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第四章:誓いと決意

「どうして、何も言わないのですか?!」

私は、お姉様が休憩していたティールームにはいると、怒りを抑えきれずに叫んだ。

 婚約破棄が正式に発表され、社交界の噂はお姉様を悪役令嬢と断じるもので溢れかえっていた。だが、お姉様本人はまるで何もなかったかのように静かで、微塵も取り乱していなかった。

「エリスお姉様!私は、貴女がそんなことをするはずがないと確信しています!なのに、どうして何も反論しないのですか?」

 お姉様はゆっくりと顔を上げ、私を見つめた。深い青色の瞳は、いつものように冷静だった。

「言ったところで、信じてもらえないでしょう? それに、これ以上騒ぎ立てれば、私だけでなく、家の立場も危うくなるわ」

「そんなもの……!」

 私は強く拳を握った。お姉様はいつもそうだ。どんな状況でも冷静で、感情を表に出さない。だが、それは諦めからではなく、幼い頃から身につけた処世術なのだ。

「お姉様……それで本当にいいのですか?このまま汚名を着せられ、悪人として扱われることを受け入れるのですか?」

 お姉様は静かに目を伏せたが、ふっと微笑んだ。

「……ええ、いいのよ。むしろ、これでやっと解放されたわ」

「え?」

「私は、元々レオナルト様との婚約を望んでいなかったの。向こうの都合で決められた婚約で、私には何の選択権もなかった。彼に惹かれることもなかったし、結婚しても互いに幸せにはなれなかったでしょうね」

「でも……だからといって、こんな形で婚約を終わらせるのは……!」

「構わないわ。むしろ、これで自由になれたのだから」

 お姉様は淡々とした口調だったが、私にはその裏にある彼女の思惑を感じ取ることができた。彼女は、この状況を逆手に取っているのだ。

「……それでも、お姉様の名誉が傷つけられていることに変わりはありません。私は、この冤罪を晴らします」

「ソフィア……」

「私は、ただお姉様の隣に立ちたかっただけです。でも、今は違う。お姉様を陥れた者たちを許すつもりはありません。必ず真相を暴いてみせます!」

 お姉様はしばらく私を見つめた後、ふっと小さく微笑んだ。

「ありがとう、ソフィア。でも、決して無茶はしないで」

「ええ、約束します……と言いたいところですが、きっと無茶はします。けれど、必ずお姉様の名誉を取り戻してみせます」

 その時、部屋の扉がノックされ、レオンが姿を見せた。

「話は聞かせてもらいました」

「レオン……?」

 彼は真剣な表情で私とお姉様を見つめた。

「なんだか落ち着かなくてね。どう考えても、エリス様がそんなことをするはずがない。だから、直接確かめに来ました」

 お姉様は少し目を伏せたが、すぐに顔を上げる。

「……ありがとう。でも、私のことならもう決まったことよ」

「決まったこと? そんなの、誰が決めたんです? 証拠が偽証なら、それを証明すればいいだけでしょう?」

 レオンの言葉に、私は思わず頷いた。

「そうです!お姉様が無実であることは私たちが誰よりも知っています。だからこそ、私たちで真実を暴きましょう!」

 レオンは力強く頷いた。

「私も協力しますよ。証拠がねつ造されているのなら、それを暴くしかない。エリス様のために、私もできる限りのことをします」

 お姉様の表情がわずかに揺れた。

「……ありがとう」

 その一言は、お姉様が心の奥底で私たちを信じている証だった。

 私は決意を新たにする。

「レオン、まずは証拠を集めましょう。魔道具を駆使すれば、いくらでも手がかりを得られるはずです」

「分かりました。私のほうでも情報を集めます。必ず真実を突き止めましょう」

 こうして、私たちは動き出した。

 お姉様の名誉を取り戻すために。

 そして、お姉様を陥れた者たちに、相応の報いを与えるために——。

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