エピローグ:新たなる未来へ
王都に鐘の音が響き渡る。今日という日は、貴族社会にとっても、庶民にとっても特別な日となった。
エリス・フォン・アイゼンハルトレオン・ヴァルディアスの結婚式。
広大な庭園で執り行われた式典には、数多くの貴族が集まり、さらに王都の人々も祝福の声を上げていた。
エリスは純白のドレスに身を包み、まるで童話の姫君のように美しかった。その隣で、正装したレオンは、誇らしげに彼女の手を取っていた。
「エリス、これから先もずっと、貴女を守ると誓います」
「ええ、私もあなたと共に歩んでいくわ」
指輪の交換が終わり、誓いの口づけが交わされると、会場は祝福の拍手に包まれた。
そんな中、一人の少女が腕を組んで満足げに頷いていた。
「うん、さすが私のお姉様。誰よりも美しいわ」
ソフィア・フォン・アイゼンハルトは、まるで自分のことのように誇らしげだった。彼女にとってエリスは何よりも大切な姉であり、今回の結婚式も陰ながら全力で支えていた。
「お姉様、おめでとうございます。お姉様が幸せそうでとてもうれしいです。だけど、レオン、あなたに言っておくことがあるわ」
「……なんだ?」
「これからもずっと、お姉様のことは私が見守るから。変なことをしたら、すぐに察知して、対処するわ」
「おいおい……夫婦になるんだから、そこは俺を信頼してくれよ」
レオンは呆れたように苦笑したが、ソフィアは冗談ではなく本気のようだった。彼女の視線は真剣そのもので、レオンは思わず肩をすくめた。
「まあ、お姉様が幸せなら、それでいいのだけど。でも……少し寂しいわね」
ソフィアは小さく息を吐きながら、姉の晴れ姿を見つめた。
「お姉様が遠くに行ってしまうような気がするわ。でも、それでも……幸せでいてくれるのなら、私はそれで満足よ」
エリスはそんな妹の言葉に微笑み、そっとソフィアの手を握った。
「大丈夫よ、ソフィア。私はずっとあなたの姉だもの」
「ええ、もちろん!」
ソフィアは笑顔を浮かべ、姉の手をそっと握り返した。
「あなたがいてくれたから、私は今ここにいるの。本当にありがとう」
ソフィアは少し照れたように視線を逸らし、「当たり前よ」と小さく呟いた。
王都の空に、祝福の花火が打ち上がる。
この美しい物語は、これで幕を閉じる。
――だが、
「ふふ……これで終わりだと思わないでね?」
微かに笑うソフィアの瞳は、新たな計画を見据えていた。
まだ、彼女の物語は終わらない。
祝福の鐘が鳴り響く中、次の時代の幕が開かれようとしていた――。
(さて、次はどんな面白いことをしてみようかしら?)
その瞳には、未来への期待と決意が宿っていた。
物語はひとつの幕を閉じ、そして新たな物語が始まる――。




