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第十章:復讐の幕開け

 ソフィアたちが夜会での余韻を噛みしめていた頃、王宮内では貴族たちが噂を囁き合っていた。

「まさか、あんな真実が暴かれるとは……」

「エミリア嬢は今頃、どんな顔をしているのかしら?」

「それよりも、あの魔道具。あんな精巧なものを作れるとは……」

 貴族社会は、魔道具の驚異的な性能に驚嘆しながらも、ソフィアの手腕と影響力を見極めようと躍起になっていた。

 特に、今回披露された《追想の水晶》の精度は王族や高位貴族の間でも話題になっていた。単なる映像記録ではなく、使用者の意図した場面を正確に抽出し、過去の真実を映し出す。その映像が王族主催の夜会という公の場で披露されたことで、誰もがその信頼性を認めざるを得なかった。

「《追想の水晶》に《真実の灯》か。これは本当に素晴らしいものだ」

「記憶の操作もできない魔道具……下手に嘘をつけば、一瞬で暴かれるというわけか」

「これほどの技術が、魔道具で誰でも使えるなんて脅威でもあるな……」

 ソフィアの開発した魔道具は、もはや単なる便利な道具ではなく、社会に影響を及ぼす武器になりつつあった。そして、その力を手にしているのが、夜会で華々しく真実を暴いた令嬢だと改めて注目を集めていた。

「何とかして、手に入れたい……」

「ソフィア嬢に交渉するしかない!」

 貴族たちは焦燥感に駆られていた。これほどの魔道具が世に出た以上、手に入れた者こそが次の時代を支配すると考えたのだ。

「いくらなら譲ってもらえるのか?」

「いや、いっそ彼女を我が家の専属魔道具師として迎え入れたい……」

 すでに彼らの間では、ソフィアの魔道具を巡る熾烈な争奪戦が始まっていた。しかし、交渉の席につこうにも、彼女が簡単に応じるとは思えない。

 一方、エミリアに協力した貴族たちは手を出せずにいた。彼らはソフィアの影響力が急激に増していることを理解し、焦りを募らせるばかりだった。

「軽い気持ちでつい協力してしまったけれど、こんなことになるなんて……」

「手に入れられないなら、排除するしかない……だが……」

 そう考え始める者もいたが、夜会での一件を見れば分かるように、安易に手を出せば確実に返り討ちに遭う。エミリアとその協力者たちの立場は、徐々に追い詰められていった。

 そんな中、ソフィアは王家へ魔道具を献上し、高位貴族との交渉を始めた。彼女の手にある魔道具の価値はすでに計り知れず、多くの者が喉から手が出るほど欲していた。

「素晴らしい技術だ。ぜひ我が家に提供していただけないか?」

  「これほどのものを独占するのはもったいない。条件次第で、我が家が優先的に扱わせていただきたい」

 高位貴族たちは競うように交渉を持ちかけてきた。しかし、ソフィアは微笑みながら、冷静に言葉を選んだ。

「誠にありがたいお申し出ですが、私も慎重に取引を進めたく存じます」

 彼女の目が、交渉相手の中にいる一部の者を鋭く見据える。その中には、かつてエリスを陰で馬鹿にし、悪評を広めていた者たちがいた。

「私の家の信念として、誠実で信頼できる方々とだけお取引したいと考えております。過去の発言や行いが、どれほど信用に影響を及ぼすか……皆様もお分かりいただけるかと思います」

 その言葉に、一部の貴族たちが青ざめる。彼らはこれまで軽い気持ちでエリスを侮辱していたが、今やソフィアの手のひらの上だった。魔道具という絶大な力を持つ彼女に無視されれば、彼らの立場は一気に危うくなる。

「そ、それは……」

 狼狽する彼らを横目に、ソフィアは涼やかな笑みを浮かべる。

「ふふ……ご安心ください。私は過去をすべて水に流すほど寛容ではありませんが、これからの行動次第では考慮の余地もございます」

 まるで慈悲を与えるかのような口調だったが、そこに含まれる冷酷な意図を彼らは敏感に察した。彼らは必死に態度を改め、なんとかソフィアの信頼を得ようとするだろう。

 一方、ソフィアは内心でにんまりと笑っていた。

「これで少しは、お姉様に対する姿勢を改める気になるでしょう」

 彼女にとって、この交渉は単なる取引ではない。これは、エリスを嘲笑していた者たちへの軽い復讐でもあった。

「さて、ここからが本当の反撃よ」

 ソフィアの計画は、着実に進んでいた。

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