天才と元天才
ある分野で天才Aと天才Bがいた。
AはBより少し優れていていつも数歩先を歩いていた。
Bは大きい劣等感を抱いていたが、諦めずにAに食らいついていった。
AはBがついてこようが来なかろうがどうでも良かった。だが、Bと競い合うの楽しいとは思っていた。
だけどある日、Bが舞台から降りた。新たな挑戦のために違う分野に移るのだと言った。Aはただ関心が無かった。Aは今までと変わらずに前へと歩いて行った。
だが、いつからだろうか。Aは前に進むことが苦痛になっていった。1歩踏み出しても1歩踏み出しても全く前に進んだ気がしない。休憩のために1度立ち止まり後ろを振り返ると、そこには誰もいなかった。
そこでAは思い出した。いつもだったら疲れ果てる前にBが声をかけてきていたことを。
AはようやくBが今何をしているのかが気になった。
周りをきょろきょろと見渡すが見えるのは別のレールのみ。前後には人っ子一人いないただ真っ直ぐな道。
Bはもう舞台に登ってこないのかと思ったその時、上から声が掛けられた。
「よう、A。なんだまだそんなところにいたのか。」
隣のレールのほんの少し先にBはいた。Bの周りには多くの人がいた。
Aは、Bがもう既に天才であることを諦めたのだと仲間と肩を組みながら誇らしげに笑うBの表情を見て悟った。