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自称神様

目が覚めると知らない天井だった。うん、謎。


「ありゃ、何処だここ?」


記憶を探るが月末だったからいつも通り出勤して、いつも通り仕事して、いつも通り帰宅した記憶しかない。こんな場所に足を踏み入れた記憶がない。


「やーと、起きたか。全くお主はいつまで寝ておるんじゃ。儂ですら飽き飽きする程寝おって…。起きたんなら早速じゃが転生始めるぞ。」


声がした方向に向くと古代ローマに居そうな格好をした爺さんが居た。テルマエとか好きそう。

てか、誰このジジィ。到底現代人には見えないけど…。ただのボケ老人?


「失礼な奴じゃな!?」


「起きたら知らない場所で知らない人が近くにいたら警戒するのが普通では?」


てか、さっき声に出してたっけ?


「ふむ、言われてみれば確かに。」


なんか納得したみたい。本当誰?


「儂はラノス、お主の世界の言葉で言うと神じゃ。」


やっぱ、ボケ老人かな?

人間如きが自称神とか本物の神様に失礼でしょ。


「本物の神じゃよ!?」


怪しい。

神々しさも特別感もないただの爺さんじゃん。


「なら、これで納得するかのぉ。」


爺さんが指パッチンをすると同時に世界が変わる。どこを見渡しても晴天。そして、それと同時に下に引っ張られる感覚と共にどんどん加速していく。


「なっ、落ちる!?てか、落ちてる!??」


死んだわこれ。


「お主は既に死んでおるよ?」


「は?」


爺さんが再び指パッチンをするとさっきの何もない世界に戻って来ていた。


「あー、自覚がないのか。記憶がないのか。簡単に説明するとのぉ。お主は背中を押されて線路に落ち通過電車に轢かれてミンチじゃ。」


「は?」


「まぁー、死因がそれでも普通は問題が無いんじゃが、今回はそうもいかなくてのぉ。」


「え、ちょ、意味が分からない。僕死んだの?」


「そうじゃよ?」


「あ、…そう。ならこれで未来永劫眠れるのか。おやすみ。」


横になって目を閉じる。

自分の手で死ぬのは嫌だが死んでしまったということは漢字で書くと永眠。つまり、永遠なる眠りに着く事ができる。睡眠だけが生きる目的だった僕には夢のような現実だ。


「ちょちょちょ、待つのじゃ!!話を最後まで聞けぇ!!!というか、寝るなまだ寝るつもりか!!!!!」


「神様なんて興味ないから別の人に相手してもらいなよ。僕はようやく夢の未来永劫の睡眠を取れるチャンスを逃すつもりはない!!」


折角永遠の眠りに着けると言うのにそれを放棄しろって?巫山戯るんじゃない!!睡眠だけが生き甲斐の僕に舞い降りたビッグチャンス逃す訳がないだろう!!


「目に力が入っておる…。テンプレじゃが今回の場合拒否権はないぞ。」


「いやーだー。ねーたーいー。」


爺さんの肩をブンブンと揺さぶりながら駄々を捏ねる。あんな事できる相手にやっても意味がないだろうことは分かっているがワンチャンあるかもしれないので粘れるだけ粘る。


「ぐずるな!!で、説明なんじゃが、お主は今回死ぬタイミングではなかった。本来の死はお主の隣にいた客じゃ。運命が狂ったとしか言いようがない不運じゃ。まぁ、儂らとしては誰が死のうといつもならどうでもいいのだが、本来死ぬべきではない命が散ると大問題が起きる。このまま寿命が残ったお主の魂を普段の処理にすると魂の輪廻がバグを起こして輪廻転生の機能が壊れてしまう。寿命を消費し尽くした魂の浄化と再生が機能だからな。そうなれば面倒な事この上ないのでな。お主には異世界に行ってもらう。」


異世界?巫山戯るな。年12回訪れる月末の出社日以外部屋に引き篭もってる奴にとってはベッドの外が十分異世界だわ。


「嫌ーだー。寝るの!!てか、寿命問題なら蘇生させればいいじゃん。」


「出来ないこともないが過去改変は大罪じゃ。それに肉片になった所を無数の人間に見られておるからお主だけの過去改変では改変しきれず手間過ぎる。人間で例えると5億年ボタンを押すぐらいの虚無と報酬じゃよ?やってられるか!!」


バンってテーブルを叩いてるけど、そのテーブルどっからでたの?


