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31-2 『復讐の転生腹黒令嬢』 王宮の夜──策謀の帳が下りる時2    

 『王宮の夜──策謀の帳が下りる時 2』


 そこにセバスが静かに口を開いた。


「陛下の計画をさらに確実にする方法がございます」


 イザベラとあやめは興味深げにセバスを見つめた。


「ネルソン・スカバル公爵とビンセント・スプラス侯爵の対立を煽り、王弟ジェームズをさらに孤立させるのです。ネルソン公爵はリチャード王の叔父として宰相の座にありますが、ジェームズ殿下を支持するビンセント侯爵とは犬猿の仲。一方で、ビンセント侯爵はジェームズ殿下の叔父という立場を利用し、宰相の座を狙っております。この二人の対立を激化させることで、スピネル王国はますます混乱するでしょう」


「それなら、内乱も起きるし、スピネル王国の戦力を分断することもできる……」


 イザベラの瞳が鋭く輝いた。


「リチャード王に離間策を仕掛けるのはすでに陛下に教えているけれど、それをもっと早急に効果的にするということね」


「仰せの通りでございます」


 セバスは静かに頷く。


「ルークに任せていたらいつになっても、あの国、内乱を起こさないものね。小太郎に動いてもらおうかしら」


 イザベラの求めに頷きながらセバスが続けた。


「加えて、オーガスト・ドレット伯爵やベンジャミン・グレン伯爵のような現実主義者がどちらの陣営につくか、見極めることが肝要かと存じます。彼らはどちらが優勢かを冷静に判断した上で動くでしょう」


「つまり、彼らをうまく誘導すれば、さらに状況を有利にできる……面白いわね」


 イザベラはゆっくりと微笑んだ。


 そして少しだけ目を伏せる。スピネル王国の情勢は今後のベルシオン王国の未来を大きく左右する。だが、それだけではない。彼女にはまだ果たさなければならない復讐が残っている。


「……ヘインズ・クラネルとカトリーヌ」


 その名を口にすると、部屋の空気が少しだけ張り詰める。


 グランクラネル王国第一王子、ヘインズ・クラネル。

 かつての婚約者であり、イザベラを裏切り、陥れた男。


 そして、カトリーヌ。

 イザベラを貶め、婚約を奪い、すべてを狂わせた女。


「あの二人への復讐……今すぐにでも実行したい気持ちはあるわ」


「ですが、現状ではまだ動くには早すぎます」

 セバス(小太郎)は静かに言った。


「グランクラネル王国を敵に回せば、ベルシオン王国もただでは済みません。スピネル王国を飲み込んでもまだ国力はグランクラネル王国のほうが上」


 その言葉に、イザベラは目を伏せ、思案に沈んだ。 


「ヘインズ第一王子を失脚させるのは難しいかしらね……」


 イザベラはぽつりと呟いた。


 ヘインズ第一王子を失脚させるなんて、現実的じゃない。彼はグランクラネル王国の王位継承者の一人で、強固な立場を築いている。たとえ私がどれほど策略を巡らせようと、簡単には崩せない


「……無理ねー」


 静かな声が落ちる。


 その言葉に、あやめが少し考え込みながら口を開いた。


「それなら、イザベラ様。ルーク陛下とご結婚されてはいかがです?」


「……え?」


 突然の提案に、イザベラは目を瞬かせた。


「ヘインズ王子を直接失脚させるのは難しくても、"婚約破棄した女"がベルシオン王国の王妃になったとしたら、それだけで十分な見返しになるのでは?」



 "婚約破棄した女"


「……!」


 イザベラは思わず言葉を失った。


「グランクラネル王国にとって、ベルシオン王国は警戒すべき存在。そんな国の王妃となれば、少なくともヘインズ王子は面白くはないはずです」


「……まあ、そうかもしれないけど……」


「それに、ルーク陛下の溺愛ぶりを考えれば、結婚すればイザベラ様の思うように動いてくれるのでは?」


「……」


 イザベラは、ルークの熱烈な求婚を思い返しながら、頬に手を当てる。


 ……そんなことで満足していいのかしら?


 だが、心のどこかで"それも悪くない"と思ってしまう自分がいる。


「……少し、考えさせて」


 静かにそう呟くイザベラに、あやめとセバス(小太郎)は意味ありげな笑みを浮かべたのだった。


 その夜、ベルシオン王国の宮廷の奥深くで、スピネル王国の運命を左右する策が動き出した。



 

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