ep.20 【卯月】ラ・ウルティマ訓練場
色々ごちゃごちゃした展開・文章になっております。
因みに今更ですが、この章の『Pioneer era』とは、『開拓期』もしくは『開拓時代』の意味を差します。
「まあ……落ち着け。取り敢えず矛を収めろ。両者とも。言いたい事があるのは分かる。会計の債鬼愛にとって確かに彼等彼女等は経験値の浅い新人だ。そして、楠郭公に杜鵑源。更に杉本久楽々の双子の妹である坂本璃々亜。コイツ(=債鬼愛)は俺にぞっこんだから保護者として代わりに俺が謝罪する。すまない」
何だ何だ何だ? 会計の債鬼愛。この目の下にクマを作った毒舌女のどこが良いのか……宇宙の不思議である。
「それと……もう一つ。君達はこの『聖徒会』会計をちょっと舐めている。彼女、債鬼愛の【権能】の一つに『傀儡子』と呼ばれるものがある。それは彼女の十八番でね。気付いたら自身の仮想体を操られてたなんて事にもなりかねないから、気を付けた方が良い。学園中で彼女――債鬼愛は『傀儡子』だと恐れられているのをまだ耳にしていないみたいだから一応、釘は刺しておくぞ」
「まあ……そういう事デスよ。自分のその仮想体――青二才のちっこいお子様をボクの掌の上で踊らされたくなければ精々、警戒する事デスね。それが分かればとっととその仮想体どもを近所のファミレスにでも連れてって、お子様ランチでも注文して御機嫌取りに励むが良いのデス」
自身の慕う『聖徒会』会長様からの直伝の言葉に『うっとり』と『ドヤ顔』を足して二で割った何とも言えない表情をして、急に借りてきた猫みたいに大人しくなる『傀儡子』債鬼愛。毒舌だけは絶好調で、俺達の仮想体を散々イジメてくれた。あの野郎。こちとら保護者だぞ? こうなりゃ、近所のファミレスに連れてって本当にお子様ランチでも注文して御機嫌取りに励むボイコットデモ運動で抗議してやろうか?
『主。オレ、お子様ランチ食べたいな!』
『俺も俺も~主!』
『私も興味があります』
何か知らんがこいつ等楽しそう……怒りよりも食欲の方がパラメーター高いのか? そもそも奴。債鬼愛の言った言葉を理解してるのか? まあ、子供は子供らしく無邪気でいれば良い。このまま成長すれば平和が訪れる。
「その辺にしておけ。債鬼愛も新人相手に大人げないぞ。何より今は開拓時代。開拓期だ。仲間は多ければ多いほど良い。ここは俺達聖徒全員の最終防衛拠点。『埼玉県立ロマン学園』なんだからな。それともお前は後輩をイジメるのが趣味なのか? それは俺としても見損なったぞ?」
ビキビキビキ……パリ―ン! と、債鬼愛の中で何か大切なものが砕け散った。
恋する乙女は命が短いのか、勝手にOVERKILLしてる。正直、ざまぁ~♪ ……だが、ここで終わる程、債鬼愛の純潔ダイヤモンド恋愛物語は終点ではない様だ。
「……ま、まあ兄様がそう仰ってくれるのならば……ボクとしても、異存はないデスよ。今回ばかりは目を瞑りましょう。所で兄様、今日の放課後お暇デスか? お暇デスね? 園美駅ニュータウンで、出来たばかりの美味しい茶店があるんデスよ! そ、その……出来ればご一緒してくれれば――」
「悪いな債鬼。今日はこの新人三人組の指導で忙しくなる。またの機会にしてくれ」
「……キ―――――――!!!!!」
俺達が原因で債鬼愛玉砕。これでもか! と、ハンカチを噛んでいる。いとおかし……哀れ也。ちょっと悪い事してしまった。実際に手を汚したのは俺達じゃなく、誰も何もしてねーけど。
「ぷ……っくくく! これはこれはまた貴重な黒歴史が刻まれましたね? 債鬼愛殿。これで37回目。もう少しで40回になります。それにしても面白いネタの提供ありがとうございます。わたくしとしても、良い小説が書けると言うもの。これからも頑張ってくださいね……!」