「てか、そっちのミスじゃん。僕悪くないじゃん。」


この爺さんただ仕事サボりたいだけじゃん。僕でも仕事はちゃんとやってたのに。


「儂のミスでもないわ!!天文学的確率で起きるシステムエラーに当たったお主の運の尽きじゃ!!悠久の時を生きる儂らが観測し始めてから起きたこの事例は十件未満の激レア現象じゃ!!大人しく転生を受け入れぇ!!」


「嫌だ!!寝るの!ベッドだけが友達なの!!人間にもそれ以外にも当然興味ない!!」


実際半分引き篭もりだったし。ほぼ人と関わることもなく、テレワークで振られた仕事をやってただけだし人の造形を忘れる程度には人を見ていない。まぁ、人を描いてはいたけど。


「チートぞ!?無双ぞ!?生活に苦労せんぞ!!?」


そもそも使える時間はほぼ全て睡眠に費やしていたため読み物自体大して見た事がないため、チートだ無双だに正直ピンと来ていない。そんなどうでも良い事より優先すべきは睡眠である。


「僕は眠れればそれで良いのぉ!!!」


「何故かは知らんがお主の器は他の転生者と比べると比較にならん程デカいじゃぞ!その分スキルその他諸々選び放題じゃぞ!!?普通の人間の器がコップ一杯だとすると、儂らが無数の世界から選定した他の転生者が琵琶湖ぐらいの大きさなのに、お主は海ぐらいの大きさじゃぞ。文字通り桁違いなんじゃぞ!!」


逆に爺さんに肩を掴まれブンブンと前後に揺らされる。


「しーらーなーいー。僕は永遠に眠るチャンスを逃したくないー。」


僕は自分の意思で死ぬのは嫌だが、折角永眠しているのに起こされるのはもっと嫌だ。睡眠という名の至高の時間を永遠に味わうチャンスを、夢の時間を、逃してなるものか!!


「今のお主が持つスキルも凄いんじゃぞ!!?」


普通の生活しててそんなわけあるかー!!

睡眠に関するスキルは持ってるかもしれないけど、興味ない。


「どーでもーいーいー。」


「読み上げたもう。惰眠Lv10、家事Lv8、老化速度低下Lv8、老化抵抗Lv6、自然回復Lv4…etc。人の身でありながら何故か老いに対する耐性を持っておる。寝てるだけのダメ人間なのに家事のレベルも高い。凄いこそなんじゃぞ!!この老化耐性の掛け合わせなら星が崩れるまで行っても老衰どころか肉体年齢的には26にも届かんのだぞ!」


…何で僕、老化に耐性あるの?

と言うかサラッと不老的な事言ってなかった?

聞き間違いかな?

てか、怠惰なのは認めるし社会不適合者なのも認めるけど、家事とか自分の身の回りの事すら出来ないとか思われるのは不本意中の不本意なんですけど!!


「失敬な。上質な睡眠には適度な食事と運動、清潔な部屋は必須なんだよ?家事は運動にもなるし食事と清潔を満たすには必須。つまり、気持ちよく眠るために必須技能なんだよ!!世話してくれる人が居るなら運動だけで良いかもしれないけどね。あと、老いの方は知らない。僕は寝ることしか興味ないし。」


お腹が減れば寝付けないし、身体を動かさなければ心地よい睡魔が来ない。当然部屋や自分が汚ければ睡眠どころではない。病気に罹って病魔に睡眠を邪魔されたら堪ったもんじゃない。

