ep.9 権能の発現
やっとこさここまで来れた様な気がしなくもないです。読んでくれれば嬉しいな。
まさか元いた現実世界の『埼玉県立ロマン学園』の理事長。こいつがこのVRMMORPG【Sacred Agent ~Living area~】のラスボス! それも、杉本久楽々の父親だとは。
奴の掌の上で回っている宝石。それはよく見ると小さな心臓だ。
奴に会った瞬間。どういう仕組みか俺、楠郭公に杜鵑源、坂本璃々亜の心臓が抉られる様に飛び跳ねたのはあの元理事長。ラスボス杉本久楽々の父親が俺達の心臓を掌の上に持っている宝石に変えたからだ。
いや、仕組みなんて最初からない。奴はこのゲーム世界VRMMORPG【Sacred Agent ~Living area~】を創り上げた。チート能力なんて赤子の手を捻るよりも楽に朝飯前。
「……だから……何だ? 俺はここで終わる気は無いぞ!」
白状しよう。正直、俺はこの世界に来てから一度も退屈していない。それこそ『埼玉県立ロマン学園』が予定通りあったとして、そのIFストーリーがとんでもなく充実したハッピー青春ロマンに満ち足りていたとしても。
これ程までに十分すぎるスリリングな展開は送れなかったのは確かだ。それに……
「……杉本久楽々! 今の内に言っておく! 君に出会えた事で、俺は今こんなにもこのゲーム世界に没頭してる! 楽しくて仕方ないぜ♪」
「俺もだ……! これからどんどんここで強くなってやる! あのイケオジの鳩尾に正拳突きを喰らわせてやるぜ~」
「だから気にしないで……久楽々ちゃん! 私達はいつでもあなたの味方よ」
その時、俺達3人組(6人組)に不可思議な現象が起きた。
ここに来る前に久楽々が言っていた事を思い出す。圧倒的不利の状況に立たされた時、発動する勇気の証。その可能性の極み。
――【権能】の発現!――
一時的に俺達の『魂』はこの世界の『回路』に組み込まれてる。そこに主従関係の御恩と奉公が発生した。『因』と『縁』がそれぞれの『魂』を伝い、精神を震わせ、肉体である身体。五体に組み込まれていく……! 確かな【権能】の力が内なる『回路』――『魂』に接続したのを実感した。
それだけじゃない。『親』である俺達の『魂』の強化。それは『子』である仮想体にも受け継がれる。
元は『回路』に出力する為に強制転換された『魂』からの同期。
俺。楠郭公の『カッコー』。
杜鵑源の『ゲン』。
そして、坂本璃々亜の『リリー』。
3人それぞれの仮想体も姿形を変えていく。
御恩と奉公は元々日本の封建制社会。鎌倉、室町、江戸の所謂『幕府』と呼ばれた時代に征夷大将軍が直属の下級武士に土地を与え、その土地の安全を保障する代わりに、戦が始まれば命を賭して戦う。将軍が『親』であればそれに仕える御家人が『子』となるのだ。
『回路』に突如現れる【権能】の源。『因』と『縁』が俺達の関係を具現化した。
杜鵑源の『回路』――肉体と精神の中枢。
『魂』に3つの『因』――『身体能力(+5)』『術式・重力(D)』『リサイクル(D)』が組成。そこから『縁』によって開拓され、『因』の力は繋がる。
「ちょっと調子に乗り過ぎじゃないか? イケオジさんよ~♪」
仮想体『ゲン』の能力はそこから抽出される。類まれなる身体能力。そこから重力を利用した攻守の切り替え。一定時間その攻守の切り替えをノンストップで繰り返す再生能力。
それらを統合した結果。仮想体『ゲン』は巨大なバイクへと姿形を変えた。
直ぐにその上に跨る杜鵑源……!
「準備は良いか? 相棒!」
『モチのロンだぜ……相棒!』
主従関係を結んだ二人はバイクで駆け巡る。
坂本璃々亜の『回路』――肉体と精神の中枢。『魂』には2つの『因』――『精霊の加護(D)』『回復の雨(D)』が組成。そこから『縁』によって開拓され、『因』の力は繋がる。
「皆、回復と補助のサポートは任せて……!」
仮想体『リリー』の能力は攻撃に徹する杜鵑源&『ゲン』とは対照的だ。主にサポート役である坂本璃々亜の能力から受け継いで、四属性の加護と一定の範囲内に降り注ぐ雨粒に触れる事により傷を癒やす。
そこから統合されたのは『リリー』自身がこの戦闘範囲内の守護者になる事。
璃々亜がその大元であれば『リリー』はそれ等の術を巧みに操作する。
「私のサポート。その指揮は任せたわよ? 守護者『リリー』……!」
『承りました。主、あまり無理をなさらぬ様にしてくださいね』
主従関係の中の主従関係。
それが今、坂本璃々亜。仮想体『リリー』の間で構築された。
そして俺。楠郭公はと言うと……『回路』――肉体と精神の中枢。『魂』には1つの『因』が組成された。その名も……『統一者(A)』! 『因』は一つしかないので、『縁』による開拓は無いが自身に溢れる力が漲って来るのが分かった。
「奴がラスボスなんだろ? だったら……ここでゲームクリアだ!」
俺の仮想体『カッコー』の能力は実にシンプルだ。何せ俺の『魂』――『回路』には一つの『因』しか出現していない。『統一者(A)』のみ。そこから繰り出されるのは……『魂』の結合! つまり、俺と仮想体『カッコー』の合体。超変身である……!
「……何!? A級『統一者』だと? どうして新人のお前がその力に目覚めた?」
「今更、ビビっても遅いぜ? 白スーツのオッサン。ラスボスは俺が叩く!」
俺の組成された一つの『因』。『統一者(A)』に即座に反応した仮想体の『カッコー』。そこから統合されたのは『魂』の組成。
元々、『親』と『子』の主従関係にある2人は御恩と奉公により息もピッタリだ。
『主。準備は良いですか?』「いつでも……つーか早くしろ!」
俺の全身を覆う漆黒のゴツいスーツに変身した仮想体『カッコー』はそのまま俺と一体化する……!
「『統一完了……!』」
凄い……。仮想体の『カッコー』と高々変身して合体しただけなのに、全身が唸る様に力が漲ってくるのが分かる!
杜鵑源と『ゲン』はバイクで爆走!
坂本璃々亜と『リリー』はサポート役に徹している。
俺――楠郭公と『カッコー』は合体して超絶変身……!
だが、ここからだ。【権能】を発現するのはこれまでの過程を活かした『技』『術』『奥義』に目覚めなければ何の意味もない! 俺達は本能でそれを理解していた。
「……くっ! 小賢しい。だが、見事だ。さすが私の娘が選んだ新人だけある。恐るべき逸材である事は認めよう」
「私は……何もしていないわ。唯、あの子達が優秀なだけ。このゲームの事を何も知らなかったあなたとは違ってね」
「ほう? 言うじゃないか。久楽々。お前もやっと反抗期か? ならば少し昔話をしよう」
「昔話……?」
新たに見せる杉本久楽々の戸惑いの表情。彼女は何を恐れているのか?
「そうだ。お前が『埼玉県立ロマン学園』の第10期生として入学して……今に至るまでのこのゲーム。VRMMORPG【Sacred Agent ~Living area~】の回顧録」
「……!」
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