軽くいじり倒したのは他でもない銀髪イケメンの平安貴族。藤原硝子だ。何かコイツ性格が債鬼愛とは違ってどす黒い。他人の不幸は蜜の味ってか? でも、それを容赦なく小説のネタにする辺り……さすがは『聖徒会』の書記なだけある。ある意味、コイツとは気が合いそうだ。心の底から仲良くなりたくないが。
「……さて、話が脱線してしまったな。取り敢えずここにいる皆は大切な仲間だ。故に『フレンド登録』して情報を共有してくれ。これは聖徒会長としての命令だ。絶対とは言わないが……一応この『埼玉県立ロマン学園』の聖徒代表としての意見だと思って、慎重に考えて欲しい。俺個人としては有意義な選択肢だと思うがな」
その言葉通り。俺達は皆、(一応)仲間として兄弟の盃を結んだ。それぞれが内心どう思ってるのか知らんが、表面上は『フレンド登録』完了した訳だ。
『埼玉県立ロマン学園』の聖徒達。その代表者。聖徒会長鐵能戸。しっかし、この男もこう言っちゃなんだが捉え所のないにーちゃんだな。鐵能戸……その通り名は『龍聖』。そしてそんな聖徒会長さんの仮想体は『クロノ』とか言う鐵能戸の気質を受け継いだ如何にも品行方正な身長190cmはある巨人だった。
具体的に言うと……黒い甲冑を身に纏った厳つい兵士。どこかの国家で常備軍の参謀か、新人の傭兵を指揮する鬼軍曹みたいな姿である。
因みに鐵能戸だけじゃなく『フレンド登録』して情報共有した後、分かった『聖徒会』の面子の仮想体は次の通りだ。杉本久楽々は『クラン』だと既に分かっていると思われるので除外。
聖徒会長鐵能戸――仮想体『クロノ』。さっきも言ったが、かなりの高身長。その厳つい兵士の様な姿に漆黒の甲冑が良く映える。歴戦の戦士を思わせる槍術の使い手。鐵能戸本人曰く、『親』である自分のレベルを上げてたらいつの間にかこの様な姿になり、『クロノ』の身長くらいある槍(その名を『ブラック・ソウル・ハスタ』)も出現したんだとか。
更にこの『クロノ』とか言う仮想体。今の所、喋る気配がない。元々無口なのだろうか?
てゆーか、格好良さで比べると……俺達新人三人組の仮想体とは月とスッポン。威圧感と言うか、マジ実力者の風格が漂っている。
まあ、俺達の仮想体『カッコー』『ゲン』『リリー』がまだ赤子同然だとして『親』である俺、杜鵑源、坂本璃々亜が頑張ればいずれはコイツみたいにカッコ良くなれる……そう言うもんなの?
お次は色々と厄介者。聖徒会会計を務める債鬼愛――仮想体『マナ』。洋風のドレスをその身に纏う金髪の美人さん。一目見た時思ったんだが……某海外の玩具メーカーの着せ替え人形にそっくりだ。しっかし、確か『親』の性質は『子』である仮想体にも受け継がれるんだよな? 云わばDNA……つまり遺伝子の様に。
それを考慮すると目の下にクマを作った生徒会会計債鬼愛には申し訳ないが、似ても似つかない。先程紹介した鐵能戸とその仮想体『クロノ』とは対照的に見て真逆の関係性だ。唯、ボン! キュ♪ ボン! のナイスバディではあるので見ていて損はない。
し・か・し……だ! コイツは『傀儡子』と呼ばれる【権能】を持った債鬼愛の仮想体。どこか腹黒いのではなかろうか? と、思わず勘繰ってしまう。
それとも債鬼愛を反面教師として賢く育っていたならば……女神として讃えよう。きっと信者が増える筈。もちろん、これは要らぬ憶測であり最初の信奉者は俺で決定。
何か長くなってしまったが、最後に銀髪イケメン平安貴族のクソッタ……つまり、何だかんだで憎めない男。聖徒会書記の藤原硝子行ってみよーか。俺が取説始めたんだし……野暮な事に。
聖徒会書記の藤原硝子――仮想体『ショウシ』。こちらもひと癖もふた癖もあるキャラだった。何か近未来SFのB級映画に出てくるロボットみたいな姿だ。
手には自動小銃のAK-47(カラシニコフ)に似た危ないモノを持ち、その背丈は175cm程。
……でも、何で近未来SFキャラにのめり込んでるのに装備品が現代の中東で愛される自動小銃に似ているのか? もっとこう……目からビームとか出してくれるんじゃないの?