昔、空腹を満たすだけなら料理なんてしなくてもカップ麺で良くないってなって、1ヶ月程3食カップ麺にした時期があったがまー、最悪だった。そのため食生活を改め、家事はサボらないと決め継続していくと丁度気持ちよく眠れるようになった。僕のような運動神経及び体力0は家事ぐらいの運動で限界だし丁度良いのだ。


「睡眠に関することになると急に饒舌になるのぉ。ふむ、ならばお主を異世界に行きたくて堪らないようにしてやろう。」


すっごい悪い顔してる。ろくに人と関わってこなかった僕でもわかるぐらい分かりやすく悪巧みの顔だ。なんだ?何する気だ?まさか、神の力で強制するとか?

…断固拒否だ!意志の力でどうにかなるとは思えないが断固拒否だ!!


「だーかーらー。睡眠以外興味ないし、爺さんのお使いをする気も無いんだって!諦めて元に戻せー!虚無な作業をしろー!!」


「ふん、そんな余裕で居られるのは今のうちだけじゃ。お主が転生する先の世界にはのぉ地球にはない極上の寝具と、睡眠に関するスキルが無数にあるんじゃ。例えば安眠だったり、悪夢消失だったり、消音だったりのぉ。」


極上の寝具、安眠、なんて良い響き…。


「効果は絶大じゃな。ならば…、更にな睡眠を好むお主は常々掃除や洗濯、風呂に入ることすらも面倒だと思っておっただろう?それが解決するスキルもあるんじゃよ?」


何もせずに、清潔?


「そうじゃ。」


くぅー、狡いぞ!!


「ほらほら、転生、したくなって来たじゃろ?」


「迷うー迷うー。」


「他にも、ちょっとこのベッド柔らかくなり過ぎかなー。とか、買ったばかりのベッドでマット硬すぎ!!とか、そんな悩みも解決するスキルあるんじゃぞ?今ならなんとそれはのスキルを選びたい放題じゃよ?」


「うー、条件は?」


「今なら転生するだけじゃ。面倒な使命とかは何もないぞ?」


「…。買った!!」


「ふん、チョロい。」


「はっ!謀ったな!!!!」


「もう遅いわ。言質は取った。さぁ、スキルを選ぶのじゃ。」


「嵌められたー!!!!!」


僕の目の前には無数の文字列が浮かび上がる。当然全部なんて読んでられない。


「面倒くさい。睡眠に関するスキルや技術特化!あと、寝床を維持するために清潔な空間維持に関する物と病魔耐性関連。あとはいらない。終わり!!」


「ふむ、それでは器に余裕があり過ぎるがまぁそこは魔力で満たして誤魔化そう。取り敢えず人が寄りつかない手頃な森に送っておくぞ。良き異世界ライフを楽しむと良い。ナディアよ。」


ナディアって誰だよ…。

そんなことを思っていると僕の意識は一瞬で飛んでしまった。



ー???視点ー


ねぇ、本当に良かったの?


「何がだ。ルリウスよ。」


ちゃんとした理由で説明しなくてもさ。皮は人間だけどここで軽く[削除済み]もの間眠りについていたとかさ色々察せる所はあるけど、理由付け雑過ぎない?


「今の奴は人間の形なのだから問題なかろう。」


僕には到底人には見えなかったけどね。と言うかなんでバグ起こす魂が流れついてるのさ。説明を求めるね。王様。あんな雑な理由でシステムが壊れるなら僕みたいな暇を持て余した神は生まれてこないでしょ。


「知らんよ。それこそ神のみぞ知るじゃ。」


僕も王様も神でしょ。分類的には。他の奴らは気にしてないみたいだけど、イレギュラーが過ぎるよ。まさか[削除済み]の関係とか言わないよね?それ関連だったら老けないの当たり前じゃん。


「さぁ儂に言われても困る。儂とて全知全能ではない。それに近いことは認めるがね。」


ふーん、はぐらかすんだ。爺さんは頑固だし今回は諦めるよ。今度教えてね。それ関係なら早めに動くに越したことはないからさ。じゃあね。

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