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第七章 冬の告白

冬が来た。2025年12月24日、火曜日。クリスマスイブ

朝、窓を開けると、外は薄っすら雪が積もってて、白い息が空に溶けた。私の「最後の1年」は、もう8ヶ月目。あと4ヶ月しかない。時間が減るたび、胸の重さが少しずつ増してる。


最近、体調が本当に悪い。咳が止まらなくて、血が混じるのは日常になってきた。熱が出る日も多くて、学校を休む回数が増えた。病院で先生に「そろそろ入院した方がいい」って強く言われたけど、「もう少し待ってください」って頼んだ。1年しかないなら、最後まで母さんと、友達と、悠斗と一緒にいたい。ベッドの上じゃなくて、普通に笑ってたい。


でも、今日は特別だ。クリスマスだし、悠斗と会う約束をした。彩花が「クラスのみんなでクリスマスパーティーやろう!」って提案して、学校の近くの公園で集まることになった。私は行くか迷ったけど、1年しかないなら、こういう日も大事にしたい。悠斗に気持ちを伝えたいって、ずっと考えてたから。


母さんは今朝、「楽しんできてね。風邪引かないようにね」って笑って仕事に出かけてった。私は厚手のコートにマフラー、手袋を着けて、カバンにハンカチと薬を入れた。鏡を見て、顔色が悪いのに気づいて、チークとリップで隠した。笑顔も忘れずに。普通の高校生っぽく見えるかな。


夕方、公園に着いた。雪が少し降ってて、木々にイルミネーションが光ってた。彩花が「みさきー! 来た!」って駆け寄ってきて、私を抱きしめた。彼女はサンタ帽をかぶってて、いつも通り明るかった。私は「彩花、かわいいね」って笑った。


クラスの子たちが10人くらい集まってて、シートを広げてお菓子やジュースを並べてた。悠斗もいて、黒いコートに赤いマフラーを巻いてた。私と目が合うと、「お前、寒そうだな」って言ってきた。私は「うん、ちょっと。でも平気だよ」って笑った。彼が「無理すんなよ」って言うから、「ありがと」って返した。優しいな、いつも。


みんなでゲームしたり、写真撮ったりして、賑やかだった。私は彩花と一緒に雪だるまを作って、笑った。冷たい雪が手に染みて、でも楽しかった。普通の高校生みたいだ。1年しかない私には、全部が宝物だ。

夜になって、みんながイルミネーションを見に散歩に出かけた。私は少し疲れてて、シートに座って休んでた。すると、悠斗が戻ってきて、「お前、一人か?」って聞いてきた。


美咲「うん、ちょっと休んでる。悠斗くんは?」


悠斗「俺も疲れたから。隣いいか?」


美咲「うん、いいよ」


彼が私の隣に座って、二人で雪を見た。静かで、雪の音が聞こえるみたいだった。私は胸がドキドキしてて、勇気を出すタイミングを探してた。好きだよって、言いたい。1年しかないなら、悔いなく伝えたい。


美咲「ねえ、悠斗くん。クリスマス、好き?」


私が聞くと、彼が「まあな。静かでいいよな。お前は?」って返してきた。私は「うん、好き。特別な感じするよね」って言った。彼が「そうだな」って頷いて、空を見上げた。雪が彼の髪に積もってて、きれいだった。


その時、咳がこみ上げてきた。ゴホッ、ゴホッ。私は慌ててハンカチで口を押さえて、「ごめん、ちょっと喉が」って誤魔化した。でも、ハンカチに血が滲んでて、隠しきれなかった。悠斗が「大丈夫か?」って心配そうに聞いてきて、私は「うん、平気だよ」って笑った。でも、彼が私の手を見て、「血だろ」って言った。鋭い目で、心臓が止まりそうになった。


美咲「何でもないよ。鼻血かな」


私が嘘をつくと、彼が「隠すなよ。お前、ずっと変だ。病気なのか?」って言った。初めてはっきり聞いてきて、逃げられなかった。私は目を逸らして、「そんなんじゃないよ」って笑った。でも、声が震えてて、ダメだった。


悠斗「嘘つけよ。俺、気づいてるから。言えよ」


彼が低く言って、私の手を握ってきた。温かくて、涙がこぼれそうになった。私は黙って、彼の手を見つめた。言えないよ。1年しかないなんて、言ったら泣かれる。怜れまれる。でも、もう隠しきれなかった。


美咲「…悠斗くん、私、好きだよ」


私がそう言うと、彼がびっくりした顔で私を見た。私は笑って、「ずっと言いたかった。クリスマスだし、特別な日に伝えたくて。でも、全部は言えないんだ。ごめんね」って続けた。好きだよ、でもあと4ヶ月しかないなんて、言えなかった。


悠斗が一瞬黙って、私の手を強く握った。そして、「俺もだ。お前、好きだよ」って言った。低い声で、真剣な目で、胸が締め付けられた。私は「ほんと?」って聞き返して、彼が「うん。ずっと前から」って頷いた。涙がこぼれて、私は笑った。


美咲「ありがと。嬉しいよ」


私がそう言うと、彼が「泣くなよ」って言って、私の頭を軽く撫でた。温かくて、幸せだった。1年しかない私に、こんな瞬間があっていいんだ。好きって言えて、好きって言われて、夢みたいだ。


その後、みんなが戻ってきて、パーティーはお開きになった。帰り道、悠斗が私のペースに合わせて歩いてくれた。私は疲れてて、咳が少し出て、ハンカチで押さえた。彼が「気をつけろよ」って言うから、「うん、大丈夫」って笑った。でも、心の中はぐちゃぐちゃだった。好きだよって言えたけど、病気のこと、いつか言わなきゃいけない。隠し続けるのは、もう限界だ。


駅で別れる時、私が「ねえ、悠斗くん。これから、付き合おうね」って言うと、彼が「うん。いいよ」って笑った。初めてちゃんと笑うとこ見て、胸が温かくなった。私は「じゃあね」って手を振って、電車に乗った。窓から見える雪が、イルミネーションに映えてきれいだった。


家に帰って、ベッドに倒れ込んだ。体がだるくて、咳が止まらなかった。ハンカチに血が滲んでて、怖かった。でも、今日の幸せが大きすぎて、涙がこぼれた。私はノートを出して、日記に書いた。手が震えて、字が乱れてた。


『2025年12月24日。クリスマス。悠斗くんに好きって言った。彼も好きって言ってくれた。付き合うことになった。幸せすぎて、信じられない。咳がひどくて、血が出た。隠したけど、もうバレそう。1年しかない私に、こんな日があっていいのかな。好きだよ、悠斗くん。もっと一緒にいたい。怖いけど、頑張るよ』


ノートを閉じて、目を閉じた。胸が苦しくて、眠れなかった。でも、悠斗の笑顔が頭に浮かんで、温かかった。冬の告白、ずっと覚えてるよ。

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