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『復讐の転生腹黒令嬢は溺愛されたので天下を取ることにしました』  作者: 米糠


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25-3 閑話 カーネシアン貴族  

 カーネシアン貴族


 部屋には重々しい沈黙が満ちていた。壁にかかる燭台の灯が、不規則な影を揺らしながら、列席者たちの顔を淡く照らしている。机を挟んで向かい合うのは、かつてカーネシアン王国に仕えていた旧貴族たち。その間に流れる空気は、鋭利な刃のように張り詰めていた。


 ウイリアム侯爵は腕を組み、険しい表情で周りを見据えた。その精悍な顔立ちには、かすかに険しさがにじんでいる。


「……我々がこのままベルシオンに従い続けることが、本当に正しいのか?」


 不意に発せられたその言葉に、空気が凍り付いた。


 ユーロ公爵が目を伏せ、細い指でワイングラスを弄ぶ。静かに揺れる赤い液体が、まるで血のように広がる。


「侯爵、それは……つまり?」


「言葉のままの意味だ。元はと言えば、我々はベルシオンに組み伏せられた敗軍の将。その事実を忘れたわけではあるまい?」


 低く、しかし確かに響くウイリアム侯爵の声に、オリボ伯爵がわざとらしく肩をすくめる。


「ほう……随分と大胆なお考えだ。まさか、ここで謀反を企てるわけではありますまいな?」


 冷笑が広間に滲み、密かに緊張の糸が引き締まる。誰もが息を潜める中、ウイリアム侯爵の横に座るユーロ公爵が静かに口を開いた。


「……確かに、ベルシオンには多くの同胞が討たれた。だが、その代わりに我々の領地は守られ、民の生活も安定している。……それを、再び無に帰すというのか?

 ユーロ公爵の言葉に、何人かが不安げに視線を交わした。しかし、ウイリアム侯爵は表情一つ変えず、ただ静かに机を指で叩く。


「領地が守られた? 生活が安定した? ならば問うが、それは我々の力によるものか、それとも――それとも、ルーク新王の慈悲によるものか?」


「それはルーク様の慈悲によるもの......」


 ユーロ公爵が静かに答える。


「よくぞ言った」


 低く響いた声は、ルーク・ベルシオンその人のものだった。


 燭光を背に、国王は堂々たる姿で部屋へと踏み込む。深紅の王衣をまとい、鋭い黒曜の瞳が貴族たちを射抜いた。


「嬉しいぞ。ユーロ公爵。それとウイリアム侯爵、面倒な芝居を頼んですまなかった」


 広間の空気が、さらに張り詰める。


「いえ」


 ルークはゆっくりと部屋の中央へ進み、ウイリアム侯爵の前に立つ。王の気迫に押され、周囲の貴族たちは思わず息を呑んだ。


「我らは王に、試されたのだな?」


 オリボ伯爵の唇が、不敵に歪む。


「……ふっ、流石だな。我らが忠誠を誓うに足る王よ」


 彼はゆっくりと片膝をつき、頭を垂れる。


「未だベルシオンに心を預けきれぬ者やもしれぬ。それをあぶり出し、決意を固めるための策――それが、今夜の会合の真の目的だ」


 ユーロ公爵も静かに膝をついた。


「我らの忠誠、疑うことなかれ」


 ルークはしばし二人を見下ろし、やがて口角をわずかに上げた。


「いいだろう。その忠誠、しかと受け取った」


 王の声が重く響いた。こうして、ベルシオンとカーネシアン旧貴族の絆は、さらに強固なものとなったのである。









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