『親』である藤原硝子の言伝によると……自分の書いているラノベ小説(この男、純文学にノンフィクション、ラノベ……何でもイケるんだとか)に出てくるお気に入りのキャラがその理想像のままに仮想体『ショウシ』として自然発生したとか何とか。
つまり、この『ショウシ』なる仮想体は近未来SFキャラの癖してレトロ銃をこよなく愛するある種のミリタリーオタク。その藤原硝子が書いた小説にそう言ったキャラ設定がプロットの段階で組み込まれてる。一体どんな小説なのか……一度拝読してみたいもんである。
因みに、ノンフィクションに登場するのが、債鬼愛なのだとか。あの女も苦労してると思うと人生ってホントに切ない。誰しもに平等に愛は注がれないけれど、誰しもに平等に不幸は拡散する。
さて、もうここまで来たからぶっちゃけるけど、コイツ等普通じゃない。
もう一度言うが、俺達はお互いのプロフィールを交換して(それぞれが目をギラつかせながら、メタ糞嫌々と、それも軽い鬱状態に悩まされる程投げやりのヤケクソモード半分で)、『フレンド登録』を完了した。
そしてここからが本題だ。あのラスボス。杉本時雨が何時来るのかは未だ不確定要素が多すぎて分からない。だが、奴が紳士ならば……少しは時間に猶予を与えてくれる筈。それまでに俺、杜鵑源、坂本璃々亜。特に自分も含めたこの三人は強くならなければどうにもならない。
「お互い『フレンド登録』して、仲間の一員になった事だしそろそろ今後の予定を教えてくれないか? 鐵能戸……聖徒会長さん」
「それはよく理解している。君達三人組。楠郭公、杜鵑源、坂本璃々亜にはこれからある場所へと案内する。より強くなる為に」
――ある場所? そうか、ここは『埼玉県立ロマン学園』ではあるが俺や杜鵑源の地元。埼玉県南部じゃない。あくまでも『ジュール・リオ・フィールド』……VRMMORPG【Sacred Agent ~Living area~】の中。そこに俺達はフルダイブしたんだ。俗に言う異世界転移。まさかまさかの非日常が日常に化けたんだ。
――今は、そうだな……言ってみれば開拓期だ。自分達を強く育てる為に。何よりもこの最終防衛拠点『埼玉県立ロマン学園』をもっと繁栄させる為の時代――
俺達の学生生活。青春時代がやっと始まったんだ。これで浮かれないバカはいない。
『オレ達も混ぜてくれよ~!』
『んだんだ~!』
『私も私も~♪』
俺、楠郭公と杜鵑源と坂本璃々亜の『バカ』を正統に受け継いだ仮想体如きがなんか騒いでいる。
まあ、良いか。俺や杜鵑源。杉本久楽々の双子の妹である坂本璃々亜にも絶対にこんな幼い頃があったんだ。それぞれの幼年期がこいつ等を見ていると自分に重なって見えた。少なくとも、俺――楠郭公にはね。
「君達、新人三人組……失礼。六人が手っ取り早く強くなる為にはとっておきの場所があるんだ。俺達『聖徒会』の面子も含めた『埼玉県立ロマン学園』の聖徒達は敬意を込めて、その場所をこう呼んでる」
それは弱肉強食の世界。それを体現すべく生まれた……『ラ・ウルティマ訓練場』――通称『訓練場』だ。
さて、お次は『ラ・ウルティマ訓練場』に関してです。お楽しみに!
もちろん、拝読して下さった皆様には感謝を! ブクマ登録してくれた方、ありがとうございます!




