魔法の改良
朝になり僕は炎と水魔法の訓練を続けながら外に出て、知識にある薬草等をどんどん採取して時空間魔法に放り込む。
「うーん、技名あった方が時空間魔法の保管先選択するのに楽だな。理屈は分からないし目次をつけるみたいなイメージで…。“アイテムボックス”を使う物入れに、“切断”を刃物代わりに使った時に出るゴミ入れに。よし、多分出来る。」
アイテムボックスは手元限定かつ自分にしか見えないし触れられない代わりに一画面10×10の格子状でスクロール表示可能でアイテム名も表示可能な保管先とイメージし、切断はそう言う便利機能が無い代わりに閉じる時の切断能力がずば抜けて高く手元以外でも発動可能な魔法のイメージで行使する。
「アイテムボックス。」
その宣言と共に目の前にイメージ通りの光景が広がる。
「よし、大成功だ!これなら薬草採取も楽々。切断の方は昨日のアレと同じだろうし確認しなくていいや。」
それから僕は嬉々として薬に使えるキノコや植物や小動物をこの危険な森の中で丸々1日採取し続けた。
翌日、日が再び上り異世界生活3日目を迎え採取した薬草などから知識にある薬の製法に従って製作し始めた。
「清潔維持のスキルが行使出来るまでの万一の保険としての薬の研究も楽しいかも!」
混ぜたり絞ったり色々な処理を行うがどの薬も何故か液状に辿り着き内服薬という共通点まであるのが本当に面白い。
「味見してみたけど味最悪だし、バシャってかかるタイプの薬作れたら良さそうだなぁ。魔法の訓練に家具製作、薬の研究とやることずくめなのに前世より全然面白い!!やっぱ、この苦労の先に待つ長い長い眠りがたのしみ過ぎるからかな。前世では労働があったから月単位で寝れたのは学生の時だけだったし、異世界生活意外といいかも?でも、この3日間飲まず食わず寝ずで作業出来てるこの体質にも驚きだよ。神様製だからかな?飢えや渇きは感じないけど、食べれるなら食べたいし飲みたいし今直ぐ寝たい。昨日の薬草採取の際に分かったけど、水場までは結構距離あるし水魔法習得は最優先か。飲む必要なくても薬の研究で普通に使うし。」
色々自力で出来ると考えると本当に便利だな異世界。明日は魔物を狩ってご飯にしよう。食べられるのかな?いや、その前にあの神様の像でも作って拝んでおくか。一応神様らしいし、信仰の力がいるだろう。怠惰で異世界に飛ばされた事は許さないがこんなにも面白いのだからそれのお礼をしてもバチは当たらないだろう。
「そうと決まれば、木は腐食するし石像にするか。腐食防止の塗料とか無いしね。」
思い立ったら即行動で適当に岩を切り出すと、切断を使いひたすら削る。頭の中には実際に会った爺さんの姿があるのでイメージは容易い。
「細かい場所の作り込みは難しいな。大地魔法を使って少しずつ修正しながら…。」
3日程作業を続け、爺さんの石像を完成させる。
「折角なら祈る場所も作るか。」
これまた雑に切断で横穴を開け一段高い所に石像を設置し、大地魔法を使い地面と接着する。
「凄いサクサク掘れるし進むのいいな。部屋が数時間もしないうちに完成。魔法って楽。」
魔法の素晴らしさを噛み締めながら、今練習中の水魔法がこれ程までに使えるようになった時を想像し思わず口元が緩む。
「清潔一瞬、夢みたい…。」
僕の脳内には一瞬で汚れを落とし、フッカフカのベッドにダイブする未来の自分の姿があった。
「ふふ、そのために練習、ひたすら練習。レベル1なのが本当に惜しい。ちゃんと振っとけばよかったかも。」
今頃後悔しても遅いし、楽するための苦労は大好きだ。明確なビジョンが見えているが故に別段苦でも無い。
そんな事を思いながら薬の研究と魔法の練習にのめり込み続けているといつの間にか2年の月日が経過していた。