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一度きりのクルセード(仮)  作者: くをん
第一章 ――Pioneer era――
18/23

ep.17 【卯月】至急聖徒会室に集まれ……!

お久しぶりです。お待たせしました。第一章の始まりです。

「結局は……現実世界の『埼玉県立ロマン学園』があったあの地。『とある生徒』の正体は杉本久楽々(すぎもとくらら)の自作自演。何で杉本(すぎもと)はそんな回りくどい事をしたのか? 俺にはサッパリだ」


 やはりか。脳筋マン。それでこそ杜鵑源(ほととぎすげん)だ。まあ、あの時気付けなかった俺も脳筋だけれど。


 桜も見事に開花して、もう少し経ったら散り行く季節。春の到来。4月――卯月の心地良い春風と太陽の光を浴びながら……俺。楠郭公(くすのきかっこう)杜鵑源(ほととぎすげん)は自分の分身である仮想体(アバター)。『カッコー』と『ゲン』を連れて、『ジュール・リオ・フィールド』の拠点である『埼玉県立ロマン学園』の校舎。その桜の樹木が並ぶ外の空気を堪能していた。

 そこはちょうど校舎と校庭の境にあるコンクリの歩道で、花見には最適な場所。気温は体感温度で20℃を少し下回る程のポカポカ陽気で、何だかのほほんとのん気に駄弁ってはいるが……この電脳世界にも春の温度を忠実に再現出来る事に少し複雑な気分でいた。


 まあ、自分の五体がそのままこのゲームの中に異世界転移出来る訳だしこれまで一連の経緯から、あの『機械仕掛けの神(デウスエクスマキナ)』――杉本久楽々(すぎもとくらら)なるホラー女の『魂』がこのゲーム。VRMMORPG【Sacred Agent ~Living area~】のサーバー内。マザーボードに憑りついている以上、今更四季がどうのこうのと喚きたてる気は更々ない。

 実際に俺達は現実世界から隔離され、このゲーム世界へと肉体がフルダイブしているのだ。摂氏マイナス50度か、プラス50度の異世界へとフルダイブしたなら頑張ってデモ行進して警官隊(ゲームスタッフ)と衝突するくらいはあるかもしれないが、四季の彩る日本の関東圏と温度差がほぼ無いこの親切設計には感謝して逆に頭が下がる思いである。


「いや、杉本(すぎもと)……久楽々(くらら)はまだ何かを隠している。このVRMMORPG【Sacred Agent ~Living area~】のゲーム世界に入る前。現実世界で彼女は言っていた。更地となった俺達の『埼玉県立ロマン学園』。その周囲、東西南北に学園の守護精霊である石碑が奉られている――とか何とか」


 東の『持国天』に風の精霊シルフ。

 西の『広目天』に土の精霊ノーム。

 南の『増長天』に火の精霊サラマンドラ。

 北の『多聞天』に水の精霊ウンディーネ。


「それって、俺達が今この『ジュール・リオ・フィールド』にいる四大属性王。物語の主軸。メインストーリーを動かす各エリアにいるボスの事じゃねえか……!」

「ああ、その通りだ。一体、久楽々(くらら)は何のつもりであの時俺にその事を吐いたのか知らねえが……こちとら聞いてしまったもんは仕方がない。後々久楽々(くらら)に直接お伺いする事にしよう」

『その方が良いぜ! 主。愛しの久楽々(くらら)ちゃんなら何時でも会えるんだしさ!』

『俺としても賛成だ。愛しの杉本久楽々(すぎもとくらら)なら、きっと何かまだ企んでいるんだろうしな』


 俺の仮想体(アバター)『カッコー』と杜鵑源(ほととぎすげん)仮想体(アバター)『ゲン』が何か余計な事をほざきやがった。俺はそいつ等をやや強引に脇で抱えて、そっと耳元に言い聞かす。


「愛しの……何だって?」

『『すみません。調子乗ってました』』


「……ぷっ! くくく! 仮想体(アバター)(いじ)られてやんの! ざまぁ~」

「片方の保護者はお前だろうがよ! (げん)。シッカリと教育しとけ。(しつけ)がなってない!」


 ――そう。杉本久楽々(すぎもとくらら)には何時でも会える。まあ、こちらから意図的に現実世界に行く事は不可能だとしても、彼女が意図すれば……このゲーム内へと移動する事は可能なのだ。


