表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/3

――★前編★――

挿絵(By みてみん)

 午前七時、目覚ましがサイレンみたいに脳内を爆撃。浮環(うきわ)式メガシティ〈リブート・シティ〉では、毎日午後五時になると都市まるごと時間が巻き戻る――らしい。住民の大半は記憶まで巻き戻る。だけど私は例外。だから百回目の同じ金曜日を迎えた。


 私は夢見(ゆめみ)いろは。自称セルフ実況系女子高生、恋脳ハイテンション体質。リブートのたびに記憶だけ増量、学力もゴリゴリ上がってるのに「告白スキル」は0%据え置き。ターゲット……いや「お相手」は同級生の瀬川(せがわ)(りょう)くん。黒髪さらり、ピアノ鍵盤みたいな指、そして毎朝同じホームルームで「おはよ」と笑う。


 今日もリセット前恒例「放課後ラプソディ大作戦」を発動。だが、校門を出た瞬間に頭上の軌条(レール)型ホログラム時計が赤く点灯――〈システムリブートT-3:00:00〉。タイムリミット三時間で告白? 無理ゲー匂がプンプン。


 〈自意識実況チャンネルON〉

 〈実況〉「主人公選手、今日こそ恋を射止められるか!? 残機──∞(実質)!!」


 午後二時。桜型ドローンが花びらホログラムを散らすメインストリート。私は遼くんの真横を歩きながら「肩ポン→チラ見→会話へ接続」という必殺・恋の三段跳びをシミュレート。


 ――ポン。

 遼くん「ん? いろは、今何か言った?」

 私「い、いやっ、その、空の色キレイだねー!」(語彙蒸発(じょうはつ)


 時計はT-2:12:45。やばい。


 〈作戦A〉失敗→〈作戦B〉へ。〈B〉は「メッセアプリ符号(コード)ラップ告白」。けれど送信ボタンに指を置いた瞬間――スマホ画面に〈エリア内通信停止〉が点滅。リブート三十分前になると市全域で通信が凍結される仕様。


 私は屋上へ駆けた。校舎最上部の風は高層都市の下降気流で竜巻みたい。


 「遼くんが好きだぁぁぁぁ!!」


 叫んだ声はビル壁に跳ね返り、自分にブーメラン。誰にも届かない。空の下、ホログラムの秒読みが点滅を速める。


 T-00:00:30。街灯が一斉に逆流光を放ち、世界は薄桃(うすもも)色のシャッターで覆われる。私は手すりを強く掴む――「好き」が虚空に溶け、視界がホワイトアウト。次の瞬間、ベッドの上にリスタート。


 百一回目の金曜日、また始まり。


 でも今日は違う。リブートの直前、屋上の空に()色の裂け目が見えた。そこから歯車(ギア)みたいな巨大な瞳が私を覗いていた。もしあれが時間を巻く〈コア〉……? 破ればリブートを止め、遼くんへリアルな「好き」を届けられる。


 私は決めた。(つぎ)こそ、告白成功→世界停止→恋脳エンディング。

 〈実況〉「次回、主人公選手は時を超えるラブクラッシャーに変身!?」


 ――前編、終了。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