とある雷雨の日
薬の研究もひと段落つき、魔法もある程度操れるようになった頃一つの事件が起きた。
「いやー、楽しい!!一瞬清潔手に入れてから生活が楽しくて仕方ない!!夢のふかふかベッドで熟睡のためにはあとは寝具を揃える必要あり。流石にベッドの用意は出来ないから街へ行くか?」
ベッド(全然ふかふかじゃ無いカチカチ)はあるが流石にそこで長い眠りに着くと絶対身体痛くなる。今は蔦を編んで作ったハンモックが臨時の寝床である。
ドンッ!!!
「五月蝿い!!何今の何かが勢いよく落ちるような音!!!ビックリしたじゃん!!」
確かに今は雷ゴロゴロの雷雨だが、そんな日に外を出歩く馬鹿は異世界とは言え居ないだろう。
「となると獣が落ちたのか?それともめちゃ近くに雷落ちたか?ま、獣なら肉の採取楽だし様子見様子見〜。」
食事の必要はないがするのは楽しいし充実感も味わえる。時々罠にかかってないかの確認だけで積極的に狩りに行く事はないためこう言う棚ぼたはありがたい。
「いやー、ここが崖の麓で良かったよー。棚ぼたラッキー。」
結界を解き近くを見回ると明らかに人型で人にしか見えない金髪の美青年が大量の出血と手足が明らかおかしい方に向いてる事から骨折しているのが見てとれた。
「食えないじゃん。雨の中放置で腐って魔物呼ぶのは面倒か。薬の実験結果も知れるし家の中で寝かせるか。顔見られちゃ困るし、神様から頂いたローブを使うかな。」
とりあえず青年に薬をぶっかけ、治りきらなかった所は回復魔法も掛け、傷を塞ぎ骨折を治すと僕は引きずりながら家の中に入れるとカッチカチベッドに寝かせる。
そしてかけてあったローブを羽織り、清潔化の魔法を使い青年の血や泥の汚れを落とす。
「それにしても美青年。どっかの王子様かと思うぐらいには美形。羨ましいー。僕なんてまだ子供だよ?」
この体格で2歳程の人間なら十分化け物並みの成長速度なのだが、転生してから少なくとも2年程度は経ってるのに変化がないためこう言う大人手前ぐらいの美青年を出されると羨ましくて仕方ない。
「老化耐性は成長を阻害する訳では無いらしいけど、それなら神様ボディの成長遅すぎない?爺さんの時間感覚狂ってるのかな?」
因みに僕がローブを羽織ってる理由は明らかに高貴な身分そうな身なりのこの美青年に顔を覚えられないようにするためだ。このローブは毎日感謝を込めて祈ってたらいつの間にか家の中にあった神様からの頂き物で、鑑定遮断と隠蔽と誤認の力が宿っているらしい。これにより僕の声と姿は森に住まう怪しい老婆という認識に書き換わるとの事。
「ま、起きたらそのままお帰り頂いて、薬の研究続けるか。この掛け薬の効果を人体で実証出来たし、やる気出てきちゃった。どうせこの家から離れたら2度と到達出来ないし、その辺放置でオッケー。」
僕は崖から落ちてきたのが獣でなかった事を残念に思いながらも台所で料理を始める。流石に寒空の下何もせずに放り出すのは社会不適合者の引きこもりの僕でも憚られたからだ。
僕だって最低限の良識は持ち合わせている。