 今は『卯月』――4月の半ばを過ぎた春うららな平和ボケで五月病にでもなりそうな時節。俺が現実の『埼玉県立ロマン学園』へと初登校し、入学式へ参列すると思われた矢先。その校舎は更地になっていた。そこに現れたのが、杉本久楽々(すぎもとくらら)

 もうあの時から一週間以上が経過していた。


 あの日。杉本久楽々(すぎもとくらら)が実の父親。杉本時雨(すぎもとしぐれ)に連れ去られた時、俺――楠郭公(くすのきかっこう)以外の他の皆。杜鵑源(ほととぎすげん)坂本璃々亜(さかもとりりあ)、『情報屋』クアンが必死で止めようとしていたのにも関わらず……俺だけは動かなかった。なぜか? 理由は杉本久楽々(すぎもとくらら)のアイコンタクトで気付いた。


 杉本久楽々(すぎもとくらら)はこのVRMMORPG【Sacred Agent ~Living area~】の心臓部。『機械仕掛けの神(デウスエクスマキナ)』と『機械文明史(マキナ・ストーリー)』をその『魂』に寄生し秘めた唯一の存在。しかし、彼女は自分のここにある記憶と一体化する役割(ロール)を自ら望んではいなかった。


 そこで更に、その()()()()()――と言う所がネックだ。俺はそこからある一つの仮説を立てた。


 もしも、『屍人(ユウレイ)杉本久楽々(すぎもとくらら)の『魂』が杉本時雨(すぎもとしぐれ)の起業したゲーム会社『マギコス・キクロス』において、このVRMMORPG【Sacred Agent ~Living area~】の中を自分の欲求を満たす為だけに創り上げたとして……彼女の『魂』は元の肉体に戻り、重度の精神疾患である統合失調症は完治するのか?


 答えはNO(ノー)だ。なぜならそれは彼女、杉本久楽々(すぎもとくらら)が本当に望んでいた結末ではないからだ。久楽々(くらら)は何かを隠している。その秘めた『モノ』がこのゲーム世界。VRMMORPG【Sacred Agent ~Living area~】の中にある限り、俺達は全力で彼女。杉本久楽々(すぎもとくらら)を守らなければならない。そしてそれを紐解いて解放する。


 恐らくそれが、このゲームの真のエンディングに繋がると、俺は踏んだ。


 では、IF説その2。

 もし、その()()()()()杉本久楽々(すぎもとくらら)の父親が用意したゲーム会社『マギコス・キクロス』でVRMMORPG【Sacred Agent ~Living area~】の中を彼女が自分の好きな様に創作し、杉本久楽々(すぎもとくらら)の『魂』が元の肉体に戻って例の精神疾患すら治ったとしたら……このゲーム。VRMMORPG【Sacred Agent ~Living area~】はどうなるのか?


 あくまで仮説なので絶対とは言えないが、杉本久楽々(すぎもとくらら)の『魂』を母体として現実世界に厳重に管理、隠してあるサーバー内部。そのマザーボードに寄生していた彼女の『魂』が解放される事=それ即ち俺達プレイヤー全員の『魂』が強制離脱する事に他ならない。


 そう。このゲーム。VRMMORPG【Sacred Agent ~Living area~】はどの道、杉本久楽々(すぎもとくらら)の『魂』を母体として出来ているので、今挙げた二つの仮説のどちらを取ってみても、俺達プレイヤーが困る要素は無いのだ。寧ろ、困るのはあのラスボス。杉本時雨(すぎもとしぐれ)の方だ。


 杉本時雨(すぎもとしぐれ)は現実世界の『埼玉県立ロマン学園』の元理事長。しかも、ラノベやアニメ知識……所謂『オタク』を嫌悪していた。そんな頭の固い男が急造で拵えたゲーム会社『マギコス・キクロス』において、トップに立っている事自体がそもそもの誤りなのだ。まあ、今は聖なる(Sacred)使者(Agent)である実の娘。その『オタク』要素に詳しい杉本久楽々(すぎもとくらら)が『屍人(ユウレイ)』として、このどこかイカレタゲームの指揮権を持っているから良いものの……元学園の理事長がその現実に気付く事は何時になるのか?


