表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/21

第十五章:特権の象徴

 ソフィア・フォン・アイゼンハルトの名は、貴族社会の中でさらに大きな意味を持つようになっていた。

 彼女が新たに開発した魔道具は、貴族たちの間で話題の中心となっていた。

 新たに発表されたのは、日々の労働を軽減し、家事や事務作業を劇的に効率化する魔道具の数々だった。これにより、日々の労働が驚くほど効率化され、使用人の数を減らしても十分な生活ができるようになった。

 例えば、部屋の掃除を自動で行う「自律清掃魔道具」、

 温度を一定に保ち、どんな季節でも快適な住環境を提供する「気温調整魔道具」、

 そして、書類の整理や筆記を補助する「自動記録魔道具」。

「これは素晴らしい! ぜひ我が家にも導入したい」

「こんな便利なものを生み出すとは、さすがソフィア嬢だ」

 貴族たちはこぞって手に入れようとしたが、ソフィアは慎重に選別を行い、自らが認めた家門にのみ販売を許可した。

 貴族社会において、魔道具はただの道具ではない。それは権力と地位を象徴する存在であり、持つ者と持たざる者の差は歴然となる。

 ソフィアは微笑みながら、貴族たちの反応を眺めていた。

 彼女がこの革新的な魔道具を発表した背景には、単なる商売の意図だけではない。

 これまでの出来事を通じて、エミリアとその協力者たちはすでに社会的に追い詰められていた。しかし、さらに決定的な格差を生み出すことで、

「彼らがいかに無力であるかを思い知らせる」

 それこそが、ソフィアの狙いだった。

 そして、もう一つ。

 それは、馬車の揺れを限りなく軽減する魔道具だった。

 これまで長距離の移動は貴族にとっても苦痛であり、特に体調を崩しやすい王族にとっては深刻な問題だった。しかし、この魔道具を使えば、まるで滑るように進み、揺れをほとんど感じないという。

 この技術は極めて高度であり、ソフィアはこれをまずは王家のみに献上することを決定した。

「王宮の馬車に導入すれば、長距離移動が格段に楽になるでしょう」

 王族たちは大いに喜び、ソフィアへの信頼と評価はさらに高まった。

 また、この魔道具は数量を限定して販売されることが発表された。

「一般には出回らない、選ばれた者だけが持つ特別なもの」

 この発表は貴族社会を騒然とさせた。貴族たちは我先にとソフィアに接触を試みた。

「ぜひとも、我が家にその魔道具を……!」

「ソフィア様、どうかお話を伺わせていただけませんか?」

 彼女の元には、かつて敵対していた者たちすらも懇願するようになっていた。

 ソフィアはそれらの申し出をこれまで王都で築き上げた人脈と影響力を駆使し、冷静に精査し、

「貴族としての誇りを持ち、私が認めるに足る方々にのみ、お話をさせていただきます」

 と、はっきりと宣言した。

 それはつまり、過去にエリスを陥れようとした者は対象外ということを、暗に示していた。

 特に、エミリアに協力した者たちは、完全に締め出されたことを思い知らされる。

「なぜ、私たちは手に入れられない!? 我々は貴族なのに!」

「どうにか手に入れる方法はないのか……?」

「このままでは、我々は取り残されてしまう……」

 しかし、どれだけ交渉を試みても、門前払いを食らうだけだった。

「申し訳ありませんが、あなた様にお譲りすることはできません」

 この言葉を突きつけられた瞬間、彼らは完全に見放されたことを理解した。

 特権と革新の象徴――それを手にできるのは、ソフィアに認められた者だけ。

 そして、エリスを貶めた者たちは、その輪の外に追いやられ、取り返しのつかない立場に追い込まれていった。

 彼らに残されたのは、焦燥と後悔だけだった。

 そして、この出来事は王都の勢力図を大きく塗り替えるものとなった。

 魔道具を手にした貴族たちは、さらに影響力を増し、手に入れられなかった者たちは、次第に力を失っていく。

 これは、ソフィアによる新たな復讐だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