元推しの宣言ふたたび 2
「わたしは、ブラッドに出来るだけのことをしている。もちろん、これからもそうする。だからこそ、考え抜いた末にきみみたいな、失礼、きみを彼の母親にしたのだ」
「なんですって? 呆れるわ」
いまの『きみみたいな』という失言は、この際スルーしておくことにする。
いま、問題なのはそこではないから。
(クラークにとって、どうせわたしなんて『母親』という道具にすぎないのだから)
「まず、そこだわ。いまのブラッドになにが必要か? あなたはそれをわかっていない。あーっ、もう。信じられない。ひとりよがりでおしつけたがり屋で、自己満足して……」
興奮しすぎている。自分でもなにを言っているのかわからない。言葉が勝手に口から出ていく。
「ほんと、ダメダメ親父よ。それだから、前妻に逃げられたのよ。彼女にたいしても、ひとりよがりでおしつけたがり屋だったのに違いないわ。挙句に、不愛想で自分の殻に閉じこもって」
(わたし、なにを言っているの? これって、ちいさな子どもが悪口を言っているのと同じだわ)
言いすぎた。クラークを傷つけてしまった。
というよりか、言ってはいけないことを言ってしまった。
今度は、彼に怒鳴られる。あるいは、平手打ちを食らう。
もちろん、そうされても甘んじて受ける。
わたしが悪すぎたのだから。
だけど、なにもなかった。
どのようなこともされなかった。
クラークは、ただわたしを静かに見つめていた。
渋カッコいい顔に、こちらがハッとするほど悲し気な表情を浮かべて。