 俺達プレイヤーはその時が来るまで……唯、ここで好きな事をして待てば良い。だが、一つだけ不安材料があった。それは杉本時雨(すぎもとしぐれ)が集めたゲーム事情に詳しい優秀なスタッフ達だ。


 杉本時雨(すぎもとしぐれ)にとって盲点だったさっきの仮説2つも、ゲームスタッフなら勘付くかもしれない。いや、絶対に勘付くだろう。何せ俺や杉本久楽々(すぎもとくらら)が気付いたくらいだから。所詮ゲーム素人がプロのゲームスタッフに敵わないのと同じ様に、外側(アウトサイド)から何らかの形で俺達の動きを封じに掛かるだろう。


 ――でも、こちらには『杉本久楽々(すぎもとくらら)』なる最後の切り札(ジョーカー)がある。


 けれど、それだけでは安心出来ない。懸念があるのも確かだ。


 杉本久楽々(すぎもとくらら)の『魂』が『機械仕掛けの神(デウスエクスマキナ)』の『頭脳(ブレーン)』となって干渉している。そして、そこから『機械仕掛けの神(デウスエクスマキナ)』が『意思』を持ち、逆に彼女の『魂』を取り込もうとしている……。


 杉本時雨(すぎもとしぐれ)久楽々(くらら)を連れ去ったあの日、このゲーム世界の創造神、『頭脳(ブレーン)』である久楽々(くらら)の肉体と精神を『機械仕掛けの神(デウスエクスマキナ)』がこの異世界ゲームの中。特に『機械文明史(マキナ・ストーリー)』とやらを餌にして引き止めようとしたのもそこにある様だ。唯、今はまだ久楽々(くらら)本人がその役割(ロール)を拒んでいる様だが、いつまでも安心は出来ない。


「まあ、なる様になるか!」


 そう言って俺はだらしなくアスファルトの上に寝転んだ。その時だ。


「あ~! やっと、見つけた! (げん)(くすのき)、それに仮想体(アバター)の『ゲン』と『カッコー』まで! ……ったく! あんた等どこにいるのかと思いきや、こんな桜並木の場所でBL展開してたのね?」

『『BL展開?』』――仮想体(アバター)の『カッコー』と『ゲン』は頭上に『?』が浮かんでいる。

「「してねーよ!」」


 俺、楠郭公(くすのきかっこう)杜鵑源(ほととぎすげん)完全(パーフェクト)に全力否定。

 こんな気持ちの良い日に気持ちの悪い事を言うな!


 そいつ――坂本璃々亜(さかもとりりあ)はキョトンとして俺達を眼鏡越しに見つめていた。

 俺達を急いで探してたのは本当らしく少し息を切らしながら、こんな事を宣う。


「今すぐ聖徒会室に来て!」

「へ? 何で?」

「急用なら学内放送に頼んだら良いのによ」


 あ~。な~る。その手があったか! と、俺と坂本璃々亜(さかもとりりあ)はポン♪ と手を叩く。

 偶に異様な程頭の働きが鋭い杜鵑源(ほととぎすげん)。いや、俺と坂本璃々亜(さかもとりりあ)の頭が悪いだけか?

「じゃなくって! 急用なんだけれど、校内の他の聖徒には聞かれたくない秘密の用事なのよ!」

「秘密の用事? あの聖徒会が?」

「聖徒会なんて最初から秘密だらけじゃねえ?」


 畳み掛ける様に俺と杜鵑源(ほととぎすげん)が言うとそこに思わぬクロスカウンターが坂本璃々亜(さかもとりりあ)の口から迸る!


杉本久楽々(すぎもとくらら)が帰って来たのよ……!」

真剣(マジ)!?」


 さすがにこれには参ったね。俺、楠郭公(くすのきかっこう)杜鵑源(ほととぎすげん)が春の日向ぼっこから完全覚醒して目覚めている最中にも、仮想体(アバター)の『カッコー』と『ゲン』はのん気なもんで、妙な質問をしてきた。


『『BL展開って何?』』

こんな稚拙な物語に絡んできてくれる人達に感謝です。

もちろんブクマ登録してくれた方、ありがとうございます……!

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