ep.13 幻惑の都
結構手こずりました。文章がド下手なのはご容赦ください。
「それと……ここからが大事なポイントとなります。先程、楠郭公様に『リリー』を経由して渡したこの街の入国許可証。『幻惑の都』への招待状ですが、それを与えられた者にはこの街の領主である私。坂本璃々亜の協力を得る事が出来ます」
丸眼鏡越しに可愛くウインク♪ 当然それは俺への合図だ。坂本璃々亜は楠郭公の味方。そのアイコンタクト。
次の瞬間。俺が持っていた木版印刷の手紙とやらはパリ~ン……♪ と、音を立てて消滅。まるでガラス細工の欠片がポリゴンの様に粒子となって消えていく。
「……協力? つまり、この『逆・鬼ごっこ』では楠郭公とやらの味方であり、私は……」
「もちろんあなたは敵です。具体的に言うと密入国者扱いとなります。私は『幻惑の都』の女領王。女帝なので、入国許可を与えた者にしか味方に付きません。なので楠郭公様の側に付きます」
【権能】『幻惑の都』はそう言う仕組みか。最初から俺と坂本璃々亜は有利に立ち、向こうの敵。杉本時雨に後れを取らせる。
更にこれはあくまで『逆・鬼ごっこ』。
単に戦闘して1対1、或いは2体1での勝負で決着をつかせるのが目的ではない。坂本璃々亜の仮想体。『幻惑の使者』である『リリー』を捕まえるのが目的だ。だとすれば、俺達にもラスボス――杉本時雨に勝つ事だって出来るかもしれない。
……いや、限りなく勝率は高くなった。ほぼ0%に近い状態から50%……5割増し。二分の一の確率へと変化したのだ。
それもこれも『幻惑の都』なる【権能】で俺を全力で補助してくれた坂本璃々亜のお陰だ。後は俺がどう立ち向かうかにこの勝負。命運は懸かっている。
もちろん奴。杉本時雨がどう俺に接触してくるかも問題の焦点。運命を左右する。
なるほど、奴との直接対決を避けて搦め手の『逆・鬼ごっこ』対決。
その鬼は坂本璃々亜の仮想体。『リリー』となる訳か。
中々ナイスな作戦だ。ラスボス、杉本時雨に勝てる要素が盛り込んである。
だからこそ尚更負ける訳にはいかないな。俺は気を引き締めた。
「……ふん! まあ、良いだろう。それで? 君の仮想体である『幻惑の使者』。『リリー』を捕まえたらどうなるんだ? 晴れてゲームクリアとなる訳だが……それだけじゃないんだろう?」
「……その通りです。私の仮想体。『幻惑の使者』である『リリー』を捕まえた方は元の状態に戻ります。『幻惑の都』から無事に脱出し、クリアボーナスとして1つだけ私の『因』を借り受ける事が出来ます。更にこのゲームでの敗者は『幻惑の都』で投獄されてしまいます」
投獄された敗者は――『笞』・『杖』・『徒』・『流』・『死』の五刑から罪状を告げられる。
『笞』は棍棒で数回叩かれる。
『杖』は鉄棍棒で数十回叩かれる。
『徒』は懲役刑を言い渡されて、その間ずっと牢獄の中で暮らす。
『流』は『幻惑の都』にある人工島にて配流。ありもしない幻を一生見る。
『死』は文字通り死刑。
クリアボーナスの『因』は2つの内1つ。『精霊の加護(D)』か『回復の雨(D)』のどちらかをレンタル出来るって訳か。……にしても、敗者の扱い酷いな。何もしてないのに牢獄行きって、ガチ冤罪じゃねーか!
『……あのーそろそろ宜しいでしょうか?』
すっかり放置プレイされていた『幻惑の使者』である『リリー』が思わず声を掛ける。それに待ったを放ったのは他でもない『親』の坂本璃々亜だ。
「最後に一つだけ。この『逆・鬼ごっこ』の競争者である楠郭公様と杉本時雨様はお互いにライバル関係なので、片方への妨害工作は当然アリです。但し、『幻惑の都』の女領主である私は楠郭公様側に付く事をお忘れなきように。……それではそろそろ始めましょうか」
『逆・鬼ごっこ』――レディ……ゴー!
