続いた。
仕事が無い日は施設での読書でせかいの情報を集め、1号についての事やアンナ先生についての事、力の遣い方など色々な事を頭の中でグルグル駆け巡っていた。
そんなある日、マノンさんから書斎へ呼び出しがあった。
マノン「...最近は、良くやっている。取引先からの反応も良い。納品のペースも、今までで最高の効率の良さだろう。」
マーリン「ありがとうございます。」
マノン「ここ最近は、国内のある程度の気流の流れについても慣れてきたか?」
マーリン「まぁそうですね、少しの力で軌道修正できますから。この術具も自然と学んでいるかのように、無意識に気流が読めます。」
マノン「そこまで来れば丁度いい。実はそのグローブには、実体験したものをコピーし新たな代用品を生産できるような仕組みが組み込まれている。一時でいい。そのグローブを預からせてもらうぞ。」
マーリン「わかりました、つまり...私の気流を読む力を学習させていたんですね。」
マノン「その通りだ。まずは施設内での運用、後にデバッグした後で一般の業者でも取り扱えるように機能の整理だな。そうすれば、ある程度の鳥類魔獣であれば思う通りに運べるだろう。」
マノン「マーリン、よくやった。...あと、今夜話がある。夕飯の後、書斎まで来るように。」
まさか、自分の付けていたグローブにそんな機能があったとは...確かに指輪が多い気がしたんだけど、一つ一つに精密な情報が取り込まれてたんだな。
―20時、夕飯後の書斎―
マーリン「マノンさん、コーヒー入れますか?」
マノン「あぁ。」
マーリン「......。あの.....。」
マノン「....お前、私に慕っているようだが。いつまでこの時間が続くと思う?」
マーリン「どういう事ですか?」
マノン「私は人類だ。魔術は使えど、所詮術具に頼りきった魔法使いモドキに過ぎない。それは、寿命もそうだ。」
マーリン「...猫族の寿命は、人類よりも長いと聞きました。それが、どういう事かは分かっています。」
マノン「お前の名付けをし、お前の一生を買った。だが私の寿命の方が短いのだ。いくら魔術師といえど、不老不死の術は未だ生み出されてはない。」
マーリン「マノンさんは、私の事を心配してくれてるんですね。自分が居なくなったあとの事も踏まえて、今後の事を考えている。けど、私は自らの寿命が尽きるまでこの真名を忘れるつもりはありません。貴方の寿命が尽きても、私はマノンさんのものなのです。」
マノン「...どれだけ忠誠しているかはよく分かった。」
そう言うと、マノンさんは暫く考え込んでしまった。
そして...
マノン「先日、お前が初仕事したホークランド卿について話しておこう。」
マーリン「ホークランド卿ですか?たしか、奥様とのお子様がもう少しでお産まれになると...」
マノン「ホークランド卿はな、北の大地の権力者だ。北の大地の国境にはエルフの国の国境がある。北の地方は全て、国家の元にホークランド卿が自治しているのだ。」
マーリン「そう...だったんですね。そういえば、失礼かと思って言えませんでしたが、ホークランド卿自身ももしかして...」
マノン「あぁ、ホークランド卿は紛れもなくエルフの一族だ。だが、とても人類との共和を望む志高い方だ。北の自治を自ら申し出て、いざと言う時のために動けるようにエルフの国境を任されている。」
マーリン「はぁ...立派なお方なのですね。」
マノン「...先日、そのホークランド卿から伝達が来た。お前を、ホークランド卿従者に出来ないかとの伝令だ。」
マーリン「私が、?しかし、私はマノンさんの...」
マノン「契約は契約だ。お前の一生は私のものだ。...お前の一生をどう使うかも、私の自由だ。私がホークランド卿と契約すれば、マーリン、お前の人生を又貸しする事は可能なのだ。」
マーリン「そうなんですね...。私は、マノンさんの言うがまま、従います。」
マノン「...そうか。ではこのまま契約を進める。なぜ、この契約を結ぶのかはホークランド卿から説明があるだろう。来週末には荷物をまとめ、ホークランド邸へ向かうように。わかったな?」
マーリン「わかりました。」




