――★後編★――
塔の屋上。コア崩壊の光が夜空を割り、都市全体をアルバムのネガみたいに反転させた。私たちは吹き飛ばされながらも手を握ったまま。
T-00:00:30。時空管理者が立ちはだかる。ローブの内側は星屑が渦巻く異界。
管理者「観測者よ、リブートは人類の“やり直し”権だ。愛や後悔で停止など許されぬ」
私「失敗込みで人生でしょ! やり直しより“続き”が欲しいんだ!!」
私は胸ポケットのミニスピーカーを掲げる。即興ラップが炸裂。
♪恋は手動ブランコ 蹴り出せ未来へ
♪時を巻く鎖 ビートで断ち切れ
言霊ビートにコアの針が共振、逆回転が減速。
遼くん「いろは……俺も歌う!」
遼くんは静かな低音でコーラス。二人の声が都市を包み、住民の記憶の蓋をこじ開ける。昼間の笑顔、夕方の涙、全部が一瞬でフルカラー再生。
残り十秒、コアが砕け散り、光の雨。
時間停止――ではなく【前進】を選んだ世界が夜空に鳴る。リブート・シティは初めて“明日”へ進み始めた。
静寂の屋上、星灯りだけ。私は深呼吸。
私「遼くん、好き。百回以上、たぶん百一回目でやっと言えた」
遼くんは少し照れた笑顔で「知ってた」と囁く。
私「返事は?」
遼「今日を続ける相手が、いろはでよかった」
指先が触れた瞬間、遠くで朝焼けのファンファーレ。
〈実況〉「主人公選手、恋脳エンディング達成! 次のステージは──無限の“明日”!!」
ブランコの軋む音が風に混ざる。私は世界を漕ぎ出すみたいに足を蹴った。
――後編、完。
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そちらでは、本作と地続き――でも“何てことのない現代日本”を舞台にした 並行世界の日常ストーリー を連載中です。タイムリープやギアのきらめきはお休みして、コーヒーの湯気や電柱の影が主役になる、ほっこり&ゆるっと系。
気分転換にコタツでみかんをむくような感覚で読んでいただけたら嬉しいです。感想・レビューも大歓迎! 励みになります。