まず最初に颯爽と動き出したのは、やはり『鬼』の『幻惑の使者』である『リリー』だった。この街を知り尽くしているのか、恐るべきスピードで建物の陰に身を潜めて駆け抜けていく……! このまま見失う訳にはいかない。どの位の規模なのか分からないが、『幻惑の都』は中からでは広さが分からない。
俺は『鬼』を追い掛けつつも早速、協力者の力を借りる事にした。特に回数制限も無い訳だしここは躊躇なく使わせて貰おう。
「璃々亜! 今、『鬼』はどの辺にいるのか正確に教えてくれ!」
「上空から俯瞰した辺りだと……ちょうど、時計塔の鐘がある場所。そこの梯子を上っています!」
「時計塔だな? 了解♪ 助かったぜ!」
……にしても俺は二つの違和感を覚える。一つは『鬼』(『幻惑の使者』であり、坂本璃々亜の仮想体『リリー』)の逃げる速さが異常な事と敵対者である奴――杉本時雨が動いていない事。
だが、その疑問はすぐに晴れた。
「ふむ。私としては坂本璃々亜の協力を得られないのは確かに痛手だな。だが……こうすればどうだろうか?」
跳躍。さすがはラスボス。そのままの位置で一歩も動かず垂直飛び。しかも、かなりの高さだ。
「あの野郎。俺への妨害よりもまずそっちを選んだか! 確かにあの高さなら街を一望でき――」
バチコーン……!
まさかの展開。俺の心配は杞憂に終わった。何せ、その最強の敵を坂本璃々亜が軽く片手で叩き落としたのだ。
「ぐっはぁ――!」
口から呻き声を上げた杉本時雨。ハエ叩きの要領で街の片隅にドンピシャで墜落する。ずど~ん♪
「この『逆・鬼ごっこ』が始まる前に申し上げた筈です。私は楠郭公様の側に付くと……もう、お忘れですか?」
モノホンの鬼だな。敵だけど杉本時雨にちょっと同情する。
まあ、何はともあれ助かった。暫く奴とは争わなくて済みそうだし。
ナイス♪ 璃々亜! 後は俺に任せとけ……!
正直、ラスボスがこんな簡単に(しかも片手で)叩かれる場面を拝めるとはな。璃々亜は俺達が小さくなった――って、言ってたけどそれは璃々亜自身が大きくなったのと変わりないんじゃないのかな? ……まあ、今はそんな事どうでも良い。
ラスボス。杉本時雨の事だろうからここから挽回してくるのは軽く予想出来るし、その可能性は十分すぎる程高い。まだ『逆・鬼ごっこ』は始まったばかり。油断大敵だ。
『鬼』の『リリー』の居場所は既に特定済み。ちょうど杉本時雨がぶっ飛ばされた地区から東の位置にある一際高い時計塔。巨大な鐘が目印となる教会の屋根に十字架が添えられている。
段々とこの街『幻惑の都』の輪郭が浮き彫りにされていく感覚を覚える。何でだろ? 慣れてきたからか?
『主、この街の地図を開いて下さい!』
「……へ? あ、ああ。分かった」
いつぞやの俺の仮想体『カッコー』が言っていたのを思い出す。
この世界の『神』の恩恵。
視界の右下に新情報が通知される。俺は掌を眼前に翳して軽く横にフリックする。
……てゆーか、マップ情報がいつの間にやら更新されていた。そうか、これはあくまでもVRMMORPG【Sacred Agent ~Living area~】の中だから、マップ情報は毎朝の天気予報みたいに流れる訳ね。
そのマップ情報一覧の中に『幻惑の都』なるものが存在した。今は俺の漆黒のスーツと化している仮想体『カッコー』が催促してせがんだのはこの地図か。
でも、これは坂本璃々亜の【権能】の一つ。『幻惑の都』なんだから本来はマップ情報として機能しないんじゃないのか……?
俺がそう疑問符を脳裏に浮かべていたのを読み取るかのように、この街を生み出した【権能】の主は解説してくれた。
「私の【権能】『幻惑の都』は私が実際に見た街や都市。あるいは農村などがそのままある一定の距離を保ってランダムに形成されています。その為、『回路』を通じてマッピングされていく訳ですね。ある種のバグ。言い方を変えれば裏ワザです。『回路』がこのゲーム内にあるものと認識して誤変換していく訳です」
随分と気が利くじゃねーか。それならそうと最初に言ってくれよ。
それは逆に言えば架空の都市なのにマップ情報が更新される……願ってもない機会。
「ん? 待てよ……だとすれば」
嫌な予感。それは実にシンプルな事だ。それと同時に敵である奴も同じくマップ情報が更新されるという事。だからこそ璃々亜は今までこの便利機能を黙ってたのか。奴が気付かない間、少しでも時間を稼ぐ為に。
随分と気が利くじゃねーか。出来れば俺だけに固定出来ないもんかね? 色々と弄ればもっとバグや裏ワザ、ちょっとした雑学・蘊蓄・豆知識も手に入るかもしれん。それだけに惜しい事をしたぜ♪
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